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第十一話 潜入

「あっさ~あっさ~、素晴らしい朝~♪」


 武器を片手で振り回しながら、日の沈んだ街中をゆったりと歩く。

 新しい武器を手に入れた俺は、夜にも関わらず少し大声で歌ってしまう。


《ずいぶんと上機嫌だね、夜中なのに何でそんな歌なのかは置いておいて》


 ここでネ申がログインする。


 そりゃ、こんなステキな夜にこんなにステキな武器が手に入ったんだ。上機嫌にならずには居られない。

 それにしても全く、しつこいKAMIだ。


《まぁそりゃあ、わたしがこっちに送ったんだから気にするのは当たり前じゃないか♪》


 そうですか、ならチート能力をヨコせと……


《うん、それは無理。じゃまたね~♪》


 相も変わらずワケの分からない、かみちゃまだった。

 まぁ気にしないで置こう。


 さて、これから俺が行うことは、もちろん盗賊狩りだ。

 『目には目を、歯に歯を』とはまた違うが『ひとのものをとったらドロボウ』である。

 当然ながら同等の報いは受けて貰おう。


 アジトの目星は付いている。

 必要な装備も既に整えた。

 残りは実行するだけだ。


 そうして俺は、南の門から戦いへ出向いた……




――<O>――




 少し不思議な事だが、街からほんの数百メートル先に砂漠地帯が広がっている。

 南を向いて右手には遙か彼方まで尾根が続いているが、そこから延びる緑もたった少ししか続いていない。

 西はあれだけ緑豊かだったのに、山に遮られた反対側ではこのようになっているのだから面白いものだ。


 それにしても、どうやらここから南東に掛けては本当に砂漠らしい。まったく、進む方にとっては面倒な話だ。


 砂嵐が吹き荒れる中、マフラーで口元を隠し防塵して南東へ行進する。

 砂漠地帯と言っても砂丘が出来るほどに砂は厚くないらしい。どちらかと言えば、2メートルを越える岩石もよく見かけるので、『岩石地帯』と言っても良いほどだ。

 そんな岩影には少し巨大なトカゲをちらほら見かけるが、襲ってくる様子は今のところ無い。サイズとしてはコモドドラゴンと同程度だ。

 流血でもしていれば別だったのかもしれないが、案外おとなしいようである。


 そうしていくらか進むうちに、前方に一つ大きな岩山が見えてくる。

 エアーズロックなどとは比ぶべくもないが、なかなかに大きさはある。イメージとしては『鉱山』がもっとも近い。

 遠くから観察してみると入り口らしき辺りに門番でもしているのか男が二人存在する。

 俺は少し回り込んで岩山に登ると、そこから手頃な石をブチ当てて門番二人を気絶させた。

 随分ずさんな見張りだったようだ。


 そこから入り口前に飛び降りた俺は、二人を岩影に隠してから内部に潜入した。


 中は意外と広く、人が横に三人並んでも狭くはなさそうである。天井も案外高く人が三人は肩車出来そうで……人が立てに二人並べそうだと言った方が分かりやすいか。

 全体的に壁などもしっかりしていて、壁に掛けられた幾つもの松明たいまつで明かりが確保されている。

 この広さや造りからすると、もしかしたら昔は本当に鉱山だったのかもしれない。


 ただ、明かりが確保されていると言っても、広さの割には数が足りないので薄暗いことには変わりない。

 まぁ俺にとってはその程度、大した問題にはならないが。


 それよりも問題は、道が3つ程に分岐していることだ。

 内通者が居るワケでも、内部構造を知っているワケでもないので分からないが、道によっては罠が仕掛けられている可能性もある。

 まぁ見て罠を看破すれば済む話なのだが、ここはなるべく『隠密』で行いたい。

 なのでここは俺の本能に従って、『右から迂回する作戦』に決める。


 なんの根拠もないって?

 俺の本能だ。


 結果右に迂回したが、今のところ罠は見当たらない。

 現在地は少し道が横に膨らんでいて、休憩するにはちょうど良さそうである。

 やはり右で正解だったか……?


コツ、コツ、コツ……


 突如道の先から聞こえた2つの足音に、俺は隠れ場所を探す。

 道自体は広いものの、右見ても岩壁、左見ても岩壁、上を見ても下を見ても岩壁だ。隠れる場所はない。

 残念ながら倒すしかないだろうか?


