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幼姫と獣人くん〜まわりにナイショで敵国を救いに行ったら大変なことになってしまった件〜  作者: 夢屋


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その正体は

「二人とも! 目を閉じなさい!!」



 バイエノールさんの切羽詰まった声に慌てて目を閉じた。

 すると一瞬フワッと体が浮いたからビックリして目を開けたら、さっきの魔物がいなくなってた。

 よく見たらここはさっき落ちてきた場所だった。



「移動魔法が間に合って良かったわ。 ヘタしたら二人とも丸呑みされてたわよ」


 

 コモンドルフィスさんて人間たべるの?!

 ビックリしてブルッと体が震えた。

 フカルクにあんなこわい魔物が住んでるなんて知らなかった。

 


「……バイエノールさん、さっきのが国境近くであばれてるってうわさの魔物ですか?」



 草かげから服を着てもどってきたカイの質問に、ブーツ姿にもどったバイエノールさんがうなずいた。


 

「一週間ぐらい前にあのコが森で倒れてたの。 その時はまだ子どもで小型犬ぐらいの大きさだったんだけど、夜が明けたら一メートルはゆうに超えてたたかしら」


「そんなにすぐに?! あんなのうろついてたら森がなくなるじゃないですか!」


「ちゃんと討伐隊がきて鎖でつないでいったわよ。 でもまだ大きくなってるの。 多分落ちてた薬を誤って口にしてしまったんだと思う。 その副作用が運悪く魔力核に出て巨大化してるみたいなの」

 

「おちてた薬? 魔力核……?」



 『魔力核』はどんな生物にもある魔力の心臓部。

 それがおおきいと人間は魔法使いさん、動物さんは魔物になるって言われてる。

 魔法が使えない私の魔力核はきっと豆粒ぐらいの大きさしかないんだろうけど、こわれたり無くなったりしたら生きていけなくなる。

 ちいさくても心臓とおなじぐらい大事なところ。

 コモンドルフィスさんはそこに副作用が出たから、魔法みたいに体がおおきくなっちゃったんだ。



「この前森にコレが落ちてたの」



 バイエノールさんは腰に付けてた小さいポーチから、指みたいに細長いガラス瓶を見せてくれた。

 中には乳白色の水が少しだけ入ってる。

 でもよく見たら底に細かいキラキラの粒がたまってた。



「こんなにキレイなのがお薬なの?」



 どんな味なんだろう。

 甘くておいしいのかな?

 バイエノールさんが中のキラキラを混ぜるように小瓶を振ると、乳白色だった水が透明に変わった。

 すごい! 魔法みたい!


 

「これが最近ランタッベルで流行ってる治癒魔法を使って作られた薬よ」



 するとカイがおどろいた顔でバイエノールさんを見た。



「ランタッベルで流行ってるって、それがなんでフカルクに? 薬品関係はまだ安全かどうかわからないから輸入は禁止されてるハズで……」


「万病に効くっていうから密輸されてるんでしょう。 でも元々魔力核が大きいランタッベルの人間用に作られてるから、魔物や魔力核が小さいフカルクの人間には副作用が出やすいみたいね」


「フカルクの人間って……、まさか兄様も……」



 するとカイの顔がどんどん青ざめてく。

 そのまま力がぬけて膝をついたカイを私はあわてて支えた。



「そうだ……、倒れる数日前に『体が怠い』って言ってた。 『風邪かもしれないからひどくなる前に薬を調合してもらう』って……」



 カタカタと小さく震えながらカイが呟いた。

 ずっと眠ったままだって言うし、もしかしたらカイのお兄さまもこの薬を飲んだのかもしれないんだ。


 ……胸がギュッと締めつけられる。

 私はカイの頭を包むように抱きしめてバイエノールさんに向き合った。

  


「ねぇ、バイエノールさんの力で何とかできないの?!」


「通常の副作用なら治せるけど、魔法で作られた薬の副作用となると先に体に残る魔法を解いてからじゃなきゃ治癒魔法が効かないわ」


「……じゃあその魔法を解けばいいの?」


「そう簡単なものじゃないわ。 副作用を起こしたって事は体内に残る魔法はすでに『毒』に変わってる。 その毒を解くんだから解く側にも影響を受けかねないから、そんなリスクを犯してまではできないわ」


「そんな……」


「そもそも薬というのは薬草を調合して作るのが基本なの。 それを魔法でラクして作るからこういう事になるのよ。 自業自得だわ」



 ……バイエノールさんはしずかな声で話してるけど、本当はすごく怒ってるのかも。


 魔法は精霊さんと手をつないでおこす奇跡みたいなもの。

 それを毒にしちゃうんだから怒りたくもなるよね。


 確かランタッベルでも治癒魔法がつかえる人ってそんなに多くなかったはず。

 だから『万病に効く薬』って聞いたらきっとみんなほしくなるんだろうな。

 そしてそれをフカルクで売れば、更に飛びつく人が増えちゃう。

 でもそれがきっかけで体を悪くしたら、魔法も、精霊さんたちも悪者になっちゃう。

 そんなの私だってイヤだ!


 するとカイがうつむいたまま私の手をふり払って、フラリと一人立ち上がった。



「オレ……今すぐもどってみんなに話してくる」


「え……?」


「大人たちに今の話をすれば何とかできるかもしれない。 すぐに行ってくるからティルダはここで待ってろ」


「でも……」


「ムダよ。 大人達は既に手を尽くしてるわ。 そもそも魔法も使えないのにどうするつもり?」


「それは……」



 呆れ顔のバイエノールさんにカイは何も言いかえせないで拳をギュッとにぎりしめる。

 ここまで来たのにまた足踏みだなんて。

 どうしたら先に進めるの?

 やっぱり子どもの私たちじゃどうする事もできないの?





 ――ううん、まだできる事はある!



「バイエノールさん! 私、やってみる!!」


「……ティルダ、どうしたの?」


「私がコモンドルフィスさんの『毒』を解いてみるよ!!」


   

 


   

 

 





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