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第三類 定義上、直線とは途切れなく続く決して曲がらない線の事









源太郎「今回は大サービスの最新家電大特集!読者百人は確実d―

陽一(亡霊)「違うでしょう!」

戦い続けて実に一時間半。

戦況は、私の予想を見事に裏切っていた。


「…何故…攻撃が…」

我々第七機動小隊は、放火魔の少女が放つ火炎に完膚なきまでに焼き払われていた。

居合わせた部下16名の内、12名が重症を負い救護班に回収され、その内5名は意識不明。残る四名は、炎によって焼き殺されてしまっていた。


そしてかく言う私も、自立し銃を構えるだけの体力が残っているだけで、対する放火魔には傷一つついていない。

それでも私は、放火魔の少女を睨み付ける。


「愚民の分際で私をそんな目で見るのね。

でも凄んだって無意味よ。

何故って?この炎はね、異形のエネルギーを吸収しその火力を強めるの。

だから貴方たち愚民がどうあがこうが、私を殺すなんて絶対不可能―「そいつはどうかな!?」

少女の声を遮る様にして、聞きなれた声がした。

声の方向を見れば確かに、そこには大喜多大志が居た。

その手には拳銃を持っていて、何故か前進傷や痣だらけで、左腕に至っては明らかに折れている。

「いやぁ、黒沢隊長。出撃出来ず申し訳無ぇッス!

実を言うとね、ちぃとばかし幹部の古藤さんからお呼ばれしてましてねェ、秋刀魚買ってくるついでにあの女に効くであろう新作武器の完成品を持って来たんでさぁ!」

そう言って手渡されたのは、白い拳銃だった。

「新作武器…?」


「ちょっと何よ?貴方みたいな童貞が私を殺そうっていうの!?」

「るっせェなァ黙ってろ食糞ロリが!俺ァ今黒沢隊長と話してンだよ!手足ぶった切って肉便器んでもしてやろうかァ?」

大志、それは言いすぎでは。などと私が思うのを尻目に、泣きじゃくりながら炎を放つ少女。

私は必死でそれから逃げ続け、逆に大志は炎へ生身で向かっていく。


あぁ、バカなことを。

などと私が思っていられたのは、炎が彼に直撃する寸前までだった。


どういうわけか、炎は彼の体に接触すると同時に一瞬で消え去ってしまったのである。

「な、何で?何でなの!?私の炎が消えちゃうなんて!」

戸惑う少女に、大志の伸びた右手がその首を掴む。

「手前に教えっかよォー!」

次の瞬間、大志の頭突きが少女の鼻面に叩き込まれた。


「きゃげぶっ!」

「っと、さぁ黒沢隊長!この食糞ロリの心臓に、その弾丸をブチ込んでやって下さい!

