第五類 謎の言葉とクトゥルフ作戦
何か如何にもな人「あのー、麗姫タソのファンなんですけどー」
作者「あぁん?華凰院?あいつ今回ジョーンズにヤバイ画でヤられっけど?」
何か如何にもな人「しょ、触手プレイー!?も、萌えーッ!」
作者「あぁ、勘違いしてるようだけどこの小説の作者俺だからね?
期待してると死ぬよ?」
何か如何にもな人「またまたぁ、蟲毒さんてば!」
作者「いやガチで危ないからね?てか俺は『蠱』毒だ。『蟲』毒じゃねぇ。
まぁ良いけど」
―前回より17分後―
「…不思議な刀だ…。
火を噴いたと思えば、発電したり、風を纏ったり、水鉄砲にまでなる…。
その上何だ、今私が黒い紐に縛られて動けず、お前の傍らに岩の巨人が居るのもお前の『能力』だと言うのか?」
「あぁ…そうさ。
僕の能力『神刀』は、手にした武器に僕のイメージによって編み出したあらゆる属性を孕ませる能力…。
だから容量の制限こそあるけれど、この刀は僕の思い通りに様々なことが出来るんだ…」
「成る程な…そういう事k― ドゴォォン!
突如、爆発音と共に火炎と土煙が上がり、桜花少年の傍らに居た二体の岩石巨人が粉々に砕け散った。
「「!!??」」
驚き硬直する二人。
見れば、桜花少年の背後遥か上空に、一機の巨大なガンシップ・CH-47が浮かんでいる。
塗装は大変悪趣味というかセンスが無いもので、俗に言う痛車という奴によく似ていた。
何故ならそこは人禍幹部・華凰院麗姫の写真が描かれており、何やら頭の悪そうなロゴまで書かれてあったのだから。
「何だ…あいつは…?」
「……(あの馬鹿が…俺の援護か邪魔かは知らんが…鬱陶しい奴め…要らん事を…)」
痛CH-47を睨み付ける二人。
暫くして、痛CH-47の辺りから、如何にも傲慢で稚拙な高笑いの声が響いた。
「おーっほっほ!御機嫌よう、愚劣なるビル・ジョーンズ!そして中二能力ショタ愚民!
私の名は華凰院麗姫!この愚かな争いを終結させ、太陽系の女王として全世界に平穏と調和と愛と正義の時代をもたらす唯一絶対の現人神よ!」
「何だと?」
「―と、言ったって貴方達愚民には判らないでしょうね!
良いわ!教えてあげる!
これが私の作戦よ…。
行きなさい、ミルキー☆レイキーズ!」
その指示と共に、何時の間にやら上空に現れていた大型輸送機13機のハッチが開き、中から無数の兵士達が現れた。
彼らは外見から判断する限り国籍こそバラバラだったが、誰もが軍関係の施設で専門的な訓練を積んだ優秀な兵士を思わせる体つきをしていた。
皆、麗姫の写真がプリントされたタンクトップに白いホットパンツ、ピンクのヘルメットという出で立ちだった。
ジョーンズはCH-47に向かって叫ぶ。
「貴様華凰院!何をするつもりだ!?邪魔立てするようなら容赦せんぞ!」
すると生意気そうな声が返ってくる。
「邪魔立て?何を言っているのかしらねこの醜い怪物は。
私がやろうとしているのは、手助けでもなければ邪魔立てでもないわ!
頂くのよ!貴方の率いる海軍をね!
そしてクトゥルフ作戦の指揮権を奪い、地球を我が手中に収めるの!」
「…馬鹿な事を!それが本気だというのならば、お前のやっている事は組織への反逆という事になるぞ?」
「組織?反逆?それが何?元よりこんな組織、最初から裏切ってやるつもりだったわよ!
そして私は、禽獣と飛竜、そして地獄の頭脳を飼い慣らし、太陽系の女王として新たなる時代の導き手へと成り上がってやるの!」
「ッハ!下らんな!
それならば貴様の能力で私を操れば良いものを!
おっと失礼、お前の未熟な能力では|格上の異形(●●●●●)を操るには、相手をある程度痛めつけねばならなかったな!」
「…ッフ!そんな風に強がっていられるのも今のうちよ!
行きなさい、ミルキー☆レイキーズ!
その無礼な怪物と、貧弱な童貞めを懲らしめておやりなさい!」
指示と共に、甲板上の兵士達が一斉に右手を掲げた。
「……僕も巻き添えか…」
「そういう事だ。
と言う訳でだ少年、ここは一時休戦として、この状況を打破しないか?
