第1章 | パート5: 暖かさが邸宅を包んだ
ありがとうございました>_<
屋敷の庭の空気は、これまで通ってきた道とは違っていた。静かで、冷たく、それでいてどこか心を落ち着かせるものがあった。遠くから吹き荒れる吹雪が、その異質な雰囲気をかえって強めていた。そして、ゆっくりと落ちる白い氷の粒の真ん中に、一人の女性が立っていた。まるで、ずっと前から私を待っていたかのように。
彼女は、繊細な青い線で飾られた白いドレスを身につけ、氷の結晶の形をしたペンダントを首にかけていた。髪は長く、白銀色で、腰まで届いていた。肌は青白く、まるで雪そのもののように透明に近かった。その瞳…ああ、あの目だ。凍てつく冬の湖のように、澄んだ青色をしていて、冷たくも魅惑的だった。
無意識のうちに、私の足は前に進んだ。一歩…二歩。私の体は、その魅力か、あるいはもっと深い何かによって引き寄せられた。私たちとの距離は、わずか五メートルになった。息が詰まる。ただ近づいて、手を伸ばし、彼女が放つ静けさを抱きしめたいとさえ感じた。
しかし—
ゴツッ!
硬い拳が私の肋骨を打ち据えた。
「ぐっ—!?」胸が締め付けられる。その痛みは女性のそれではなく、まるで熟練した兵士の一撃だった。視界が揺れ、体がぐらついた。
「この変態!」彼女は冷たく、表情を変えずに言った。「こんな汚い人間を屋敷に連れてこないで、カイト」
私は崩れ落ち、息を詰まらせた。肋骨が折れたような気がしたが、おそらく気のせいだろう。これは、ただのパンチではなかった。
「う、うぐ…これが…ここの…歓迎の仕方…?」私は、半分冗談で、半分は苦しみながら咳き込んだ。
カイトは慌てて駆け寄り、顔をしかめた。「シンティア!やりすぎだよ!彼は僕たちのゲストなんだ!」
その女性—シンティアは—冷たい視線を向けた後、顔をそむけた。「本当にゲストなら、脅威ではないことを証明しなければならない。誰でもこの家に入れるわけにはいかない」
私は反論しようとしたが、口を開く前に、冷たくて柔らかいものが私の頭に触れた。
「雪だ、雪だ!サンタさんが来るぞ!」
おそらく五歳くらいの銀髪の少年が、楽しそうにぴょんぴょんと跳ねていた。両手には雪の塊を握り、それを私の頭に振りかけた。一瞬で、私の髪は氷の欠片で白くなった。
「ハハハ!見て!雪だるまになった!」
「う、くしゅんっ!!」私は大きなくしゃみをし、体が震えた。「おい!このいたずら小僧め!」
少年はニヤニヤしていたが、すぐに叱られた。「レオポルド、お客様には丁寧に振る舞いなさい」シンティアは厳しい口調で言った。
「あ…はい、お姉ちゃん!ごめんなさい!」少年は素早く答え、お辞儀をした。
私は頭をこすり、残った雪を払おうとした。そして、まだ硬い表情でまっすぐ立っているシンティアを見つめた。「それが君たちの温かい歓迎だと言うなら…あまりにも冷たすぎるな」
シンティアは小さく鼻を鳴らした。「入れ。服を着替えなさい。びしょ濡れだ。メイが服を用意してくれている」
屋敷のドアを通り抜けると、すぐに温かさが体を包み込んだ。薪の燃える匂いが居間に満ちており、その独特の香りは心を落ち着かせた。内装はクラシックなスタイルだった。太い木の梁、伝統的な彫刻で飾られた壁、そして高価だが古風に見える家具。
「なんだか…ずっとここにいたいな」私は思わず口にした。
「気に入っていただけて嬉しいです」と、一人の若い女性が優しく答えた。彼女は薄茶色の髪をしており、その瞳は誠実さに満ちていた。「私はメイと申します。この家の使用人です。お会いできて嬉しいです」
私は軽くお辞儀をした。「メイさん、本当にありがとうございます」
部屋の隅で、カイトがシンティアと静かに話しているのが見えた。彼らの囁きがかすかに聞こえてくる。
「…彼は占い師なんだよね?外国から来た…」
「もしそうなら、どうしてあんなに無防備に見えるの?」
私は喉に唾が詰まりそうになった。おい、そんなに大きな声でささやかなくても、聞こえてるんだぞ!