 考えてる間に足音はどんどん近づいて来る。


 俺は腰に下げた新武器に手をやると、突如、一つのひらめきが舞い降りた。

 そうだ、これがあるじゃないか……と。



 そうして準備を済ませた俺の元に、二人の盗賊がやって来て、立ち止まった。


「あ~、暇だ。マジで眠いしよ」


 やる気のなさそうな盗賊があくびを欠きながら思わず呟く。


「おいおい。そんなこと言って、こんなトコで寝るなよ? 一応見回りなんだし」


 無駄に真面目なもう一人の盗賊が焼き入れる。

 やる気のない盗賊は全然聞いてないようだが。


「それにしてもよ、今日はすげぇモン手に入れてきたよな、リーダー達」


 やる気のない方が思い出したかのように話し掛ける。


「ああ、確かにアレは見たことない武器だった」


 もう一人もそれに頷く。

 武器とは恐らく我が愛刀ムーンライトのことだろう。


「あんな機械、今までだれも見たことないってな」


「ああ、だがまだ使い方が分からないらしい。もし間違えたら危険かもしれないから、慎重に調べるそうだ」


 どうやら麻酔銃の方だったようだ。

 ムーンライトより麻酔銃の話とは、許し難いな。


「にしても、あっちの剣の方は残念だったよなぁ……」


 やる気のなさそうな方は随分残念そうに頭を抱える。


「ああ、持って帰ったは良いが、結局抜けないみたいだな。あれじゃ使い物にならん」


 真面目な方は抜けないことにイライラしているようだ。

 どうやら今度はムーンライトのことだったらしいが、使い物にならんとは、今すぐ切り捨ててやりたいが……


「それにしてもホント、どうにかならないのかね? もしかしてかの『勇者』だったら抜けるとか?」


 そう言って勇者の様に剣をかっこよく抜き去るマネをする。残念ながらお世辞にも様になってはいない。


「ハハハ、そうだとしたら相当な値打ちモンに違いねぇ。まぁいざとなれば鞘を壊して剣だけでも取り出すだろうよ」


 真面目な方はソレをせせら笑いを浮かべて茶化した。


「おお、その手があったか」


 やる気のない方が、「なるほど」と手を打つ。壊したらタダじゃ置かないがな。


「さて、そろそろ行くぞ。サボってる所見られたらリーダーに怒られちまう」


「ああ、そうだな。そうしよう」


 そう言うと二人は、何事もなかったかのようにその場を去っていった。


「さて、流石に疲れたな」


 俺は一息付こうと地に降り立った。


 今までどこに居たかって?

 もちろん天井だ。


 鍛冶屋で手に入れたこの新武器を、天井に突き刺してへばり付いていたに過ぎない。

 誰もが少し頭を働かせれば考え付くことであろう。


 さて、さっきのは『見回り』らしかったので、しばらくは戻ってこないと思われるが……

 迂回している分、遠回りしている事は確かだ。直進ルートを使っている見回りと鉢合わせる可能性もある。

 なのでここからは、敵が居ても倒すことにしよう。

 ここに俺の武器があることは確かなので、もう『隠密』も無意味だろう。


 そうして決意した直後、いきなり凄まじい振動と共に爆音が鳴り響いた。

 位置的には俺の左側……中央の道辺りだろうか。


 なんだかイヤな予感と共に俺は先を急ぐ。

 未だ爆発音は鳴り止んでいない。


 そしていくらか進んだ先、恐らく分かれ道の合流地点が目前に見えた時、いきなり目の前で砂煙が上がった。


 俺は身を屈めて滑るように交差地点まで移動すると、煙の上がっている中央の道を覗く。

 砂煙で良くは見えないが、大剣を持った一人の大男がこちらへ向かっていた。


 すると直後、こちらに気づいたのか二発の炎弾が飛んで来たので、すぐさま身を屈めて回避する。


「もらった!」


 大男が高速で間合いを詰めて、大剣を振り被って襲って来ている。


 仕方ないので俺は武器を構えて迎撃しようとして……直後、やっぱり大男の足を払って転倒させる。

 そうして俺は、一応抜かりなく武器を構えながらも、大男に近寄る。


「くっ……こんなところでやられるか……」


 仰向けになって脱力する大男。

 その残念な顔を見て、俺は『やはり』と確信する。


「……なんだ、お頭じゃないか」


 そう、爆発を起こしてた大男は、もうお馴染み、みんなの盗賊のお頭であった……

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