15 旅の終わり
語り終えたユナは静かに焚火を見つめている。わたしが知らないユナの旅の話は、想像よりもずっとつらいものだった。わたしの旅が楽しいものだと思えたのは、ユナがいてくれたからなのだろう。
「……ねえ、レミはここに来る前、何をしていたの?」
ユナがぽつりとつぶやいた。不意に心の中で蓋をしていた部分を覗かれた気がして、体温がかあっと上がっていく。言葉がすぐには出てこない。
「三周目を始めるとき、わたしは一緒に旅をしてくれる人が欲しいって願ったの。だから、あなたがここにいるのはわたしのせい。前にトラックにひかれたって言ってたでしょ。もしかしたら、それも……」
「違う、あれはぼうっとしていたわたしが悪いの」
思ったより大きな声が出て、自分で驚いてしまう。ここに来るまでは、わたしは自信を失っていて、自分なんかいなくなってもいいと思っていた。でも今はちょっと違う。ユナに少しでも頼ってもらえていたのなら、わたしにだって出来ることがあるのかもしれない。
「わたしね、ひとりじゃ何も出来なくて、失敗ばっかりしていて、そんな自分が嫌になってたの。でもね、少しぐらいならユナちゃんの役に立てているのかなって思うようになって」
「もちろんだよ。すごく、心強かった。ずっとレミに元気をもらっていたから、ここまでたどり着けたんだもの」
ユナがとびきり優しい笑顔を向けてくる。わたしは、ユナをここまで連れてくることが出来たのだ。体の中から温かいものがあふれてきて、涙となって頬を伝う。
「……レミ、見て」
ふと、ユナが焚火の向こうを指さした。地平線の向こうから太陽が昇り始め、一筋の道が現れる。あの向こうに出口があるのだと、直感的にわかった。
地平線へと続く道を、ユナと並んで歩いていく。この世界で二人で歩くのは、これが最後になるだろう。だけど、わたしはまだ諦めていない。
「ねえ、ユナちゃん。元の世界に戻れたら、また会えるよね?」
わたしが聞いても、ユナは黙ったままうつむいている。
「このままお別れなんて嫌だよ。わたしたち、友達でしょ?」
「……うん」
わたしは彼女の手を引いて歩きだした。その手はちょっと冷たくて、握り返してくる力も弱々しい。ユナは今、不安でいっぱいなのだろう。元の場所に帰れたとしても、彼女の病気が治っている保証はないのだから。
すっかり軽くなったリュックを背負いなおし、背筋を伸ばして前を目指す。この道の先には未来が広がっている。いいことばかりではないかもしれないけれど、前を向いていようと心に決めた。




