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第30話 縁結びの木の怪(9)

「あ!藤堂さん久しぶり!」


 柔らかい表情で私を迎えてくれたのは話を聞きたかった加河かがわさん本人だ。新谷さんと棚上さんの机を向かい合わせて何か話している最中だったらしい。お弁当は食べ終わっている。


「どうしたの……?もしかして、縁結びの木のこと調べてるの?」


 棚上たなうえさんがおどおどとした様子で私に尋ねる。


「今話題といえばそれだけだもんね~。神様のこと本気にしてる子が多くて怖いよ。私は無宗教だから」


 新谷さんが半分面白がって半分本気で怖がっているような声を上げる。どうやらC組も縁結びの木を信仰する人としない人に分かれているらしい。


「うん。調査中ではあるんだけど……ひとつ気になることがあって」


 私が話始めようとすると棚上さんが近くにあった空いた席を引っ張ってくる。


「良かったら座って……!」


 私は棚上さんに席を進められるまま座った。別のクラスの、しかも知らない人の椅子に座るというのは何だか落ち着かない。


「ありがとう。加河さんに聞きたいんだけど……。『ナナシさん』の心霊現象に遭う前、何かなかった。例えば……ナナシさんに関する情報を誰かに教えてもらったとか」


 加河さんは「ああ……」と歯切れの悪い返事をする。どうやら心当たりがあるらしい。


「あったよ……。でもあんまりよくない話だから……許して!今はほんと、ふたりのこと恨んでるとかないから!」


 加河さんは申し訳なさそうに手を前に合わせてそう前置きした後で話し始めた。


「芽衣と英麻のことすっごいムカついてた時にね。下駄箱に手紙が入ってたの。『嫌いな人を懲らしめる方法』っていう、手書きの手紙」


 棚上さんと新谷さんが顔を見合わせて驚いている中、私だけが冷静だった。

 やっぱり。今までの心霊現象には明らかに第三者の手引きがある。それも東雲女子校の生徒である可能性が高いということが分かった。


「どんな手紙だった?持ってる?」

「ううん。その手紙、『おまじないを実行したら捨てること』って書いてあったから……もう持ってない。ごめん……」

「手紙にはなんて書いてあったの?」

「うんっとね……階段の踊り場で嫌いな人のことを強く願えば『ナナシさん』が恨みを晴らしてくれるって……」


 加河さんはすぐに棚上さんと新谷さんに頭を下げた。


「ほんとにごめん。その時は怒りで我を忘れてて……。最悪なこと考えてた」

「大丈夫だよ。過去の話だし……」

「そうそう。おあいこだから!」


 私は三人の雰囲気が悪くならなかったことに安堵すると話を進めた。


「誰が手紙を入れたか心当たりはない?」

「ないな……。ごめん大した情報じゃなくて」

「ううん。……ありがとう」


 私は思考を続けながら静かに椅子から立ち上がる。


「他になにか縁結びの木のことで気がついたら藤堂さんに伝えるね」


 棚上さんが自分の両手を握りしめながら言った。


「心霊現象のこと関係なくC組に遊びにきてもいいから。私達ももっと藤堂さんのこと知りたいし……」


 加河さんが笑顔を浮かべながら言う。その言葉に便乗するように新谷さんと加河さんも大きく頷いた。

 私は瞬きを繰り返す。まさか私に他クラスで会話するような生徒ができるなんて。部活動に入らず、他人との関係を断ち続けた私に?信じられない出来事に私はしばらく身動きができずにいたがすぐに元の冷静な自分に戻る。


「あ……ありがとう」


 私は小声で御礼を言うとC組を後にした。どうせこの関係も落合の関係と同じ。いつか切れてなくなってしまうものだ。一瞬宙に浮いた自分の体を急いで地面に括りつける。


 放課後、私が向かうべき場所は決まっていた。


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