しばらくして、シンティアが近づいてきた。「今月は異常な天候だから危険だ。しばらくここに滞在したらどうだ?」
私は少し考えた。温かい屋敷で、雪のドレスを着た美しい女性と一緒に暮らす?断る理由はない。「喜んで」と私は答えた。
別の少女が台所から現れた。彼女の髪はメイより少し暗い。「やっぱり今日は雪が降るはずだったんだね。でも、嵐が先にくるなんて変だね」彼女は微笑んだ。「そうだ、私はジョイ。メイの妹よ」
「ジョイ、君にも会えて嬉しいよ」
「ジョイ、メイ、二階にこの方の部屋を用意してあげて」とシンティアが命じた。
「はい、キャプテン!」二人は声を揃えて言った。
私は二人を見て小さく微笑んだ。この家族の温かさは…本物のように感じられた。たとえ私がここにいる異物だとしても。
私の視線は、壁にかかった大きな肖像画で止まった。鎧を身につけた堂々とした男性の姿。その顔は威厳に満ち、力強かった。肖像画の下には「ギルバート」と書かれていた。
「え?この家の当主ですか?」と尋ねた。
「正確には、僕たちの父です」とカイトが静かに答えた。
「すごい。会えるかな?」
シンティアは首を横に振った。「父は忙しい。めったに帰ってこない」
背が高く、筋肉質な、見張りの服を着た男がドアの近くに立っていた。「誤解するな。私たちは血縁ではない。ギルバート様に拾われた者たちだ」彼の声は重々しかったが、威厳があった。
「そうでしたか…それでも、素晴らしい。これほどの大家族を築くのは簡単なことじゃない」と私は言った。
「それで、あなたの本当の名前は何なんだ?」シンティアが突然尋ねた。
その質問に私は沈黙した。名前?私の頭は空っぽだった。思い出そうとするたびに、濃い霧がそれを覆い隠すのだ。
「…分からない」
シンティアはため息をつき、それから薄く微笑んだ。「じゃあ、今からあなたのことを…ジロウと呼ぶ」
「ジロウ…?どうして?」
「弟に似ているから。レオポルドの兄だ」
それを聞いていたレオポルドは、すぐに背筋を伸ばした。小さな兵士のように、彼は大声で言った。「占い師のおじさん、僕の未来を占ってくれる?」
私は小さく微笑んだ。「もちろんだ」
「どんな女性が僕のお嫁さんになりますか?」彼は真剣な顔で尋ね、目は希望に満ちて輝いていた。
部屋全体が静かになった。誰もが笑いをこらえたり、気まずさを感じたりしていた。私は大げさに賢い顔をしてレオポルドを見つめた。
「きっと…美しくて、誠実で、従順で、心から家族を愛する女性だろう」
「わああああ!!」レオポルドは宝物を見つけた子供のように輝いた。「今日からジロウおじさんを僕のアイドルにします!」
私は頭をかき、少し恥ずかしくなった。まさか、新しいファンができたのか?
すぐにメイとジョイが戻ってきた。「ジロウ様、お部屋の準備ができました」
私はうなずいた。「本当にありがとう」
その夜、私は二階の部屋で休んだ。しかし、心は落ち着かなかった。頭の中では、次の疑問が絶えず渦巻いていた。私は本当に不死なのか?「Return by Death」の分岐点をどうやって操るのか?そして…**「[Bishop of Wrath]」**とは、一体何者なのだろうか?
