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Dの手記


500字程度。

叙述トリックではないが、パラドクスじみた何か。

特に注意すべき描写はなし。




 ベンチに二人の少年が座っていた。AとBの二人だ。

 AはBに向かってカミングアウトをしてこう言った。

「わたしには架空の友達がいるんだ」

 架空の友達だなんて。BはAの精神に何か異常があるのだと判断した。BはAをかわいそうだな、と思い、何かしてあげられることはないかな、と考えた。

 そしてBは、自分がAの本当の友達になるという策を見つけた。Bという現実の友達ができればAには架空の友達を持つ必要がなくなる。Aは精神を回復し、Bにも友達が増える。いいことばかりの名案だ。

 BはAと仲良くなるために会話をはじめた。

 BとAはとても気が合ったようで、話は弾んだ。Bは時間を忘れてAとの会話を楽しんだ。

 その光景を訝しげな目で見ている者があった。Cである。

 何故Cがそれを訝しげな目で見ていたのか。

 何故なら、Cの目にはその光景が、Bが一人でベンチに座ってあたかも隣に仲のいい友達でもいるかのように楽しそうな様子で独りでセリフを言っているようにしか見えなかったのである。

 無理もない。

 Bの隣にいるのはAという名の架空の友達なのだから。

 CはBの精神に何らかの異常があるのだと判断した。


 そして、私の名前はDなのだ。

 世界にはあなた以外の人間はいないのかもしれない。




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