第2章 | パート8: 語り部
木造の家の裏庭にある大きな木々の間を、夜の風が静かに吹き抜けていました。枯れ葉が冷たい風に舞い、まるでデンドロ大陸の古い傷を開くようなこれからの会話に耳を立てているかのようでした。
ミアウは木の長椅子に座り、湯気の立つハーブティーのカップを両手で包み込んでいました。シンシアは壁に寄りかかり、腕を組んで目の前の二人の翼を持つ者――スワとマレオをじっと見つめていました。部屋の中央にあるランタンの火が、空気の緊張を感じ取ったかのように細かく揺れていました。
スワはしばらく天井を見上げた後、ミアウに顔を向けました。その鋭い視線の奥には、深い悲しみが隠されていました。
「それで、なぜデンドロに戻ってきたの?」ミアウが静かではあるが、突き刺すような声で尋ねました。
スワは深く息を吸い込みました。その声は、眠れぬ長い旅を終えたばかりのようにかすれていました。
「実は、『あの子』の様子を確かめに来たの」彼女は静かに言いましたが、その言葉だけで部屋の空気が張り詰めました。「門に着いた時、真っ先に目に飛び込んできたのが『あの子』だった。でも、いくつかの封印が解かれ、門の鍵が緩んでいるのが見えた。私たちの知らないうちに、あの子は外に出入りしている可能性があるわ。」
その言葉に、私は鳥肌が立ちました。入り口のそばに座っていた私――ジローは、反射的に姿勢を正しました。
「『あの子』?」私は好奇心と微かな恐怖を隠しきれず、震える声で尋ねました。
スワは一度目を閉じ、微かに微笑みました。
「あなたが尋ねるのも無理はないわ。これはデンドロ大陸に伝わる古い伝承なのだから」と彼女はささやきました。
彼女は立ち上がり、月明かりだけに照らされた窓辺へとゆっくり歩み寄りました。マレオは床を見つめ、その両翼を小さく震わせていました。
「昔々、獣人という種族が生まれる前、一人の美しい少女が生まれました。彼女の頭には小さな角があったわ」スワは窓の外を見つめながら語り始めました。月影が彼女の顔に落ち、その瞳が怪しく光って見えました。「彼女は悪魔ルシファーの唆しによって生まれ、動物たちと交わるよう命じられた。その結果、獣人という種族が誕生したの。けれど、その過程で……悪魔の力が働き、5歳の少女の姿をした悪魔が生まれた。その副産物として……人間は動物との交わりを渇望するようになり、そこから私たちの種族が生まれたのよ。」
部屋は一瞬にして静まり返りました。板壁の隙間から風が入り込み、ランタンの炎を激しく揺らしました。
私は絶句しました。脳がその論理を拒絶しました――人間と動物? ありえない。
そして、緊張から逃れるように、思わず乾いた笑い声を漏らしてしまいました。
「ハハハハハ!」
「……信じているの?」スワは目を細めて私を見返し、唇に笑みを浮かべました。
「ああ……」私は反射的に答えました。
スワは途端に声を上げて笑い出し、お腹を押さえて体を折り曲げました。
「でも結論を言えば、その伝説が真実かどうかは別として、その悪魔が今も彷徨っているのは事実よ」と、マレオがより冷静で深刻なトーンで言葉を遮りました。
今まで黙っていたシンシアが、眉をひそめました。
「なぜ『あの子』と呼ばれているの?」
スワは彼女を長く見つめました。その視線は、シンシアの魂を見透かすかのように鋭いものでした。
「言い伝えによれば、その子の本当の名前を呼ぶと、あの子があなたの元へやって来るからよ。」
彼女の声は、自分自身がその名を呼ぶのを恐れているかのように震えていました。
「一種のスピリチュアルな存在ってこと?」ミアウが場を落ち着かせようと口を挟みました。
「そうね」スワは短く答え、目の前の茶を飲み干しました。温かい湯気が夜の冷たい空気の中に消えていきました。
彼女はさらに低い声で続けました。「あの子は、グリードウルフおじさまと私の父によって封印されたの。……あの子が、あのことを起こす前に……」
スワは言葉を切り、唇を震わせましたが、その続きが語られることはありませんでした。マレオはうなだれ、床を見つめていました。
私はゆっくりと立ち上がり、一歩歩み寄りました。「その子の力って何なんだ? なんでそんなに恐れられている?」
スワは私を見つめ、再び目を閉じました。「あの子はこの世界の動物たちとテレパシーで繋がることができる。でも、本当に恐ろしいのは、あの子には3人の守護者がいることよ。『狂暴な者』、『反逆する者』、そして『角を持つ者』。」
その言葉が出た瞬間、部屋の温度が数度下がったように感じられました。ランタンがガタガタと揺れ、窓の外で何かがひっかくような音が聞こえました。
