8話
それから三ヶ月の月日が経った。
アレスター男爵領を除く全ての王国領で、疫病と魔物による被害が急拡大していた。また、不作に続く不作で、食うに困る状態になっていた。
一方、アレスター男爵領は順調そのものだ。人々は、男爵領が神に祝福された土地であると考え、男爵領に押し寄せた。
同時にこんな声も聞こえてきた。王家は、聖女の怒りを買ったのだと。故に呪われ、聖女が移り住んだアレスター男爵領だけが栄えてきたのだと。物理的に男爵領へ行けない者、見栄のために男爵領へ行けない者たちは、聖女を切り捨てた王家を批判した。もちろん表立ってでは無いが。
「今まで見つけられなかったが、こうなっている以上、ソフィアは間違いなくアレスター男爵領に居る。我々は聖女ソフィアを迎えに行く。もちろん着いてきてもらうぞ、ローグ」
「⋯⋯はい」
「分かっているな?ソフィアに謝罪を行い、再度聖女としての力を行使してもらうよう頼み込むのだ。お前が差し出せる物は全て差し出せ。意地やプライドは捨て、ただ許してもらうよう努めるのだ。良いな?」
「⋯⋯は、はい」
事の重大さは、ローグにも伝わっていた。だから、渋々ではあるがソフィアに謝罪する覚悟ができていた。
現在王家では、聖女ソフィアがアレスター男爵領に居るのは間違いない、と考えており、聖女を再び王家の元に戻す計画が企てられている。これは国家を左右する重大な計画であった。
王家に仕える占い師は告げる。このまま聖女が戻らない場合、災いにより王家は滅びる、と。不幸なことに、ソフィアが聖女の仕事を放棄したのと同時に、王国には特大の災いが押し寄せていた。これを防ぎ、打ち消すには聖女の力が必要なのである。
(ソフィアは、なんだかんだ甘ちゃんだ。王国の人間が苦しんでいると分かれば、戻ってくるに決まっている)
ローグはニヤリと笑った。ソフィアは困った人を見捨てられない。それが例え、自分を裏切ったローグを助けることになってもだ。
(お前は所詮、私の掌の上で踊り、利用されるために生まれたのだ。ソフィア⋯⋯!)
ローグは、怒りと憎しみの炎を心に灯した。ソフィアは戻ってくる、という根拠の無い自信と共に。