あの馬鹿めを引き摺り下ろして細切れにしてからでも決着には遅くあるまい?」
「そうだね…じゃあ、君を自由にしてあげるよ」
桜花少年が刀を一振りすると、ジョーンズの巨体を拘束していた黒い紐が溶ける様にして解け、影に吸い込まれていった。
「わざわざ悪いな」
「お互い様さ」
こうして一時的に戦線を共にする事となった二人の異形は、馬鹿げた少女の陰謀に立ち向かう事になった。
―7分後―
「…そんな…こんな事が…」
CH-47機内。
麗姫は驚愕のあまり気を失いそうだった。
自らの能力「隷属」によって操っていた最強である筈の軍隊が、雑魚二人によってものの7分で全滅してしまったのだから。
「そんな馬鹿な…そんな馬鹿な…私の能力は絶対の筈…絶対の筈なのに…何故…!?」
ふと麗姫が窓の外へ目をやると、凄まじい速度で此方へ飛んでくる物体があった。
目をこらしてよく見てみるとそれは、目玉をえぐり取られ血まみれになった白人兵士の頭であった。
勢いよく飛ぶ兵士の頭は、何とヘリの後部ローターを直撃。
バランスの取れなくなったCH-47は、火と煙を吐きつつ蹌踉めきながら勢い良く落下し始めた。
「え!?お、落ちてる!?
まさかそんな!あんなので!?
まさか私、死ぬの!?死んじゃうの!?
……嫌…そんなの絶対に嫌!こんな所で、安っぽく死ぬなんてぇぇぇぇっ!」
決意を固めた麗姫は、目に涙を浮かべながら落ち行くヘリの外へと飛び出した。
―同時刻・甲板上―
「それじゃあ…あの女も死んだことだし、再戦と行こうか」
刀を構える桜花少年。しかし、ジョーンズは言う。
「いや、あの糞餓鬼め…まだしぶとく生き長らえるつもりらしいぞ?」
「…何だって?」
ジョーンズの指し示す方向を見れば、海に墜落し爆ぜるCH-47とは別に、空中でパラシュートを展開し甲板上に降り立つ麗姫の姿があった。
僅かに残った涙を拭い、麗姫は言った。
「あの程度で私を倒したなんて思ったら、大間違いなんだからね!」
「背中にパラシュートを仕込んでいたとはな。貴様にしてはやりおる」
その言葉を聴いて、一気に青褪める麗姫。
見れば甲板の上は死体で満ち溢れていて、海に浮かんでいる死体もある。
ジョーンズは更に、動けない麗姫に歩み寄りながら言う。
「しかしどうする?貴様の軍隊はもう無いぞ?
貴様の能力で我々を操るか?異形は弱らせなければ操れない筈だが、そんな事が今の貴様に出来るのか?
肉体的な素質に於いても幹部中ワースト2位の貴様が?無理だろうな、そんな真似は」
麗姫の真ん前に立ったジョーンズは、彼女を見下ろしながら言った。
「そして覚えているか?貴様は反逆者だ。
つまり、序列五位以上の幹部は、自らの意思で貴様を処刑する権利がある。
そして私の序列は第二位だ。そして反逆の被害者でもある!」
ジョーンズは、蟹の様な節足の指を持つ右手で麗姫を掴み上げ、彼女に言い放つ。
「よってこれより、処刑を執り行う!」
その言葉と共に、ジョーンズの牙だらけの大口が開く。
そしてそれと同時に、麗姫の表情が凍り付いた。
桜花少年はその様子を見て、てっきりジョーンズが麗姫を食い殺すのだろうと思ってしまった。
しかし、その予想は彼にとって、また多くの読者にとっても最悪の形で裏切られてしまうことになる。
ずるぅり!
