表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んで生き直す無限ループ  作者: Putra Maulana
第1章 人類の7つの大罪
1/12

第1章 | パート1: サプライズ満載の夜

ありがとう

その夜、ジャカルタの空は厚い雲に覆われていた。星も月もなく、ちらつく街灯の光だけが今にも消えそうに瞬いている。

空気を震わせるような騒音が響き渡り、遠くでは学生たちの群衆が声を張り上げていた。


「生活必需品の値下げを!」

「腐敗した政府はもううんざりだ!」

「国会議員の給料引き上げなんて認めない!」


その声は太鼓の音と演説の叫びに混ざり、古びたビルの谷間に反響していく。

俺はただ道端に立ち、遠くからそれを見つめていた。彼らが訴えることが分からないわけじゃない。ただ…すべてに疲れてしまっただけだ。


心の奥で小さくつぶやく。

――いつになったら、この国から抜け出せるんだろう。


深くため息をつき、群衆から離れるように歩き出す。

今夜、俺が向かうのは大学でもカフェでもない。俺にとって唯一安心できる場所――行きつけの漫画屋だ。


ガラスの扉を押し開けると、紙とインクの独特な匂いがふわりと鼻をくすぐる。

棚には色とりどりの表紙が並び、まるで手招きするかのように輝いていた。ここだけが現実を忘れられる場所。


足を止め、新刊コーナーに目をやる。

「やっと出たか…」と小さく呟き、思わず口元が緩む。


その瞬間、明るい声が耳に届いた。


「おっ、兄さんもこのシリーズ好きなんですか?」


振り向くと、二人の青年が隣に立っていた。

彼らの姿は奇妙だった。まるでサーカス団員のような衣装――えんじ色のベストに高いシルクハット。こんな場末の店には不釣り合いなほど目立っていた。


「へぇ、偶然だな。世の中って狭いもんだね」

「だよなぁ。こんなマニアックなの読んでる人、滅多にいないし」


俺は気まずく笑って答える。

「まぁ…最初から追ってるからな」


二人は楽しそうに頷き、作品について熱く語り始めた。

俺も話を合わせようとするが、妙な違和感が胸をよぎる。


視界がぼやけ、声が遠のいていく。

耳鳴りがし、舌は痺れ、目がかゆくてたまらない。反射的にこすったそのとき――


「兄さん、大丈夫ですか?」

一人が目の前で手を振る。


だが俺の体は力を失い、ふらつくばかり。


――ドガァンッ!!


店の天井が大きく揺れ、轟音とともに埃が舞い上がった。外からは悲鳴が響き、どうやらデモ隊の混乱がここまで及んだらしい。


だが、不思議なことに俺の体には痛みがなかった。

重さも苦しさもなく、むしろ軽い。視界は黒く塗りつぶされ――


気がつくと、俺は別の場所に横たわっていた。


石畳の道。冷たい夜風。

車も叫び声もなく、聞こえるのは虫の音と木々を揺らす風の音だけ。


「ここ…ジャカルタじゃない…」


目の前に広がるのは古いヨーロッパの城のような建物。街灯の代わりに灯るのはランタン。

通りを行き交う人々は見慣れないローブや衣服をまとっている。


呆然と座り込む俺。

どれほどの時間が経ったか分からない。心臓の鼓動は収まらず、ただ空虚なまま時が流れていった。


三十分、いやもっとかもしれない。


そのとき――声がした。


「あなた…この街の人じゃないですね?」


顔を上げると、目の前に中学生ほどの少年が立っていた。

整った顔立ちに漆黒の髪、そして宝石のように輝く青い瞳。

その視線は優しい微笑みを浮かべながらも、不思議な威圧感を放っていた。


長いコートに白いマフラー。暗闇の中でも彼の姿は際立っている。


「えっ…俺は…?」


言葉が詰まる俺に、少年は薄く笑みを浮かべた。


「僕の名前は――南カイト」

「どうやら、あなたは間違った場所に迷い込んだようですね」


唾を飲み込む俺。

これは悪夢なのか、それとも――想像もしなかった冒険の始まりなのか。

私のストーリーは面白かったですか?もし面白ければ、定期的に更新してフィードバックをお送りしますので、もっと頻繁に更新できるようになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