マイカラー
あの日私は、失望していた。「失恋なんてこれから先生きていれば何回だって経験するんだから。」何回言い聞かせてみても気が楽になんてなるはずもないのに。何回も、何回も。ばかみたい。
2月の終わり、公園のベンチに座って彼からのメールを削除しながら泣いた。家の中は、彼の気配が残っていて息もできないくらい苦しかったから。それから3日間、私は胃を壊して学校も休んだ。愛してるとか好きとか、たくさんの愛の言葉を思い出してしまって、頭は彼のことでいっぱいになり、泣きすぎの吐き気のせいでご飯ものどを通らなくなり、本気で「私死ぬのかな・・・」って思ったほどだ。
高校1年生の私は、初めての恋愛で浮かれすぎていただけなのだろうか・・・成績は、中の下。髪もすこしだけ染めている。部活はやっていないけど学校は毎日楽しかった。どこにでもいる普通の高校生だ。毎日そこそこ楽しいけれど、いつもなぜか寂しかった。寂しさを埋めてくれるのは彼だったのに・・・あの頃の私には、彼がすべてだったんだ。久しぶりに会えた日はにこにこ笑っていた彼。どうしたの?って聞いたら、「嬉しいの、会えて。」って恥ずかしそうに言ってくれたっけ・・・。冷たい風に吹かれながら彼のことばっかり考えていた私は、他の人から見たらただの失恋した女の子だったんだろう。でもあの日の私は、「きっと世界中の誰よりも不幸だ。」なんてばかみたいだけど本気でそう思っていた。
暖かくなったので久しぶりにスカートをはいて外に出た。久しぶりのミニスカ、気分は雑誌モデルだ。明るい気持ちで飛び出したのに、この公園にきたらやっぱり悲しくなってしまった。前と同じベンチに座った。でも彼のことなんて考えない。親友のさやかに電話でもかけてみようか。2人一緒に始めようと思っているバイトの相談でもしようかな。やっぱり、やめた。今日は1人でいたい気分だったんだ。「いい天気・・・」両手を万歳して晴れた空を見上げたら、知らない顔がにゅっとのぞいた。「わっ!」びっくりしてもとの姿勢に戻ったら、綺麗な女の人が、クスクス笑いながら隣に座った。「こんにちわ、あなたも散歩?」顔に似合わない少し低めの、だけどよく通る声で女の人は聞いた。「はい、いい天気だったんで、家にいるのがもったいなくて。」私が言うと、「あたな失恋したのね。」女の人の顔が一瞬でかげった。「そうですけど、なんで突然・・・」「見ればわかるわ、あなたの笑顔、明るく見えるけど作り物だってすぐわかるもの。」落ち着いた声で女の人は答えた。誰かに言いたくていえなかったこと。私自身、自分でも見ない振りをしてきたものの正体を、この人に話してみよう。私は息を吸って、「まだ、立ち直れないんです。夜は毎日彼のことを思い出して、たまに泣くんです。」一気にしゃべった。「・・・そう。辛いわね。だけど大丈夫よ。目をとじてみて。」私は素直に目を閉じた。「あなたは今、ひとりぼっちじゃないわ。親友がいるでしょ。あの子、あなたに元気を出してほしくてバイトしようって誘ったのよ。それに、あなたは守られてるの。電車に乗っておばあさんを見たらいつも席を譲るでしょ。友達がお弁当のお箸を忘れたら、自分が食べる前に貸してあげるでしょ。そういうことの一つ一つ、ちゃんと集まってあなたの周りをキラキラ光る結晶になって、幸せを吸収するの。大丈夫、あなたは今真っ白なの。なんだってはじめられる。これから何色にだってなれるのよ。さあ目を開けて。人生これからよ。」
目を開けると私は泣いていた。今まで心のどこかに引っかかっていたとげが、涙と一緒に抜けたみたいに清清しい気持ちだ。女の人と向き合い、「私、いろんな色になって生きます。悲しいことがあったらまた真っ白に戻って新しく始めます!」と言った。答えを待っていると女の人は立ち上がり、春の訪れを告げる妖精みたいに、とびっきり華やかな笑顔をプレゼントしてくれた。
私たちはいつもどこか不安定で、たくさんの友達や家族がいても、心のどこかで、誰かが自分だけを想い、特別に扱ってくれることを狂おしく望んでいる。でも、まずは自分らしく生きて、自分だけの色を見つけなければいけない。自分の色がわからないと、相手の色と自分の色が混ざり合ってしまってぐちゃぐちゃになったり、どちらかがどちらかの色を塗りつぶしてしまったりする。お互いが絶妙のバランスを保っていられる関係じゃないとだめ。
私は今日も、夕焼けに染まってオレンジ色になったり、暗闇にとけて黒くなったりしながら自分だけの色を探している。
こんな小説でも読んでくださった方、本当にありがとうございましたヾ(*´∀`*)ノ♪初めて書いたので、みなさんがどんな感想をもってくれたか教えてもらえると嬉しいです!失恋した自分自身を慰めるつもりで書いてみたので(笑)失恋してしまったという方は是非読んで、少しでも元気を取り戻してくれるといいな、と思ってます。