そいつぁまともな生きモンにゃ無力ですが、異形相手なら致命傷を叩き込めるんでさぁ!」

「判りました…!」

私は彼の言葉を信じ、弾丸を放った。

銃の扱いには自信があったので、弾丸は心臓に命中した。

しかし奇妙な事に、弾丸は直撃と共に消滅してしまった。


「何…?」

「はァん!?どったんでェ!?」


私が大喜多に絶望しようと思った、その時。


『私が選んだ者にして、あの程度の罵りで我を失い、挙句熨されるとは』


謎の声と共に、地に伏した少女の服の中から、もぞもぞと這い出してきたものが居た。

それは大きさ7センチほどの甲虫と思しき赤と黒の虫で、ひょうたん型の体つきをしていて頭は小さく、口は針のように細長くとがっている。


『全く。生き血をやるから神にしてくれと頼んで来た癖に、この終わり方はなんだ。

私がくれてやったこの力を、有効活用するまでもなく倒れおってからに…』


そう言って、虫は飛び立ってしまった。

あとで判った事だが、少女の正体は只の人間であり、あの喋る甲虫―正確にはサシガメという、カメムシの一種―は、『譲渡型能力』を持つ異形だったという。


譲渡型能力とはその名の通り、自らが能力を行使するのではなく、他の非異形にその能力を与えるという、実に風変わりで珍しい形式の能力である。

この能力は「他人に与える」という形式上能力そのものが複雑なものは大変珍しい。

また能力、を与えられた非異形は与えた異形に対して能力を使うことは出来ず、能力を与えた異形を攻撃する事も許されない。

逆に、譲渡型能力の持ち主が能力を譲渡できるのは原則一個体のみであり、能力の譲渡は相手の了承を得なければならない(ただし、剥奪は自由に行える)。



この事件以来、私は大喜多に助けられることが多くなり、やがて親友のような間柄になっていった。

そしてある日、私の幹部昇格が決まった時、遠慮する彼を無理矢理私の側近に任命。今に至るのである。


―現代・中国―


「く…畜生…流石は伝説の異形って…奴か…」

「そらね。TBT(こいつ)には異形の回復を弱める効果があるからさぁ…別に伝説だからってワケでも無いのよねェ」


地面に倒れたまま動かない鉄治と、恐怖の余り物陰に隠れたまま動けない千歳と千晴。

そして、赤く透き通る槍を生成中の曽呂野。


「正々堂々戦ったんだ…ラストは大技でトドメさしてあげるよ。

待ってな、コイツは作るのに時間がかかるんだ…」

そう言う彼女の傍らには、慎重の二倍以上はあろうかという長大な槍が形作られて続けている。



一方その頃、物陰に隠れていた千晴はというと。


「(ヤバイよ…どうしよう……どうすれば良いって言うの…?

田宮様は今にも留め刺されそうだし、千歳はあの女の投げたクナイが刺さって死に掛かってるし……もう私しか、居ないのかな……)」




熟考の末決意を固めた千歳は、その聴覚を研ぎ澄ます。


「(…聞こえる…あの女の鼓動………多分だけど…あそこがあいつの……弱点………)」


カートリッジに残っている弾丸は、もう一発しかない。

つまりチャンスは、一度きりだ。

この一発を逃せば、自分達は皆殺しにされ、全滅してしまうだろう。

だから、この一発に賭けるしかない。



「(…………脈打つ場所は……そこか!)」

千歳は物陰から勢い良く飛び出すと共に、自らの耳のみを頼りに狙いを定め、両手で構えた拳銃の、引き金を、引いた。



バスン!



乾いた音と共に射出された弾丸は勢い良く飛んで行き、曽呂野が気付くよりずっと前に、彼女の右肩へと突き刺さった。



「ッ!?」


曽呂野が弾丸直撃に気付いたのは、実に直撃から5秒もあとのことであった。

そしてその瞬間、曽呂野の手元にあった巨大槍と、千歳の体に突き刺さっていたクナイとが―即ちその場に存在した全てのTBTが―一瞬にして崩壊し、消滅した。



「…何てこったい…」

面食らったのも無理は無い。

今の今まで知られた事の無い能力の弱点を一瞬で見破られ、一時的にとはいえ、TBTを封じられてしまったのだから。


「良く見破ったね…お嬢ちゃん…。

何でアタシの弱点が右肩だって判ったんだい?」


「…聞こえたんですよ。貴方の右肩だけ、血の流れ方が変っていうか、激しかったんです。

だから、そこが何か変だなって。

で、撃ったら案の定って訳で」


「…そうかい…アンタ、耳が良いんだね…。

その通りさ。


アタシのこの紅いヤツ―TBTってんだけどさ、こいつは体内にエネルギー減を設けなくちゃならなくてね…詳しいことは明かせないんだけどさ、そのエネルギー源ってのは、少しの傷でも駄目んなっちゃうのよ。で、駄目になったら修理するか、新しいのを作らなきゃならないんだけどね。

