「プロローグ」
――“神”は、全知全能である。
そう、定義されている。
もちろん、人によっては大なり小なり、ましてや主義信条の違いによって、その認識は様々だろう。
何しろ「架空」の存在だ。
世界を創造しただとか、あらゆるものを司っているのだとか。万物に宿っているだとか、天上から見守っているだとか。
時には人のように、喜怒哀楽を伴って描かれる神々もあれば、自然現象の化身として無機質に描写される神もある。
その姿形も千差万別。
女性や男性、無性別。そもそも偶像化されず、まばゆい光と表現される場合もある。
人類の長い歴史のなか、生み出されたそういった多くの存在は、語りだすと尽きないほどに多種多様だが。
しかし、ほぼ全てに共通しているだろう特徴が1つだけある。
――それは、人類の能力を超越している、という点だ。
そういう意味で、神は全知全能なる存在、と定義できる。
……まあ、そんなツマラナイ話はさておき。
突然だが、こんな話を知っているだろうか。
粒子と波の性質を併せ持つ「量子」を用いた乱数発生器という機械は、その名の通り全く無秩序に乱数を、すなわち「0」と「1」を、等確率ではじき出す。その比は常に1対1。
しかし、とある条件下では――例えば、興奮した人間が大量にいる場所などでは、その確率に不自然な偏りがでる。
という話だ。
……これは、よくよく考えると、スゴイことではないだろうか?
つまり。1人ひとりの人間は取るに足らない存在であったとしても、それが集団となれば――。
あるいは一心に何かを望んでいれば――。
その意思は、何らかの影響を世界に及ぼせるのではないか……?
現に、未だ謎多き「量子」は、世界を構成する重要なファクターでありながら、人々の熱狂を感じ取り、不調をきたす。
そんなことがあり得るならば。
“神”と言う「架空」の存在も――。
数多くの人間が全知全能と考える“神”も、あるいはこの世界のどこかに……?
そんな妄想も、現実味を帯びてはこないだろうか。
何しろ、今や地球上のホモ・サピエンスはおよそ80億人。蟻や菌類、その他の生物には後れをとれど、高等生物としては呆れるほどに地上を満たしているのは間違いない。
で、あれば。
その80億人が共通して認識する存在が、この世界の外側に生み出されていたとしても、それほどおかしい話と言えないのではないだろうか。
とはいえ。
この推論を確かめる術はどこにもない。
第一、ヒトに “全知全能である” と定義された “神” が、実際に生み出されていたと仮定しても、それをどうやって捉えようというのか。
現に人類の誇る “科学” が、その存在をしかと証明したことは、これまで一度もない。
ただ、かつて物質の最小単位と謳われた「原子」が、現代物理学の発展により更に「量子」にまで分解されるとわかった、なんて事例は枚挙に暇がないものの――。
さすがに「神」などという、非科学的な存在の発見、ないし、その有無を確かめようとするのは、馬鹿らしいにも程があるだろう。
更には、ソレが一体、どんな影響を世界に与えるというのだろうか。
……いや。
ほとんどの生命には全くと言っていいほど関りはないだろう。
だが――。
もし仮に。
この世界のどこかで本当に“神”が生み出されていたのだとしたら。
その生み出された“神”の方は、果たして何を成そうとするのだろうか?
「プロローグ」
【毎度の注意書き】
キャプション欄にも記載しておりますが、拙作はほぼ同じタイトルで既に137話 (約65万文字)まで投稿しております(https://ncode.syosetu.com/n7965gm/ 2025.1.26)。そしていまだに連載中!
ただ、投稿後に細々修正を加えておりまして……。個人的にその状況を整理したく、こちらの投稿をしている次第です。
万が一にも本編が気になる方がいましたら、どうぞあちらへ。
こちらはガン無視でお願いしますorz!