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幼姫と獣人くん〜まわりにナイショで敵国を救いに行ったら大変なことになってしまった件〜  作者: 夢屋


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希望の光

 あの後私とシェムエール様は、クライブさんを探してカイの居場所を聞き出した。

 あれからずっとカギをかけて自分の部屋に閉じこもってるみたいで、クライブさんも困り顔だった。



「カイ、開けてよ! 話を聞いて!」



 私がドンドンと扉を叩いても全然返事してくれない。

 ケンカした時みたいにそっぽ向いてるんだ。

 どうしたらいいんだろう。

 するとシェムエール様が私の前にすっと入ってきて、視線だけクライブさんに向けた。



「クライブ、ティルダ姫をお守りしろ」


「え? か、畏まりましたぁ!!」



 ピン!と丸耳とシッポを立てたクライブさんは、急いで私を抱きかかえて二メートルぐらい部屋からはなれた。



「何か始まるの?」


「……ティルダ様には《《ちょっと》》刺激が強いかも知れません」



 クライブさんの顔がひきつってる。

 どういうことだろ?

 クライブさんから変な緊張感が伝わってきて、私も思わずクライブさんにしがみつく。

 そしてゴクリと息を飲んだ。


 するとシェムエール様はスッと息を吸い込んだ後、グッと右手を握って軽く後ろに引いた。


 ドゴン!!


 繰り出されたパンチが強すぎて、大きな音といっしょにブワッ!と土煙とたくさんの木屑が舞った。


 ……シェムエール様、扉に大きな穴を開けちゃった。


 ギギギギィ〜……ッと気味悪い音を立てながら扉が開くと、シェムエール様は素知らぬ顔で中に入っていった。



「……シェムエール様、扉こわしちゃったね」


「実力行使ってヤツですね」



 そう言えばカイも鉄の鎖が外せるぐらい力が強かったな。

 ということはシェムエール様はもっと強いのかも。


 クライブさんに抱えられたまましばらく呆然としてると、カイが部屋から飛び出してきた。



「カイ!」



 私と目が合うと『何やってんだよ!』と怒りながらクライブさんから私を引きずり下ろした。

 そしてそのまま私の手を引いて長い長い廊下を走り出す。



「カイ! どこにいくの?!」


「ムクムクんところ! ちゃんとシェム兄から許しをもらったから《《二人で》》いくぞ」


「うん!」


 

 カイの手がすごく熱い。

 それがふしぎと私の未来をてらす光に思えた。

 

 さぁ、今度はディオン様だ。

 みんなが心から笑えるように、がんばらなきゃ。

 






 次の日。

 空が明るくなってきた頃に私とカイはシェムエール様によばれて、ディオン様の眠る部屋に通された。

 カーテンが開いてるから中は明るくて、昨日の白いおヒゲのお医者様もディオン様のそばに座って待っていた。

 小さな三角耳のお医者様は、私たちをみるなり立ち上がって深々と頭を下げた。



「一時間程前に持ち帰って下さった薬をディオン様に飲ませました。 ……おかげで、ディオン様の体温がようやく正常に戻ってきております」



 わぁ……っ!と言葉にならない喜びの声が上がった。

 さすがバイエノールさんの薬だ!

 カイは急いでディオン様に駆け寄り、その頬に触れた。

 ディオン様はまだ目を閉じたまま。

 それでもカイはうれしそうに目を赤くした。

 それを見ていたシェムエール様も一瞬頬をゆるめて、そして真剣な眼差しを私に向けた。 



「ティルダ姫」 


「は、はいっ!」


「次期国王を……兄を、救ってくれ」



 シェムエール様の金の目にはもう荒々しさはなく、家族思いの一人の人間の目をしていた。


 私は大きくうなづいた。

 

 そしてディオン様がねむるベッドの横に置かれた革張りの豪華な一人掛けソファにこしかけた。

 ディオン様の顔をのぞきこむと、透き通るような白い肌に少しだけ赤みがさしてるのがわかった。 


 私の心臓の音がドクドクと重く体に響いてくる。

 それを落ち着かせようと深呼吸を一つした。

 

 昨日の夜もカイがオオカミになってずっと一緒にいてくれたからよく眠れたし、ご飯も食べられたからきっと大丈夫。

 

 行って探してこよう。

 ディオン様の魔力核を。

 私は顔をあげてカイに笑いかけた。



「じゃあカイ、行ってくるね」


「あぁ、ちゃんと戻ってこいよ」



 そう言ってカイは私よりも先に手を差し出してくれた。

 うれしくて心臓がギュッてなった。



「うん!」



 私はカイの手をにぎると、ディオン様のお胸に耳を当ててゆっくりと目を閉じた。


 トクン……、トクン……。


 ディオン様の心音は大人の人とは思えないぐらいに小さくて、ゆったりとしたリズムだった。

 その弱々しさに一瞬こわくなったけど、カイの手の温かさがそんな不安を洗い流してくれる。


 トクン……、トクン……、トクン……、トクン……。


 ゆっくりとディオン様の鼓動に自分の鼓動をちかづけていく。

 大丈夫、こわくない。

 皆に慕われる王様だもの。

 きっと、私の事も受け入れてくれるはず……。


 そんな事をかんがえていたら突然眠気におそわれて、体がドプンと水の中にしずんでいくのがわかった。







「起きて……起きてよ」


「んん……」



 おかしいな、ディオン様の世界に来たはずのになんでカイの声がするの?

 ゆっくりと目を開けると、大きな三角耳で水色の目をした同い年ぐらいの男の子が私の顔をのぞき込んでいた。



「カイ、何で……?」



 思わず名前をよんだらその男の子は水色の目を大きくしてパチパチさせた。

 そしてフッときれいな顔でほほえむ。



「カイって、もしかして僕の弟の事かい?」


「ボクの弟……って、もしかして、あなたがディオンさま?!」



 ガバッ!と飛び起きた私を見て男の子は『そうだよ』と優しい声で笑った。

 確かにカイの声ににてるけどカイじゃない。

 薄暗い中でも、肩まで伸びた銀髪がキラキラしててサラリと揺れる。

 ちょっと女の子とまちがえてしまいそうなぐらいまつ毛も長くて大きな水色の目。

 まるで絵本の世界に出てきそうなふしぎな雰囲気をまとった、美人顔の獣人の男の子だ。

 でも、何でこどもの姿なんだろう。


 

「それで君は? 見たところ人間みたいだけど」


「失礼致しました! 私、ティルダと申します」



 そういえば初対面だった!

 しかもディオン様は次に王様になる偉い人。

 あわててカーテシーをして頭を下げたら、ディオン様は少し困ったような顔でほほえんだ。



「そんなに畏まらないで。 ここは現実世界じゃないんだからもっと気楽に話そうよ」



 そういってディオン様は私に手を差し出してくれた。

 

 



 

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