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第十七話 アカキモノ

 今日も冒険者ギルドに向かう。

 まばらに人がいる道を歩いて、本日はネギのような焼き串を頂いた。

 少し甘みが強いが、食材由来の甘みであろう。おいしかった。


「はぁはぁはぁ……」


 何か背後から、少々エロスを感じる女性の息遣いが聞こえてくる。誰かランニングでもしているのだろうか?


 気になって振り返るとシャミアが息も荒く地面に倒れ込んでいた。


「おい、大丈夫か!?」


 俺は急いで肩を抱えて体を起こさせる。


「ええ……問題は、御座いませんっ……」


 目立った外傷は見当たらないが、どこか辛そうだ。

 慌てながら水筒を取り出し、中の水を飲ませる。

 幾らか飲ませたところで落ち着きを取り戻した。


「待ってろ、今手当できる所に連れていくからな。」


 もしかしたらどこかの骨が折れてしまっているのかもしれない。とにかく検査が必要だ。


「そんな ことは 良いですから……私を 時計台の頂上まで連れて 行って下さいませ……」


 しかしシャミアが息も絶え絶えに俺に否定の言葉をささやく。


 なぜこんな状態でそんなことを言うのか。

 真相はまだ分からないが、俺はシャミアをおぶると全速力で中央付近に見える時計塔へ向かった。

 背中に何かやわらかい物が当たっているがそんなことは気にしていられない。


 重い鉄製の扉を足で押し開けて内部に入る。

 塔に勝手に侵入してしまったたが、見張りも誰も居なかったし問題ないだろう。


 上を見上げると天にそびえる様に、螺旋階段が続いていた。

 シャミアの意識があまり持ちそうではない。

 少々きついが、なるべく振動がないように数段飛ばしでグルグルと階段を駆けていく。

 途中扉が一つあったが、シャミアが違うと呟いたので俺は更に上へ向かった。


 そして俺の体力が尽きそうになった頃、ようやく天辺の見晴らし台へ辿り着く。

 周りの景色がよく見える。


「私の 手を、そこに……」


 シャミアが力なく指さす先一つ、何かワケの分からない文字列の描かれた古めかしい石の台座が鎮座していた。

 俺はしっかりとシャミアのその手を握って。台座の上へ置いた。


 シャミアが台座に手を触れた瞬間、辺りまばゆい光が包み込み、空をバリアのような薄い膜が覆っていく。

 そしてそれはドーム状を成し、この街全てを覆い隠すように埋め尽くした。


 その直後、凄まじい音と共に空を一面の赤が支配する。

 あれは……炎?


「これで 少しは 持つでしょう……」


 俺は慌てて外に身を乗り出し空を見上げた。

 その先には、鋭い牙と眼孔を持った長い首、堅い鱗に覆われた赤い体躯に、強靱な尾、そして天空を駆るにふさわしい巨大な翼を持った……竜が悠然と空を舞っていた。


「しくじりました、まさか 竜種が2匹とは……だれかが あれを倒さねば、なりません……」


 その姿に見入っていた俺を、シャミアのその言葉が現実へ引き戻す。


「別に追い払うんでもいいんだよな?」


「ええ それが、できるのであれば……」


 シャミアは辛そうに、しかし笑顔で言い返した。


「ならこの街の為、ひいては俺の為に、あいつには少々地獄を見てもらうか」


 俺はニヒルに笑う。


「さて、始めるか……」


 シャミアに背を向けて、俺は氷の銃弾をかみ砕いた。

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