イノセント田中 第13話
『第13話 狂人救世主』
イノセント田中が平日の昼下がりに駅前の道を歩いていると、道端で中年女性が拡声器を使って通行人たちに演説を行っていた。イノセント田中は歩きながら彼女の声に耳を傾けた。彼女が行き交う人々に向けてこう言った。
「いつの時代も、戦争を始めるのは、政治家たちなのです! そして、何の罪もない、私たち一般市民が、戦争の犠牲になるのです!」
イノセント田中は背負っている日本刀を鞘から引き抜いて彼女に向かって突進し、彼女に向かって叫んで言った。
「全てを政治家のせいにするんじゃねえーっ! 政治家たちが自腹で兵器を買ってるわけじゃねえだろーっ! 一般市民が戦争をする資金と権限を狂った政治家たちに与えてやってるのが原因だろーっ! 政治家は脳が2つも3つもある特別な人間ではないだろーっ! 俺たちと同じ欠陥だらけの人間だろーっ! そんな人間に人類規模の不幸となる戦争を行う権限を与えてやってるのが問題なんだろーっ! 政治家が戦争を始めたら従わなくてはならいと思い込んでいる一般市民が問題なんだろーっ! 日本ではテレビで戦争の報道をしている途中にビールで乾杯をしているCMを流したりしてんだろーっ! 戦争が無くならないのは一般市民の低い意識が原因だろーっ!」
イノセント田中はそう叫び、日本刀で女の胸を斬り付けた。女が「ぎいやあああーーーっ!」と悲鳴を上げて、勢いよく後ろへ倒れて背中を地面に強打した。女が虚ろな目から涙を流して野次馬たちに目を向けた。女が震える手でゆっくりと拡声器を口に当て、野次馬たちに向けてこう言った。
「いつの、時代も、人々を、救う人間が、救われず、正論を、言う者が、排除される…」
女はそう言って両目を閉じて死亡した。イノセント田中は女が死亡したのを見届けて、急いでその場から逃走した。その一部始終を見ていた野次馬の1人の男性が、スマホで急いでこの殺人事件を警察に通報した。しかし、警察はイノセント田中の行方を追おうとはしなかった。なぜなら、そう、彼はイノセント田中だから。(♪テーテーテーテテー、テーテーテテテテー、たった1人の人間やー狂った政治家たちにー戦争をする権限をー与える愚かな国家などー未来に存在しないぜーこの地球という星はー俺たちみんなの星だぜー大統領や政治家のー星ではないぜー俺たちの星で俺たちがー望まぬことや俺たちがー苦しむ結果になることをー強行させる政府などー許さぬ時代がそこまでー来ているぜー俺たちがその時代をー作れる時代になったぜー地球人のみんながーその意識を持つことでー地球を戦争の無い星にー変えれるぜー戦争ビジネスする奴はー未来に居場所は無いぜー何十億もの人々がーその意識を持つことでーこの世は必ず変わるぜーその意識を持つようにー世界中の人々にー呼び掛けているヒーロー、イ、ノ、セ、ン、トーーー田中!)