湿った音と共にジョーンズの口の中から現れたのは、乳幼児の腕ほどの太さで長さは1m程、色は少し乳白色の混じった無色透明で光に当たれば緑や紫や桃色の光沢を放つ、数十本という数多の触手であった。
「ゥp…(こ…こんな時に…あの男、どんな趣味を…)」
再び、吐き気がこみ上げてきた。
しかも今のそれは、先程より更に激しい。
時間と共に徐々に激しさを増していく吐き気は、ジョーンズの触手が悲鳴を上げる麗姫に絡み付き、全身を撫で回し始めると、より激しくなっていった。
その光景の貴職悪さと、元から持っていた触手への恐怖心から来る苦しさに耐えかねた桜花少年は、その場で目を逸らし、思わず海に向けて胃の内容物を吐き戻してしまった。
一方、吐き戻し咳き込んで苦しむ桜花少年を尻目に、幹部ビル・ジョーンズによる「処刑」は、遂に最終局面を迎えていた。
全身を触手で撫で回され失神した麗姫を、ジョーンズは乱雑に投げ捨て、放置したまま自ら甲板の掃除に取り掛かる。
そして、5秒後。
「ッァああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
失神していた筈の麗姫が、突如狂ったように叫び出すと共に、甲板上で狂ったようにのた打ち回り始めた。
しかもその全身は徐々に火傷をしたように赤くなっていき、更に驚くべき速度で身体の各所に大きな腫れ物が発生し始めた。
腫れ物は驚くべき速度で肥大化を続け、その度に麗姫の痛みは増加していった。
「…ヒヒヒ…苦しむがいい…そして死ね…」
不気味な笑みを浮かべるジョーンズの視線の先には、全身が脹れ上がって人間の原型を留めていない麗姫の姿があった。
そして、次の瞬間。
限界まで脹れ上がった麗姫の身体が、何処か小気味よい音と共に破裂した。
「!?」
音と、音によって起こった事とを知ってしまった桜花少年は、言葉を失った。
「(…まさか…毒殺したのか…?)」
そのまさかである。
クラゲ・イソギンチャク・珊瑚といった動物は、専門用語で「刺胞動物」と呼ばれる。
「刺胞」とは、主にこれらの動物の触手などに装填された袋状の器官であり、刺激を受けると袋を反転させながら刺糸をはじきだす(但し、ジョーンズはこれをある程度自分の意志で行える)。
刺胞には、中が中空になっており反転しながら皮膚に刺さるもの、巻きつくもの、粘着するものなど、様々なタイプが存在している。
また、今回麗姫を毒殺した毒素はカツオノエボシのそれに近く、現実の海に棲息するこの波間を漂う浮き袋のようなクラゲの触手に触れた部位は激しく痛み、炎症の末に晴れ上がるという。
よって読者諸君も、海水浴等に行く際は要注意を(というより、ミズクラゲとウリクラゲ以外のクラゲには基本的に触るべきではない)。
黙ったまま動けない桜花少年に、ジョーンズは言った。
「…行け、少年。今の貴様では俺には勝てん。
吐き戻して体力を消耗した相手を一方的にいたぶる趣味は、ない。
よって、貴様にクトゥルフ作戦は止められない」
「…………」
「そう睨むな。それにクトゥルフ作戦はもう、私が死のうと止まりはしない!」
「……何だって?」
「故にな、もう貴様が此処にいる意味は無いのだ。
早く飛び立て!その翼は何のためにある?
そして聞け!その洒落た耳でな!
クトゥルフ作戦!それは、世界各地に我が秘密の騎士を放つという作戦だ!
そして、その騎士を完全に滅ぼす事は創造主であるこの私にも不可能だ!
だがしかし、この海兵に対しての唯一の攻略法へと導く鍵が存在する!
正直私にも訳が判らない言葉だが、滅多に喋らん私の能力体が言ったことだ!聞いておいて損はないぞ!
長いから一度しか言わん!メモなり録音なりしてでも記録し、意地でも頭に叩き込め!」
滞空しつつ頷く桜花少年。
「『蝗は海の底より現れ、神の刻印を持たぬ者に終わり無き苦しみを与える。
その苦しみにより人は人を奪われ、奪われたものが返されることはない。
蝗の力は絶対的であり、地上の如何なる獣も、空の如何なる鳥も、海の如何なる魚も、神の刻印を持たぬ者は皆蝗の前に為す術もない。
剥奪の力を持つ彼らは、蝗でありながら翅を持たず、蝗でありながら跳ぶ脚を持たず、蝗でありながら並みの蝗のように甘い草を貪る事は許されていない。
また彼らに法は無く、故に彼らは裁かれず、故に彼らはまた守られない。
但し、彼らを裁く者が在る。
それはこの世に只一つのみ。
その者の名は、変わる者!
その者の名は、色無き者!
その者の名は、ただ巨大!