修理よか新設のが時間短縮できるんだけど、それでも15分は必要でね。


ま、今のアンタ等始末するのに、15分要らないだろうけ―「これでもか…?」


倒れ込んでいた筈の鉄治の一言と共に、曽呂野は自分の置かれている状況を知って、思わず凍り付いた。


自分が倒した筈の男はその場に無く、その代わりに、背後には全身が金属光沢を放つ銀色の、異形の生物が佇んでいた。


その生物の骨格は、確かにヒューマノイド型でこそあった。

ただし、全身は銀色の金属光沢を放つ鎧の様な外皮に覆われ、顔面は機械的な悪鬼面の様で、口の中には小さい釘のような歯が大型肉食魚のように並んでいる。

眉の位置からはカミキリムシを思わせる細長い独特の触角が生え、それが少し揺れていた。

手足は如何にも鋭そうな外皮で覆われており、二の腕と脹ら脛に収まるようにして、両手と踵から鋭い生物的な刃が生えている。

更にこの生物的な刃は両肩と背中と腰にも二本ずつ存在し、四肢のものとは違い根本の間接がある程度発達しているので適度に方向転換が出来、長さも四肢の刃の二倍はあった。



そう、それは第二部二話で初登場した、姿をも異形となった田宮鉄治であった。

「…参ったね…こんなウラがあったとは…驚きだよ」

鉄治は、曽呂野の全身の主要動脈付近に刃を突きつけていた。


「まさかアンタが、あのケガから復帰するとはね」

「四半は大体倒れた『フリ』だな…残りは大体根性ってところか」

「成る程ね…まぁ良いや、アタシはどうなったって良いからさ…あの女…あの白服の女だけは―「無理だな。命は大切にしろ」


「……好きにしな…」



曽呂野のその一言を聞いた鉄治は、携帯電話でどこかへ連絡を入れる。

「もしもし、日異連本部か?俺は東京チーム幹部補佐役の田宮だ。

捕虜二人を捕らえた。人禍幹部とその側近だ。部下二名共々負傷しているから、医療機器を揃えた輸送機を手配してくれ。あぁ、四人分頼む」


数分後、妹尾姉妹以下四名は輸送機で日本へ運ばれ、日異連傘下の病院で治療を受ける事となった。

捕まった人禍の二人も、捕虜としての保護が決定した。


―同時刻・ヨーロッパ―


健一は未だ、亡骸の傍らで座り込んでいた。


と、その時である。

「…浸り終わったか?

黒沢…健一ィィィィィ!」

ラウチが、糸を抜け出してしまった。

しかし、健一は動じずショットガンを構える。

元より永久に拘束していられるなどとは思っていなかったので、こうなる事など想定内である。

否、想定内は相応しくない表現だろう。


彼はラウチが糸から逃げ出すのを、待ち望んでいたのだ。


不気味な顔面を恐ろしげに豹変させ、直立しつつ羽ばたくラウチ。

健一はそんな蟲の注意を、正面の自分のみに集中させる。


そして、ラウチが地面から足を浮かせた瞬間、健一はショットガンの引き金を引いた。

だがしかし、弾は出ていない。空砲である。



そして事が起こったのは、空砲発射とほぼ同じ時刻。





宙に浮いたラウチが1cm前に進むと、地面から長く黒い糸が現れ、ラウチの腕に絡みつく。

それを振り解こうと腕を振れば、また糸が現れ、今度は足に絡みつく。

更に一本、また一本と、ラウチの身体に絡み付く糸は瞬く間に数を増して行き、遂にはラウチを地面に拘束してしまった。


「…まるで蜘蛛の巣にかかったゴキブリだな…おっと失礼、お前はプロトファスマ。

キャリアと実力を兼ね備えた陸生昆虫のエースだったか?

大昔の蟲はどいつもこいつも桁外れに大きいらしいが、網を張る蜘蛛なんて居たのかどうかは知らないが…」

依然として冷静に、表情一つ変えない健一に、ラウチは怒鳴り散らす。

「てめぇ人間型!この俺様に何をしやがった!?

何で手前如きが俺様を縛り上げられるんだよ!?

どこで何にどう細工をすりゃこんな事になる!?

おい、聴いてンのかテメ――ぇ…?




その瞬間、


ラウチの身体に絡みついた糸が、再び地上に吸い込まれ始め、






細い糸に締め付けられた蟲の身体は、ただの切り刻まれたクチクラ層と挽肉の塊へと成り果てた。


「…糞蟲め…地獄で一生悔やんでいろ…。

彼を殺し、冒涜したという大罪と……それが招いた最悪の結果をな…」

ゴードン(肉塊)「白い巨像第四部!次回はついに我らデイヴィッド小隊の復活大逆転劇!」

蠱毒成長中「んな訳ねぇだろ死ね!」

ゴードン(肉塊)「ぐぎゃあああああ!液体窒素はヤメテー!」

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