第36話 縁結びの木の怪(14)
旧校舎の建物が立つ更にその先。緑地に隣接するところに全ての元凶、『縁結びの木』がある。
落合が待っているのはそこだと、私は考察した。
縁結びの木へと向かう道を歩いている途中、足元に何か落ちているのに気が付く。
「……!」
それはどこかの神社のお守りだった。古く、土にまみれてズタズタにハサミで切り刻まれている。
昔のことを思い出しそうになって、お守りを避けて走る。
今度は画用紙が落ちていた。
母親と父親、それと子どもの3人が描かれている。小さな子供がクレヨンで描いたものだろう。背景には歪な形の鳥居が描かれている。
「……」
今はこんなものに気を取られている場合じゃない。私はスマホのライトで進むべき方角を照らした。
「呪われた子」
前へ進もうとした私の背後から耳障りなしわがれた女性の声が聞こえてくる。
「どうして男の子じゃなかったんだ」
今度はしわがれた男性の声だ。
背後には誰かがいるような気配がする。だけど……振り返ってはいけない。
「どうして生まれて来たの?」
「……」
私は深呼吸すると重たい足を前に進めた。
暗闇の中に佇む緑地は日中美しい緑色をしているのに夜になると不気味な深い緑色へと姿を変えていた。奥が見えない木々の先に何かが潜んでいてこちらの様子を伺っているような気がして落ち着かない。
あそこには何もいない。
私は息を整えながらスマホのライトで正面にあるであろう縁結びの木を照らした。
枝にびっしりと赤い布が結ばれた異様な姿の木……縁結びの木が光りを浴びてその不気味な姿を現した。
「何……これ?」
ライトを照らしてすぐに異変に気が付いた。
赤い布の先端がどれも輪っかになっていたのだ。最近までこんな風になってなかったのに。
風もないのに先端が輪っかになった赤い布がゆらゆらと揺れる。じっと見ていると目がおかしくなりそうだった。
まるで……
「首を吊るためみたいだね」
縁結びの木の方から声がして、私は大きく肩をびくつかせスマホを落としそうになった。
反射的に縁結びの木から距離を取る。声の主は縁結びの木の近くに立っていた。
「落合……さん」
「どうしたの?こんなところで」
縁結びの木の側に立っていたのは……制服姿の落合だった。
ゆっくりとした動きで私に視線を向ける。前髪が顔に掛かって視線が交わらないのが不気味だった。
「それはこっちの台詞。こんな時間に学校で……何してんの」
「忘れ物しちゃって」
落合がそれらしい理由を答える。
何かがおかしい。目の前にいるのは落合なのに落合ではない人と会話しているみたいだ。
「忘れ物は……見つかったの?」
「うん。もう見つかったよ」
周りが暗いのと落合の前髪が顔にかかっていて表情が良く見えない。
切り出すなら今しかない。
私は意を決して口を開いた。
「あのさ……これは私の考察なんだけど」
落合が前髪の奥からこちらを伺っているのを感じて緊張感を高める。
「今まで東雲女子校で起こってた怪異って……全部、落合さんのせいだよね?」
落合が答える代わりに背後で先端が輪っかに結ばれた夥しい数の赤い布がざわざわと揺らめいた。




