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第十三話 ノロい奴ら

 よく分からない仮面を付けていたから一瞬気付かなかったが、対峙している相手はどう見ても冒険者ギルドの受付嬢、シャミアである。

 もしやシャミアは盗賊のリーダーだったのだろうか?

 確かにあの宿屋を教えてくれたのはシャミアだったし、彼女が盗んだとあれば筋は通っている。

 ただ、彼女はそんなことをする玉には見えなかった。俺の目が曇ってしまったのなら別だが。


「で、なんでシャミアがここにいるんだ?」


 同じ様な質問を一日に二度行うとは思わなかった。それにしても変な運命だ。


「私はただ、報告に上がっていた盗賊を潰しに来ただけで御座いますよ」


 なんかお頭と同じことを言っている。まぁこっちの言葉には信憑性があるが。


「じゃあ、ここの盗賊のリーダーはどこに?」


 まぁ別に盗賊のリーダーが居るならば、それを確認すれば良いだけの話だ。それが一番早い。


「ああ、それならいらっしゃいますよ? ほら、そちらに……」


 シャミアが部屋のすみの方を指さす。

 確かにそこには盗賊のリーダーらしき男が縛られていた。

 男はどうにか抜け出せないかと足掻いているが、一向に抜けられなさそうである。

 でもなんで……


 なんで亀甲縛りなんだ……


 縛っているヒモは赤色で、妙に生々しい上に猿轡まで完備だが、気にしたら負けだろう。人の趣味は多種多様だ。

 そんな可哀想なリーダーに、俺は躊躇無く近付いて話し掛ける。


「で、俺のムーンライ……いや剣はどこだ」


 リーダーは首をブンブンと振る。

 しらを切るつもりだろうか? 部下が話していたというのに。


「ここにあるのは分かってる。話さなければお前のここがどうなるか……分かるよな?」


 そう言って、とある部分にモーニングスターを突きつける。一撃入れれば、男として残念なことになるのは必至だろう。

 そのことが分かっているからか、リーダーは首を何度も縦に振った。

 ちゃんと話してくれそうなので、俺はリーダーの猿轡を外してやる。


「向こうだ! 向こうにある!!」


 そう言って必死で頭を振って方向を示す。そこには、どこか奥へ続く道が一つあった。

 俺はリーダーの腰に下がっていたナイフを取ると、その道へ勢い良く投げ込む。

 すると直後、何かが切れる音と共に足下からいくつもの爆発が起こった。

 リーダーは何故か驚愕の表情だ。


「で、あれ以外の罠は無いよな? もしあったら……」


 言い掛けてリーダーは首を何度も大きく縦に振る。これ以上は本当になさそうだ。


 俺はリーダーから離れると、道の奥へ進んだ。

 そうして奥にあった扉を、蹴りで突き破って開ける。


「なるほど、宝物庫か」


 そこには山の様な金銀財宝がいくらか整理されて置かれていた。


「そのようで御座いますね……」


 シャミアも俺の後に着いて来たようだ。


「何か御探しで御座いますよね? 見つかりましたら残りの品はギルドで処理致しますので、回収しても宜しいでしょうか?」


 シャミアは中々に仕事に忠実らしい。理想の仕事人といったところか。

 まぁ回収を断る理由はない。元々は他人の物なのだから。


「ああ、もちろんだ。と……お、あったあった」


 確かに山の様だったが、その中にはちゃんとムーンライトと麻酔銃があった。もう放しはしないぜ!