変わる者が呻く。
色無き者が吐く。
ただ巨大が嘆く。
それが滅びの時。
それが裁きの時。
時至らば、この世の全ては分けられる。
滅ぶ者と、残る者に。
蝗は滅ぶ者である。
但し、変わる者の呻きが、色無き者の吐きが、ただ巨大の嘆きが、それの意にそぐわないなら、結果は逆となる。
そして逆が起こるなら、この世は滅びの道を歩む。
逆が起こるなら、蝗は残り、この世の命は消え果てる。
変わる者の欠片、色無き者の破片、ただ巨大の断片、未だ未熟。未だ完成せず。
ただそれが、悲しみにより嘆くとき、それは完成する。
それこそが、正しき裁きの鍵となる。
それこそが、蝗を滅ぼす唯一の鍵。
四人の騎士が、四頭の見えない馬に乗って現れる。
第一の騎士が裏切り、第二の騎士と第三の騎士が衝突し、第四の騎士が目覚める。
それは新たなる時が始まる証。
獣と竜の衝突。どちらかは義を持ち、どちらかは悪を持つ。
そして、悪を持つ者の死。
それこそが、世に光をもたらす。
世に光がもたらされれば、世は治り、奪われたものは返される』
これが、全文だ。どうだ?記録したか?」
頷き、飛び立つ桜花少年。
それを見送ったジョーンズは、一言呟いた。
「あの少年…敵なのが惜しいな…」
―数分後・東京都―
「づぇりあぁぁぁッ!このエビめが!とっととくたばりやがれェっ!」
久々の登場となった我らが主人公・手塚松葉。
彼は現在近場の仲間と共に、突然海から湧き出たエビに似た巨大甲殻類の群れと戦っていた。
それらの全身は青い甲殻で覆われ、全長は触角を除き2.6m程。
先端がハサミになった細長い10対の節足を器用に使って地上を走り回り、またそれらを戦闘にも使いこなす。
また、尾鰭の真ん中から細く先の尖った針のような器官が伸びている。
動きは素早く、また凄まじい生命力と再生力によって並大抵の攻撃では死ぬどころか傷さえ負わない。
「何なんですかコイツ等!アタシの【双●で】リーチ極長【乱●】が全く聞いて無いんですけど!」
「そらオメェ効くわきゃねーだろ!銃弾弾き返すキチン質の外骨格にやるんならせめて【●刀】リーチ極長【●刃斬り】だろ!
あと刃物使うんなら間接部狙え!こういうヤツは大体鎧同士の連結部が弱点だからな!」
「はい!ご忠告どうも!」
雅子は右手を細長い刀に変化させ、それを甲殻の隙間へ差し込み、身体を解体するように始末していく。
「雅子お姉ちゃん、上手」
「ありがと恋歌ちゃん。てか、こいつら何か言ってる?
痛いとか苦しいとかお腹減ったとか」
そう言われ、恋歌は耳を澄ませる。恋歌には、あらゆる動物と会話できるという潜在的才能があるのだ。
五秒後、恋歌の口から出た言葉は、とんでもないものであった。
「…エビ…心、ない…」
「…え?」
「心ない…感じられない。今までこんな事、無かった」
「そう…なんだ…」
「うん…て、雅子お姉ちゃん!」
二人がしみったれている間にも、エビ達はどんどん勢力を増していく。
「あ、来てる!何か来てる!」
更にこんなタイミングで、雅子の携帯電話の着信音が鳴り響く。メールであった。
「おわぁあぁぁぁぁっ!れ、恋歌ちゃん!代わりに出てっ!」
「わ、わかった!」
雅子の肩の上で携帯電話を開く恋歌に、青いエビが遅いかかる。
「どぅぉぉらぁぁぁぁ!」
しかしそれは、松葉のぶん投げた鉄骨によって阻止された。
「打撃はそこそこ有効らしいな!」
更に横から、偶然その場に居合わせたシンバラ社の男・逆夜の言葉が入る。
「フィクションの話で、しかも機関銃用の知識ですけど、脳とか中枢神経を破壊すれば指揮系統が壊れて行動不能になるとかって話もありますよ!手塚さん!」
「おぉ、そいつぁ使えるなクラレ!」
そう言うと松葉はエビ二匹の触覚四本を掴んで持ち上げ、腹部の中心部に素早く手刀を叩き込むと、それを思い切り投げ捨てた。
投げ捨てられた二匹のエビは、そのまま動く事無く息絶えた。
そして松葉は、手刀に使った自分の右手を見て、思わず言った。
「…何か武器使おう」
何故なら、彼の手は甲殻類特有のヘモシアニン(銅を主成分とする色素)を含む青色の血液でべったりと汚れていたからである。
何か如何にもな人「…………酷いじゃないですか…蟲毒さん……ボキの…ボキの麗姫タソがあんな事になっちゃうだなんて……」
作者「あぁ、元々あのキャラはああする予定だったから。
使い捨ての小悪党って事でさ。何か最近見かけ倒しの性悪ロリが全盛振るってるじゃん?だから反逆したくなったんだよ」
何か如何にもな人「…そんなー…」