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ふたりたび  作者: 神楽一斗


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10 夜の訪れ

 わたしたちはジャングルを一通り歩いて、フルーツや木の実を採取して回った。リュックにしまえば、持ち運びは簡単だと思ったのだが、外から入れたものは、重さもそのままらしい。たまに背負ったとき、あまりに重たいのでおかしいとは思っていたけれど。


「肉っ気がないね。鳥とか飛んでないかな」

「えっ、鳥を食べちゃうの?」

 わたしが聞くと、ユナは冗談ぽくブーメランを構えて見せた。魚ならともかく、鳥を捌いて食べるのは流石に抵抗がある。

「チキン食べたくない?」

「チキンは飛ばないよっ」

 ユナはクスクス笑うと、先を進んでいく。考えてみれば、こういう場所で生き延びるには、食べれるものは何でも食べないといけないのだ。ユナが一人でサバイバル生活をしていたときには、狩りもやっていたに違いない。わたしは先ほどの蛇の姿を思い出して、思わず身震いする。改めて、ユナが一緒にいてくれることが心強く感じた。


 ユナはリュックから鍋を取り出し、かまどに焚べた。まさか、あんなものが入っていたなんて。重くなるのは当たり前だ。

 採ってきた山菜は水洗いして葉と茎に分ける。切った茎は沸騰したお湯に浸けて数分茹でる。葉の方は軽く茹でてから水に浸けてアク抜きをする。下準備が出来たら、温めた鍋の底で茎を炒める。


「これは肉の代わりね」


 ユナは途中で細長く切った茶色いものを鍋に投入した。少し照りがありつつ、切り口は白い。わたしの実家ではさつま揚げと呼んでいたあれだ。大好物なこともあって、思わず口の中に唾が溜まる。


「そんなものまで持ってたんだね」

「とっておきの秘蔵っ子だよ。大事に食べてよね」

「はいっ。ありがたき幸せ」


 味噌と砂糖を水で溶いたものを入れたら、蓋をしてからひと煮立ち。


「山菜とさつま揚げの味噌煮でございます。どうぞ召し上がれ」

「わあ、美味しそう。いただきます!」


 まずは山菜の方から口に入れる。甘辛い味噌と歯ごたえがたまらない。これは箸が止まらなくなるやつだ。


「大事に食べてって言ったけど、最後にとっておく必要は無いからね」

「心得ておりますとも」


 今度はさつま揚げをソロでいく。かじると中から甘さが染み出してきて、口の中が幸せになる。肉なんか無くても、これだけでご馳走だ。

「レミは美味しそうに食べるよね」

「だって本当に美味しいもん」


 山菜とさつま揚げだけで、こんなに満足感があるなんて。わたしはすっかりユナに胃袋を掴まれてしまったようだ。


 食後にお吸い物まで頂いて、すっかり体も温まった。食べ終わって食器をきれいに拭いていると、ユナがふらりと外に出ていった。

 すぐに帰って来ると思っていたのだが、いつまで待っても戻ってこない。わたしは流石に不安になって、建物の入り口まで戻ってみた。


「ユナちゃん?」


 いつの間にか空が暗くなっていた。腕時計が示す時刻は午後十時。夕食を食べてから一時間は経っている。この世界では、時計があってもいつ夜がくるのかはわからない。ユナは大した道具は持って出ていないはず。いくら彼女でも、ジャングルの中で突然真っ暗になったら迷ってしまうのでは。考えるほどに胸の鼓動が速くなっていく。


 ユナの身に何かあったのかも。考えたくはないけれど、嫌な想像が脳裏をよぎる。かといって、一人で探しに行ったらわたしまで迷子になることは間違いない。


「ユナちゃん! 聞こえたら返事して!」


 この場所がわかりやすくなるように、松明を振ってユナの名前を呼ぶ。不思議なリュックの中身はわたしには取り出せない。この身ひとつで出来ることは精々、このくらいだ。

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