プロローグ
「ティルダ!!」
それはこのまっ暗な世界にいるはずない私の大好きな、大好きな男の子の声だった。
どこ? どこにいるの?
会いたいよ、会いたいよ!
『私はここだよ!!』
早くそばにいって安心したい。
『大丈夫だ』って言って抱きしめてほしい。
気づいてほしくて私はありったけの声でさけんだ。
するとまっ暗だったお空にパキパキッとヒビが入って、そこからキレイな空が見えた。
「カイ!!」
名前を呼んだら空とおんなじ水色の目をした獣人の男の子が、小さな割れ目からキズだらけの手を差し出した。
ジワリと涙があふれてくる。
そんな私を見た男の子は泣きそうな顔で笑ってきた。
「こんなところに閉じこもって何やってんだよ! 早く出てこい!」
「だってカイがおそいんだもん!」
「ちゃんと帰ってくるって言っただろ! 信じてなかったのか?!」
「信じてた! でもそういうことじゃない!」
ずっとカイといっしょがいいんだよ。
私の願いはその一択だ。
グシャグシャに泣きながら差し出してくれた手をとったら、カベのヒビが大きくなって目の前からバラバラバラ……っと落ちて消えていった。
さえぎるモノがなくなると、カイは私の手をグッと引いて抱きしめてくれた。
すごくあったかかい。
大好きなカイの体温に包まれてようやく体が軽くなってきた。
「そうだな。 お前は一人でいるのイヤだもんな。 ごめん」
しがみついて泣く私の気持ちがわかったみたいで、カイは私の頭をヨシヨシとなでてくれた。
あれ、カイの手ってこんなに大きかったっけ。
身長も、体もちょっと大きくなってる気がする。
久しぶりに会ったからかな。
「もうどこにもいかない……?」
「いかない。 お前とずっといっしょにいる」
「ホントに?」
「ホントに。 ちゃんと見つけてきた」
「『私たちがいっしょにしあわせになれる道』って言ってたよね。 ホントにあったの?」
「あぁ。 お前にとびっきりのプレゼント持って帰ったからもう大丈夫だ」
私にとってはカイが一番のプレゼントなのに。
でもカイがうれしそうに笑うからきっとそうなんだ。
私は『たのしみにしてる!』といってもう一度カイをギュッと抱きしめた。
――これは小さな二人が大きな幸せをつかむまでの軌跡を描いた物語。




