第1章 | パート6: スターライト
ありがとう
その日の午後、首都の空は明るい光で満たされていた。薄い雲がそびえ立つ古い教会の塔の上に巻きつき、市場の商人や客の影が、ほとんど完璧な喧騒を作り出していた。しかし、その喧騒の真ん中で、黄金の星が描かれた長いローブをまとった男が、まるでこの世界が彼にとって小さな舞台にすぎないかのように、ゆったりと歩いていた。
アステル。
彼は、使い古された革の表紙のついた、カードの束が入った本を広げるのに忙しかった。その目は、お気に入りの玩具を数えている子供のように、情熱に満ちて輝いていた。
> 「全く…この力を手に入れるのは本当に大変だったな」彼は静かに呟いた。
> 「あの坊主の言った通りだ…本当に何かが首都で起こっているようだ。それなら、大災害が本当に起こる前に、コレクションを完成させなければ」
>
彼はゆっくりと本を閉じ、笑みを浮かべた。しかし、突然足が止まった。少し不機嫌な顔になる。
> 「歩くのはかなり疲れるな。はぁ…このカードを使うか」
>
優雅な動きで、アステルは光の輪が描かれた薄いカードを一枚取り出した。人差し指と中指でそれを挟み、静かに囁いた。
> 「テレポート」
>
一瞬にして、彼の体は消えた。周りの空間はねじれ、空気が震え、世界はぼやけた影に変わった。彼が再び地面に足を踏み入れたとき、彼を迎え入れたのは、もう市場の喧騒ではなかった。
代わりに…肉と血の雨だった。
人間の体の一部が空から降ってきた。手や、折れた骨、はらわたが、石畳の隙間に染み込む赤い水たまりと混ざり合っていた。その生臭い匂いは、ほとんどの人にとっては吐き気を催すものだった—だが、アステルにとっては違った。
彼は見上げた。降り注ぐ肉片を、まるで流星群のように見つめる。
> 「なんて美しい芸術だ…」彼は、感嘆の息を漏らしながら静かに囁いた。
> 「残念だな…見逃してしまった」
>
アステルは、バラバラになった体の間をゆっくりと歩いた。一歩進むごとに、飛び散る血が彼の白い黄金のローブを汚したが、彼は気にしなかった。彼の目は周りを探った。司祭も、生存者も一人もいなかった。まるで、この大量死が一瞬で起こり、彼だけがその証人として残されたかのようだった。
> 「これが起こることは分かっていた…まぁ、仕方ない。運命だ」
> 彼は小さくため息をつき、肩をすくめた。
> 「そういえば、あの坊主は言っていたな…真夜中ごろに何かが来る、と。ふむ、楽しみだ」
>
夜
時計は真夜中に近づいていた。元々紺色だった首都の空は、ゆっくりと厚い雲に覆われた。月は隠れ、石畳の道を揺らめく提灯の光だけが残っていた。街の中心部からはまだ賑やかな音が聞こえていた—酔っ払いの笑い声、コインの音、安酒場から流れる笛の音。しかし、その中に、一つの影が現れた。
その足取りはゆっくりと、しっかりと、そして奇妙なカリスマに満ちていた。彼は長い黒いローブをまとい、その顔は部分的に影に隠れていたが、その目はまるで闇に包まれた燃え盛る火のように、赤く輝いていた。彼の足音は、まるで死の鐘の音のように響いた。
[The Bishop of Wrath]
彼は歩きながら、詩的な言葉を口ずさんだ。美しく聞こえる言葉だが、よく聞くと、憎悪の毒が込められていた。
> 「聞け、星の下で眠る人間たちよ。
> 我は憤怒の炎を携えて来た。お前たち自身の祈りから生まれた火を。
> 決して答えられることのなかった祈り、決して聞かれることのなかった叫び。
> お前たちは天に懇願し、天は沈黙した。
> 故に我は来た—答えとして。
> 失望の答えとして、
> 苦悩の答えとして。
> 我が焼き尽くす愛、我がむしばむ愛を受け入れよ。
> 我は憤怒という名の慈悲である!」
>
それを聞いた人々は、静まり返った。まるで魅了されたかのように。その言葉が彼らの魂の隙間に入り込み、ゆっくりと燃え広がる小さな火を灯したかのようだった。
その時、アステルが現れた。彼は折れた街灯の上に立ち、提灯の光に照らされ、その顔には静かな笑みが浮かんでいた。
> 「なんて素晴らしい演説だ」アステルは手を叩きながら静かに言った。
> 「だが、あまりにもドラマチックすぎる。まるでこの世界がお前を救世主として待っていたかのように話すとは。実に面白い」
>
憤怒は振り返った。その赤い目が燃えるが、その唇はかすかに微笑んでいた。
> 「そしてお前、輝く星よ。我が演説をドラマと呼ぶが、お前の輝きもまた芝居ではないか?お前は光を放つが、暖めはしない。お前は照らすが、救いにはならない。我々と何が違うというのだ?」
>
群衆はささやき始めた。一部は畏敬の念を持ってアステルを見ていたが、一部は疑いの目を向けていた。憤怒の言葉は、ゆっくりと彼らの信仰を揺るがし始めた。空気は熱を帯びた。
アステルはため息をついたが、笑みはそのままだった。
> 「お前は本当に話術がうまいな。だが残念だ…言葉が多すぎて、証拠が少なすぎる」
>
憤怒は静かに笑った。その声の波は、聞いている人々の胸を震わせた。