私は思わずその音の方を振り返りました。
「……聞こえたか?」私は声を潜めてささやきました。
シンシアは剣の柄を強く握りしめました。「ええ……あの音……。」
スワは冷静に外を見つめました。「落ち着いて、ただの野生動物よ」と彼女は再び椅子に座りながら言いました。しかし、その表情を見れば分かりました――彼女は嘘をついている。
「あの子の力はデンドロ大陸の隅々にまで及んでいる。見つけるには迷宮の門を通り抜けなければならないわ」と、ミアウが重苦しい口調で続けました。
マレオはうなだれ、自分の翼の端をぎゅっと握りしめました。「最近、私たちが調査した時……あそこで紫色の影が彷徨っているのを見たわ。だからグリードウルフおじさまに知らせに来たの。あの惨劇を二度と繰り返さないために。」
私は首を傾げました。「惨劇って?」思わず声が大きくなってしまいました。
ミアウが鋭い視線を私に向けました。その目は「黙れ、さもなくば死ぬか」と告げているようでした。
しかし、私はすでに口に出してしまいました。
マレオは深くため息をつき、消え入りそうな声で言いました。「あの事件は……すべての崩壊の始まりだった。」
彼女は自分の手首を掴み、床を見つめながら、震える声で続けました。
「昔、私が生まれる前、あの子が封印を破って目覚めた。一晩のうちに、西の谷全体が壊滅したわ。森は枯れ果て、動物たちは共食いを始め、川の水は血の色に染まった。」
「そして、ハイドロとエレクトロの首都が崩壊した裏側にも、あの子がいたという噂よ」とミアウが答えました。
再び風が吹き込み、ランタンの火が消えそうになりました。私は鉄の匂い――血の匂いを感じたような気がしました。
「あの時、グリードウルフおじさまと私たちの父は、自らの命を引き換えに、あの子を再び封印したの。でも、その封印は……不完全だった」とスワが力なく付け加えました。
シンシアは生唾を飲み込み、静かに尋ねました。「なぜ封印は不完全だったの?」
スワは彼女の目をまっすぐに見つめました。「なぜなら、あの子は……この世界の生き物ではないからよ。」
その視線はガラスの破片のように鋭いものでした。
「あの子はルシファーの被造物でもなければ、悪魔でもない。あらゆる悪魔よりも、もっと古い『何か』なのよ。」
一瞬にして、部屋がひどく狭く感じられました。空気が胸を圧迫します。ミアウの呼吸さえ重く聞こえました。
マレオの腕の産毛が逆立ち、翼が自己防衛の反射のように少し開くのが見えました。
スワは立ち上がり、ドアの方へ歩き出しました。
「私たちはただの物語をしに来たんじゃない。警告を伝えに来たの」と、彼女はドアノブを握りながら静かに言いました。
「もしあの封印が本当に崩れれば……デンドロは再び陥落するわ。」
ミアウが素早く立ち上がり、床の板がギィと音を立てました。「確かなの? その兆候があるのね?」
「あの紫色のシルエットは普通の兆候じゃないわ」とマレオが答えました。
「それに、門が脈打っているのを見た。外からじゃなく、中からよ。」
シンシアはすぐに長いマントを手に取り、目を細めました。「なら、そこへ向かうべきね。」
「今はダメよ」スワがシンシアの手を制しました。
「門はまだ完全には開いていない。今そこへ行けば、あの子に気づかれるわ。あの子は人の『意図』を読むことができるの。」
私は顔を上げ、彼らを交互に見つめました。「じゃあ、どうすればいいんだ?」
スワは私を振り返りました。その表情は今は柔らかでしたが、声には深みがありました。
「最初の満月が輝いてから13日目の夜を待つの。その時、封印は最も脆くなる。そこで封印を強化するか……あるいは、破壊するかよ。」
「もし失敗したら?」と私は再び尋ねました。
「その時、デンドロはもはや故郷ではなく、屠殺場と化すわ」と、マレオが力なく答え、その翼をだらりと垂らしました。
沈黙。
夜の風が壁の隙間を通り抜け、外からのささやき声のような、か細いシュルシュルという音を立てました。
シンシアはゆっくりと座り直し、顎に手を当てました。「結局……すべては『あの子』のせいなのね。」
スワはただ虚ろな目で窓の外を見つめ、静かに言いました。
「あの子だけのせいじゃないわ。最初の人間が遺した罪のせいでもあるのよ。」
私はスワの顔を見つめました。強く見える少女の顔には、時間さえも消し去ることのできない、古の恐怖が刻まれていました。
その夜、私は初めて、デンドロがただの神秘と野生に満ちた大陸ではないと感じました。
そこは、決して存在してはならなかった「何か」の、生ける墓場だったのです。




