森の中に住む『異質』
「まて! ティルダをどこに連れて行く気だ!!」
「ワンちゃんには関係ないでしょ。 さぁ行きましょう」
「まって! カイも一緒がいい!」
「ダメよ、あの子は嘘つきでただの獣人でしょ?」
「ウソつきじゃないし『ただの』じゃない! 私のだいじな人なの!」
私はグイッとバイエノールさんの肩をおしてバイエノールさんの腕からすり抜けた。
浮いてたから体はそのまま地面にむかって落ちていく。
すると下で両手を広げてるカイが見えた。
「カイ!」
きっとカイは受け止めてくれる!
私は真っ逆さまでカイの腕に飛びこんだ!
――――ドサッ!!
国境からおちた時といっしょで、カイは私の体をしっかり抱きとめてくれた。
受け止めてくれた時の衝撃はすごかったけど、カイのおかげでどこも痛くない。
さっきはドキドキしたのに、今はたくましくいカイのそばがすごく安心する。
うれしくて私はカイの首に手を回してギュッとしがみついた。
「ったく、捨て身で落ちてくんなよ!」
「ごめんね、でもカイなら受け止めてくれるって信じてたから!」
「……まぁな」
へへへと笑う私にカイはちょっと呆れ顔だ。
でもすぐに私を背負ってオオカミに変身した。
『とばすからしっかりつかまってろ!!』
「う、うん!」
するとカイは私を乗せたまま国境そばの森へむかって駆け出した。
すっごい速さだ!
まるですいこまれるように私たちは薄暗い森の奥へと入っていった。
ランタッベルで見てきた森よりもちょっとヒンヤリしてて、木も太いがおおい。
それでもカイは上手に草木を避けながら駆けていく。
想像以上の速さにクラクラするけど、私は振り落とされないよう必死にカイにしがみついた。
「待ちなさい!! そっちは危ないわ!!」
うしろからバイエノールさんが空を飛びながら追いかけてくる。
なんだろう、様子がおかしい。
そうして進めば進むほど森はひっそりと暗くなっていく。
『グワァォォォォンッ!!』
すると突然どこからか、おそろしい、大きな大きな雄叫びが聞こえた。
木の生い茂る方からガチャガチャンッ!!と金属がこすれる音といっしょにゴォッ!と突風が吹き荒れる。
私とカイはそれに弾かれたみたいにして地面へ叩き落とされた。
『ティルダ! 大丈夫か?!』
「うん……」
ズキズキする痛みをガマンして体を起こすと、カイが何かから私をまもるように唸り声をあげた。
その見つめる先を見てゾォッと背筋が凍った。
いたのは私たちを見下ろすぐらいに大きな大きなモップのお化けだ。
白くて毛むくじゃらの体からチラリと金色の光が二つ。
長く突き出たところからでる荒々しい鼻息は地面におちてる木をかるく吹き飛ばすぐらいに強いから、すぐに《《それ》》が生き物なんだってわかった。
だから余計にこわくて、体が動かなくなった。
「カイ……、何? アレ……」
『……多分、綱編み犬だ』
「コモンド、ルフィス……? それって魔物?」
『あぁ。 でもこんな大きなのは見たことない』
「そうなの?」
『中型の部類だからせいぜい牛サイズだ。 なのにコイツは三メートルちかくある。 こんなにデカいのは見た事も聞いた事もない』
カイの声が少し震えてる。
でも私もこわくて動けない。
『グワォォンッ!!』
するとコモンドルフィスさんが鼻息荒くしてビリビリとしびれるようなうなり声をあげた。
そして金色の目をギョロギョロ光らせて私たちをにらみつける。
どうしよう、このままじゃ食べられちゃう!