> 「証拠だと?彼らの顔を見ろ。彼らの目を見ろ。彼らは渇き、飢え、絶望している。彼らは冷たいお前の星よりも、我が憤怒の炎を信じるだろう」
>
そして、その通りだった。人々はゆっくりと振り返り、疑いの目でアステルを見つめ始めた。まるで憤怒が、言葉だけで彼らの心を奪ってしまったかのようだった。
アステルは初めて、議論で劣勢に立たされた。彼は黙り込み、目を細めた。群衆のほとんどが憤怒を支持して叫び始めた。
> 「憤怒の司教!」
> 「彼が正しい!」
> 「憤怒の炎が我々を解放する!」
>
騒乱が爆発した。人々は押し合い、叫び、アステルに向かって石を投げ始めた。
そして—
ポン。
一人の信者の頭が外れ、体は首なしで崩れ落ちた。血が噴き出し、群衆の顔を濡らした。誰もが凍りついた。
憤怒はただ冷たくそれを見つめ、それからアステルの方を向いた。しかし、アステルは恐怖を感じるどころか、満面の笑みを浮かべた。その目は情熱に満ちて大きく見開かれていた。
> 「ハハハ…これだ!私がずっと探していたものは!」アステルは興奮して叫んだ。
> 「ショーの始まりだ!」
>
最初の爆発は、憤怒が手を振った時に起こった。赤い炎が燃え盛り、熱波となって道を薙ぎ払った。周りの建物は燃え、人間の叫び声が空に響き渡った。アステルは飛び降り、ローブをなびかせた。素早い動きで、彼は輝くカードを取り出した。
> 「星の光よ、輝け!」
>
黄金の光の壁が現れ、憤怒の燃え盛る炎を食い止めた。両者の衝突は耳をつんざくほどだった。石畳はひび割れ、空気が震えた。
そして、戦いは始まった。
憤怒は、止めどない怒りで攻撃した。炎の波、燃え盛る柱、破壊を吐き出す赤い溶岩の噴出。アステルは、光の閃光でそれをかわし、様々な魔法を放つカードを使った—盾、光の剣、流星の幻影。
> 「アステル!お前はただ破壊を遅らせているだけだ!」
> 「憤怒!お前は自分自身の怒りを崇拝しているにすぎない!」
>
衝突は夜空を引き裂いた。人々はパニックに陥って逃げ惑い、一部は魔法の渦に引きずり込まれ、粉々になった。街は開かれた地獄へと変わった。
一瞬の隙をつき、憤怒は油断した。アステルはその隙を利用し、彼にカードを向けた。憤怒の体は震え、そしてカードの中に吸い込まれた。
アステルは薄く微笑み、そのカードを見つめた。
しかし、突然—
カードが震えた。ひびが入り、憤怒が再び現れ、冷たい笑みを浮かべて立っていた。
> 「こんな安っぽいカードで我を操れるとでも思ったか?」彼は嘲笑った。
>
アステルは一瞬黙り、そして薄く笑った。彼は別のカードを取り出し、それを自分の胸に当てた。光が彼の体を包み、彼を無敵にした。憤怒は何度も攻撃を仕掛けたが、アステルの体は破壊されなかった。
憤怒はうなり声を上げた。彼の怒りはさらに爆発した。もともと暗かった空は、赤い炎の海に変わった。稲妻が走り、大地が揺れた。憤怒の怒りは、空をねじ曲げる巨大な炎の竜の姿を形成した。
> 「この力を手に入れるのがどれほど大変だったか、お前は知らない!」憤怒は叫び、その声は大地を揺るがした。
> 「一滴の血、一つの叫び、裏切られた一つの祈り!すべては我のものだ!この苦しみから生まれたものを、決して欲しがるな!」
>
アステルは静かに彼を見つめた。
> 「哀れだな。お前は自分自身の怒りの中に閉じ込められている。それが力だと思っているのか?違う。それは足かせだ」
>
憤怒はよろめいた。彼の目は見開かれ、そしてかすかに光を失い始めた。奇妙な感情が彼の胸を襲った—パニック、恐怖、悲しみ、絶望。すべてが混ざり合い、彼を飲み込んだ。
> 「この…感情は…何だ…?」憤怒は静かに囁いた。
>
アステルは一歩近づいた。彼の皮肉な笑みはそのままだった。
> 「それはな…お前自身の弱さだ」
>
彼は憤怒にカードを向けた。司教の体は吸い込まれていった。今回は、抵抗はなかった。彼の名前はカードに鮮明に刻まれた。[The Bishop of Wrath]
アステルはそのカードをしばらく見つめ、それから本の中に滑り込ませた。
> 「私のコレクション…もうすぐ完成だな」彼はつぶやき、振り返って東の空を見つめた。
>
夜明けが訪れた。太陽がゆっくりと地平線から顔を出し、その光は暖かかったが、恐ろしい光景を照らし出した。首都の通りは、焼けた人間の体、川のように流れる血、肉片、そして建物の瓦礫で埋め尽くされていた。黒い煙がまだ立ち上り、カラスがご馳走を待って飛び回っていた。
アステルは、そのすべての真ん中に立っていた。そのシルエットはまっすぐに立ち、彼の白い黄金のローブは破れ、血で汚れていた。しかし、彼は薄く微笑み、昇り始めた太陽の光を見つめていた。
まるで、すべての破壊が彼にとって美しい背景にすぎないかのように。
> 「ふむ…なんて美しいんだ。この世界は、本当に芸術に満ちている」
>
ゆったりとした足取りで、彼は瓦礫を後にした。彼の足音は、夜明けの歌声と混ざり合い、つい数分前に墓場へと変わった世界に、足跡を残していった。
またね