「捜し物は見つかった様で御座いますね。では、後の物品は私が回収致しますね」


 そう言って次々と手に触れた物を消していく。どうやらまだ『生命の黒牢』と同様のものを持っていたようだ。

 そう言えば『生命の黒牢』は無機物も収納できたんだったか。まったく、随分と理不尽な能力なことだ。


「そうそう、どうしてここに盗まれた物ソレがあると分かったのでしょうか? 盗賊のアジトなら、幾つか御座いますのに……もしかして、盗んだ犯人を尾行してたので御座いますか?」


「いや違う。実はな、足下に砂が残ってたんだよ、黄色いな。で、聞いてみたらこの砂がある場所に盗賊のアジトは一つしか無いって言うから、ここだと分かっただけだ」


「ああ、なるほど。そうで御座いましたか……」


 こうして話している間にも、シャミアはどんどん回収を続けた。

 それにしても、色々な物がある。宝剣や宝石、古代の品まで選り取り緑だ。

 それが次々と消えていく様は壮観である。


「っつ、ちょっと待て!」


 シャミアが一つの石版に触れようとした所で、俺は思わずその腕を掴んだ。


「ど、どうかなさいましたか?」


 さすがのシャミアも突然のことに驚いたようだ。

 そんな姿もかわいかった、なんて絶対に言えることではないが。


「いやな、その石版に書いてあるんだよ、『の石版に太古の災いを封ず。これに触れし者、如何なる者であろうと、確実に破滅へと誘われん』って。ならそんなものに触れるのはマズいだろう?」


「古代語が読めるので御座いますか?」


 シャミアは随分と興味津々だ。古代語はそんなに珍しいのだろうか?


「まぁ、とある奴のせいで読めるんだよな」


 そう、エキサイト女神のせいで。別に女神とエキサイティンした訳ではないぞ、言っておくが。


 俺がシャミアから手を離した所で、いきなり地震が起き始めた。

 その影響か、石版が落っこちて……俺の足に当たって塵のように消えていった。


「……なんだんだったんだろうな、俺の説明」


「そんなに落ち込まないで下さいませ、レイ様」


 なんだか言葉が胸に刺さる。言葉はそこらの凶器よりもよっぽど危険なんじゃないか……と、この時思った。

 さて、これから鬼が出るか邪神が出るか……


「きっと大丈夫だ、俺。元気出すんだ、俺。」


 なぜか落ち込んでしまう。なんとなく大丈夫な気はするのだが、それでもだ。


「ふぅ……終わりましたよ。そろそろ行きましょうか」


 そんなことを考えてる間に、いつの間にかシャミアは全て収納し終えていたようだ。


「ああ、終わったのか、シャミア……」


 なんだか優れない気分で宝物庫から退出する。


「あれ? そういえば、何故私の名前を御知りなのでしょうか? 私は御教えした覚えは御座いませんが」


 シャミアに笑顔で問い詰められる。そういえば直接聞いたんじゃなかったんだったか。


「え? ああ、それは……教えてくれたんだよ、謎の占い師が」


 まぁ正直に言うしかあるまい。嘘を言ったところでどうせバレるだろうしな。


「占い師、で御座いますか……」


「どうかしたのか?」


 なぜか深く考え込む。昔、占い師と何かあったのだろうか?


「……いえ、なんでも御座いません」


 問い詰めたところで野暮というものか。今は問い詰める気分にすらならないが。


 そうして俺たちは、盗賊のリーダーが放置されている部屋へ戻って来た。


「あれ? そういえばお頭はどこへ行ったんだ?」


 忘れていたが、あの後お頭はどうするつもりだったのだろうか? 結局なにをしに来たのかよく分からなかったが……


「ああ、あの方ならやることが在るとかしゃって、どこかへ行かれましたよ? まぁ大体予想は付いておりますが……」


 耳を澄ましてみると、遠くから微かに複数の人々の声が聞こえた。

 お頭の隠している事が大体分かった気がする。そのことに納得しつつ、やはり盗賊などやめた方がいいのではないかと思うが、そんなことは人それぞれだろう。


「そうそう、ここの盗賊達は全てレイ様が討伐したことにして宜しいでしょうか?」


「ああ、まぁそのくらい良いが……どうしてだ?」


「私は元々、表だっては動けない立場なのですよ」


 ああそれでか、とも思うが、そんなシャミアの足取りはいつもより生き生きとしている気がした。


「それでは、このことはくれぐれも御内密に……」


 口元に人差し指を押し当て、そう笑顔で告げて立ち去るシャミアに、俺には暗黙の了解しか残されていなかった……

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