人の為は自分の為
私の足じゃいつまでたっても帰れないからって、途中からカイが背負ってくれるようになった。
『大丈夫』って言ったけど、カイは『軽すぎるぐらいだ』って言って下ろしてくれなかった。
そうしてお城から出て三日目。
国境までやっと半分まで来たみたいだ。
オオカミの足ってすっごく速い!
すると馬車が通ってそうな広い一本の道に出た。
ここなら歩きやすそうだし、カイに下ろしてもらって一緒に歩くことにした。
一応私たちの正体がバレないようちゃんとフードをかぶってだ。
ふしぎに思ったんだけど、オオカミさんになった方が獣人さんってバレないんじゃないの?
そのままカイに聞いたら『人の方がラクだ』って言ってた。
手や足が自由にきくからなんだって。
私も一回オオカミさんになって試してみたいな。
日当たりのいい道にそってどんどん歩いていくと、遠くに家がいっぱいあるのが見えた。
「もうすぐ町に着くし、そこで少し食料買っていくか」
「カイ、お金持ってるの?」
「先が長いから贅沢はムリだけど、焼きたてのパンぐらいは買おうぜ」
「パン?! 食べたい!!」
私にしたら森での生活はお城にいた時よりも数倍良かったけど、さすがにパンとかは手に入らない。
想像してたらすごくお腹がすいてきた。
「ねぇカイ、早く行こう!!」
カイよりも先に走り出した時だ。
「ちょっと待て!」
するとカイは私の腕をつかんで道沿いの茂みへと押し込んだ。
そして私の口をふさぎ、私を隠すように覆いかぶさった。
どうしたんだろ。
カイの目が鋭くなった時だ。
「助けてくれぇっ!!」
男の人の声と一緒にお馬さんが荒ぶった声が聞こえてきた。
「何?」
「多分賊に襲われてるんだ。 危ないから静かにしてろ」
「でも危ないなら助けなきゃ!」
「そんな事してオレたちの正体がバレたらどうすんだよ。 放っとけばすぐ落ち着くって」
「でも死んじゃったらどうするの?! そんなのイヤだよ!」
私は居ても立ってもいられなくて立ち上がった。
「私、行ってくる!!」
「オイ待てって!!」
私はカイをふりはらって声のした方へ走った。
そしたら五人の悪そうな人達が荷物の積んだ馬車を囲んでた。
御者さんらしき人が引きずり下ろされるのを見てゴクリと息をのんだ。
「お? なんだガキじゃねぇか」
あ、ぼーっと見てたら見つかっちゃった!
どうしよ! 悪者がこっちに走ってきた!
「おりゃあ!!」
そしたら私のあとを追ってきたカイがものすごい勢いで悪者の顔を蹴った。
すっごいジャンプ力!
蹴られた悪者は『うぉぉぉっ?!』ってへんな声をあげて思いっきり木にぶつかった。
そのままズルズルと落ちて動かなくなった。
「カイ!」
「ぼーっとすんな! 後ろに隠れてろ!」
そう言ってカイは近くの木の枝を折ると、オオカミみたいに悪者たちへ飛びかかった!
悪者たちはみんな大人で剣や弓を持ってたのに、カイは木の枝一本でバッタバッタとたおしていく。
その間に私はさっき引きずり下ろされてた御者さんの所へ走った。
「大丈夫ですか?!」
「あ、あぁ……、何とか……」
腕や頭から血が出てるけどそこまでキズは深くないみたい。
私はいそいでスカートを裂いて、それぞれに当てた。
「君達は一体……」
「きっともう大丈夫ですよ。 カイがたおしてくれるから!」
「え……?」
そう言って戦ってるカイを見たら、うわっ!
フードが外れて三角のお耳が見えてる!
気づいた一人の悪者が大声で笑った。
「そいつは獣人の子どもだ! 生け捕りにしろ!」
ひどい! なんて事言うの?!
そしたら近くでたおれてた悪者の一人がなにかを唱えた。
するとカイのまわりにキラキラと銀色の魔法陣が現れた。
あれはダメ、きっとつかまっちゃうヤツだ!!
「やめてぇ!!」
私はとっさにカイの元へ走った。
――パリン!!
そしたらあるはずのないガラスが割れたような音がして、手がヤケドしたみたいに熱くなった。
「いったぁ……!」
あまりの痛さに私はペタンと座り込んだ。
すると全員倒し終わったカイが走ってきてくれた。
「大丈夫か?!」
「うん……」
熱くなった手を見たら、両方の手が血まみれになってて地面に血がポタポタ落ちてた。
「……なんで?」
「お前、魔法を消したのおぼえてないのか?」
「え? 消したの?」
じゃあさっきパリンッて音がしたのは魔法陣が壊れた音だったのかな。
でもどうやって?
「君達! 大丈夫か?!」
呼ばれて顔をあげると、おそわれてたヒゲのおじさんが青い顔して私達の方に走って来た。
「来るな!!」
そしたらカイは怖い声を出しておじさんを睨みつけた。
シッポも逆立てて、すっごく怒ってる。
おじさんもそれがわかったみたいで、その場で足をとめた。
「……怖がらせてしまって本当にすまない。 賊達に代わって私が謝罪しよう」
おじさんはそのまま座って私たちに深々と頭を下げた。
その後ろで荷車もお馬さんも無事だったのが見えたからホッとした。
私はカイの服を引っぱって話しかけた。
「カイ、私は平気だしおじさんはゆるしてあげよう?」
そしたらカイはギュッと唇をかんだ。
「君達、良かったら私の屋敷に来てくれないか? お礼がしたいんだ」
お礼だって!
でもカイはまだ怒ってた。
「そう言って捕まえる気なんだろ」
「恩人を売るなど神に誓ってするものか!! そこのお嬢さんの服もボロボロだろう。 せめて服だけでも用意させてくれ!」
そうだった。
元々布がうすかったからあっさり破けたんだよね。
よく見たら左足が太ももまで見えてて私はあわててスカートをひっぱった。
それを見たカイは大きなため息をついた。
「しょうがねぇな……。 このキズも手当してもらおう」
さっきまでこわい顔してたのに、カイは少しだけ眉を下げて私の手をとった。