私は落ち着かず、眠れなかった。結局、三階に上がった。シンティアの言葉が頭の中で響いていた。「答えを探すなら、図書館に行くといい」
図書館は広大で、まるでホールのようだった。高い本棚が天井までずらりと並んでいた。古い紙の匂いが空気に満ちていた。
私が熱心に探していると、背後から冷たい声が聞こえた。「何をお探しですか、様?」
私は振り返った。十二歳くらいの少女が立っていた。しかし、そのオーラは…もっと古く、成熟していた。短い髪、鋭い視線。
「…君は誰だ?」
「私の名前はピュタ。図書館の番人です」
私は言葉に詰まった。「僕は…『Return』についての本を…」
舌が凍りついた。その言葉が再び口から出ない。まるで目に見えない手が私の口を塞いだかのように。
ピュタは眉を上げた。「何の本ですか?」
「…司教。悪をもたらす司教についての…」
「ああ…」ピュタが手を動かすと、棚の本が浮き上がり、目に見えない力で動かされるように位置を変えた。「それなら、六十九番目の棚です。一番上の段。最初の本です」
私はため息をついた。棚の一番目から六十九番目まで?それは探すのではなく、運動だ。
ついに私は六十九番目の棚にたどり着き、高い木の梯子を登った。そこには、黒い表紙の分厚い古い本が待っていた。タイトルは『人類の七つの大罪』。
最初のページを開いた。
「昔々、ルシファーという名の偉大な悪魔が地上に降りた。彼は人間の心に罪を植え付け、七つの不滅の染みを生み出した。色欲、貪食、強欲、怠惰、憤怒、嫉妬、傲慢」
私は唾を飲み込んだ。これが七つの大罪の起源…
次のページには詳細が書かれていた。それぞれの罪は選ばれた人間に受け継がれ、その力を体現する『司教』となった。
私は「憤怒」の項目で立ち止まった。
「『憤怒の司教』と呼ばれし者。怒りをもたらす者であり、その怒りは国を焼き尽くす。彼が歩むところ、常に破滅が後に続く」
私の血が騒いだ。これは、私の四度目の死と関係があるのだろうか?
さらに深く考えようとする前に、カイトの声が下から私を呼んだ。「ジロウ!急いで!嵐が来た!」
私は本を閉じて、急いで階段を駆け下りた。
屋敷の前庭では、すでに嵐が荒れ狂っていた。風が木々を揺らし、雪が厚く積もり、屋敷は揺れていた。住人たちは障壁魔法をかけたが、無駄なようだった。
「私たちの力じゃ弱すぎる!」メイが叫び、空気が凍るような中でも冷や汗を流していた。
私はポケットを握りしめた。アステルから受け取ったカードを思い出した。震える手でそれを掴んだ。これなら…いけるか?
それを強く握りしめると、体が熱くなった。黒紫のオーラが腕から広がる。肌が変わり、血管が浮き出し、私の手には—巨大な針が現れた。
「これは…あの女の力…」
私は針を地面に突き刺し、見えない糸を引き、屋敷の基礎と地面を「縫い合わせ」始めた。その力が亀裂を食い止め、地層を縛り付け、屋敷を嵐の中でもしっかりと立たせた。
「うわあああ!!ジロウ兄さん、すごい!」レオポルドが感嘆して歓声を上げた。
シンティアは驚きの目で私を見つめた。「そのカード…彼に会ったのか?」
私は、まだ地面を縫い合わせることに集中しながら、短くうなずいた。
シンティアは黙り込み、それからうつむいた。「もし…また彼に会うことがあったら…お願い…私に会いに来てくれるように伝えて」
私は急いで振り向いたが、嵐がうるさすぎてそれ以上尋ねることができなかった。
嵐はついに収まり、屋敷は無傷で残っていた。私は息を切らし、力は消え、体は元に戻った。カードはポケットの中で重く感じられた。
「ありがとう、ジロウ」とカイトが言った。
私は夜空を見上げた。Return by Death、憤怒の司教、アステル、そして今…シンティアの秘密。この道はますます複雑になっていく。
しかし、心の奥底に、少しだけ温かさがあった。初めて、ただのよそ者ではないような気がした。
次回のエピソードでお会いしましょう