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箱庭の騎士  作者: 水無適
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箱庭の騎士

『この世界は女神様の箱庭なの』


『はこにわ?』


『そうよ、女神様が作った女神様が愛す唯一の箱庭』


『じゃあ、ぼくもおかあさんもみんなめがみさまにあいされてるの?』


『そうよ。でも、悪さをする人もいる。女神様に見つからないように隠れて悪さをするの』


『じゃあぼくたちもわるさをされちゃう?』


『そうならないように、騎士様がいるのよ』


『きしさま…!』


『そう、騎士様。女神様が遣わした精霊の加護を受ける特別な人たちの事よ』


『ぼくもなれるかな?!』


『まだ、わからないわ。でもなれるといいわね。ほら、いい子はもう寝る時間よ』


『おやすみ、おかあさん!』


『ええ、おやすみ』

つ、ついにこの日が来た!

騎士様になれるか今日で決まる!

だ、大丈夫。今まで僕は出来る限り努力をしてきたはず!


心臓は早鐘を打ち、耳まで鼓動しているようだった。



「受験番号237番!」


「は、はい!」


手を合わせ、女神様の像に祈りを捧げる。


「ったくしょうがないわね!」


目の前に小さな小人が現れた。


「…え?」


「あんたと契約してやるって言ってんの!」


「本当!?」


目の前に現れたその方は僕の手の甲に口付けした。


その直後、女神像は光りを放った。







「どうぞこちらへ」



先ほどとは打って変わって態度を変えた職員たちが僕を恭しく扱い始めた。


「少々こちらでお待ちください」


生まれてはじめて紅茶を出され、緊張しながら口をつける。


「あれって多分精霊様…だよな」


柔らかい椅子に身をまかせ、天を仰ぐ。



「お待たせしました。カイト様」


「そんな、様付なんて」


「騎士となるお方には敬意を払わなければ」


「っっっっっっっ!!!!!」


感極まって声が出ない。


「カイト様?」



「しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」


「うわっ、うるさっ」



、、、!!!

顔を上げると金髪で作り物の様に美しい人がいた。


「…こんにちは!」


「あ、うん」


恥ずかしくて死にそう…



「カイト様、ご紹介しますね。今日からあなたのバディとなるアシェル様です」


「よろしく、アシェル!」


握手をしようと手を差し出す。


「ああ」


差し出した手が握り返されることはなかった。


「案内するよ」


「う、うん!」


それでもやっぱり騎士様になれたのは嬉しいなあっ!

今までの鍛錬が報われた気分だ!


「アシェルは何が好きなの?」


「特に好き嫌いはない」


「珍しいな。僕は母さんが作ってくれる鶏肉のパイが好きなんだ!」


「へえ」


「アシェルにも今度作ってあげるよ」


「そりゃあありがたい」


そんなに喜んでくれるなんて…!


「そういや、アシェルは何歳なんだ?」


「15」


「同い年だ!」


「だからバディなんだ」


「そうなんだ〜」


「なあ、これまでもそうやってバカ全開で過ごしてきたのか?」


「ばっバカ!?」


「着いたぞ」


「うわっ広い!!」


「ここでのルールを説明しておく」


「お願いします!」



1、何があってもバディと一緒にいること


2、呼び出されたら招集に応じること


3、騎士同士の戦いを禁じる


4、精霊を大事に扱い、女神様を崇めること


5、その力は民の安全のために、国の繁栄のために使うこと


6、全ての民を平等に愛すこと




「基本的にこれさえ守ってくれたらいい」


「精霊と女神様については1つだけなんだ」


「彼らを縛ることは誰であろうと許されることではない」


「ふーん」


「そもそも俺らがこうやって丁寧に扱われているのも精霊と共に在るからだ」


「なるほどな」


「…お前は気づいていないだろうから常識を教えてやる」


ため息つかれた…


「まずここにいるのはお前以外全員王侯貴族の方たちだ。あと、俺は特殊な立場にあるから1人で任務に行くことがある。俺は単独行動が許されているんだ。だから余計な詮索はよせよ?」


「…じゃあ僕も許されているのかい?バディがいないってことはそういうことじゃないか」


「どうだかは知らんが、俺が任務の間は基本は自室から出ることを許されないだろうな」


「そういや騎士って何人いるの?」


「12人だ」


「じゃあ僕がきたから今は13人?」


「いや、お前が来る前は11人だった。本来騎士は12人なんだ。20年前、任務の最中1人の騎士が行方不明になってから現れていなかっただけで」


「任務ってそんな危険なんだな」


「はあ…補修があるだろうからそれをしっかり受けることだな。1週間はお前を気遣ってか俺も任務を課されていない。その間に常識を身につけろ」


「優しいんだね、アシェルは」


「…はあ?」


「あ、ご飯ってどうすんの?」


「ああ、食堂がある」



案内されるがまま向かうと仰々しい机に椅子が12個並んでいる。


「うわっ、たまげたな。こんなとこで食べんのか」


「基本的にはみんな自室で食べるけど、今日はお前が来たからな。挨拶がてらってことで全員ここに集まることになっている」


「僕のために…!」


「多分今日だけ」





夜になり、晩御飯の時間になった。


「では、自己紹介をしようか」


にこりと笑った彼はなかなか隙がない。


「僕はリアム。第一席の騎士だ」


そして時計回りに挨拶が進んでいく。


「第二席、ライル。リアムとペアだ」


第三席、エイダン

第四席、マシュー

第五席、エドワード

第六席、イーサン

第七席、ユージーン

第八席、ヘラルド

第九席、イアン

第十席、ルイス

第十一席、アシェル

第十二席、カイト


2組ずつ前から順番にバディを組んでいるみたいだな。

王侯貴族なだけあって皆見目が良い。



「驚いた、平民だって聞いていたから所作なんて知らないのかと思ったら完璧じゃないか!」


「幼い頃から父や母に言われて育ったんだ」


「君の父君や母君はどこかの家族だったりするのかな?」


「いや、両親は自分たちのことをあまり語らなかったから」


「君の髪の毛それ生まれつき?」


「うん」


黒い髪がそんなに珍しいのかな?


「イアンはなんだか不思議な瞳だね。深くてすいこまれそうだ」


「そんな風に表現するのは君が初めてだよ」


食事の手を止め、目を丸くしている。


「カイトはなんか好きなものあるのか?!」


ユージーンが陽気に話しかける。


「うーん…鍛錬かな」


「女には興味あるか?」


「ユージーン!!!」


エイダンが声を荒げる。


「君もなかなかだよ?エイダン」


「ま、マシュー!」


「皆んな落ち着いて…ね?」


「おろおろしてばっかだなイーサンくん?」


「エド…」


「おかわりくれ!」


わちゃわちゃし始めた。


「僕とライルは先に失礼するよ。僕らが居なくてもどうにかなるだろう?」


リアムたちはさっさと帰ってしまった。


「アシェル、ここはとても賑やかだな」


「そうだな」


アシェルはさっきから心ここに在らずって感じだな。

でも、この雰囲気は嫌いじゃない。

それに――


「賑やかで…幸せそうだ」


…?心臓が


「ゴフッ」


血……?


胸の奥が焼けるように熱い。


「始まったか」


アシェルの声が聞こえた。


「ユージーン、エイダン! 手を止めろ!」


その瞬間、食堂の空気が張り詰める。


「覚醒が始まる」

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