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仲間入り

「俺達はーー」


「俺様は世界最強のラジオパーソナリティ!

 ブルゥゥゥドッグゥ!」


 床に寝ていたブルーが飛び起き、シキの言葉を遮って言葉を発する。


「えぇっと……」


「ぁー、俺達は」


「俺様達はスカベンジャーをやりつつ、移動式のラジオを放送して日本で最高の有名人を目指してるんダ!」


 なんだろう、悪い人ではなさそうだけど、自己主張が強い……。

 ブルーさんは白く鋭い牙を光らせつつ、顔の前で親指を立てている。


「俺を巻き込むな、それはお前の目的だろ。

 ぁー、この通りブルーはラジオで有名になるため、そして俺は歴史の探求のため、それぞれ違う目的のため俺達はスカベンジャーをしながらこの日本を回っている」


「えっと、スカベンジャーというのは?」


「旧時代の遺物を集めて売る仕事だ。

 今の時代、俺達はかつて栄えた旧時代の遺物を有効利用しながら生活をしている。

 だが、今の文明レベルは旧時代よりも遥かに低い、かつて普通に作っていた物ですら1から作るのは難しいんだ。

 だから俺達は苦肉の策として、旧時代の遺物を修繕しながら利用している。

 そういうわけで、その修繕のためのパーツや保存状態の良い遺物がなかなかの値段で売れるわけだ」

 

「傍から見れば廃墟を漁ッてゴミを拾ッてるから《ゴミ拾い(スカベンジャー)》と呼ばれているわけだナ」


 ゴミ拾いという呼び名はあれだけど、どうやら生活に必要な仕事のようだ。

 

「まぁ、さっきも言ったが俺達にとってスカベンジャーは副業みたいな物だ」


「俺様はラジオに使うCDとネタ集メ、シキは古臭い本やデータなンかを集めるついでに売れるもンを探してるッて感じだナ」


 仲間と呼び合うだけのことはあり、交互でも重なり合う事のないタイミングで言葉を発するシキとブルー。


「息の合った説明ありがとうございます。

 お2人の仕事、大体は理解できました」


 各々の目的のために日本を回りつつ、資金調達も兼ねているわけか、私の記憶もどこで取り戻せるかがわからない以上、各地を回りながら生活を送るのは都合がいいかもしれない。


「それで、お2人はなぜ私を仲間にしたいのですか?」


「俺様のラジオのヒロインになってもらおうと思ってナ!」


「ひ、ヒロイン!?」


「おウ! ホットなネタにクールな音楽、そこにミステリアスなヒロインが加われば俺様のラジオはもう最強に無敵ッて算段ヨ!」


 目を輝かせて力強く語るブルーさん。

 本気だ。


「えぇ……」


 逃げたくなってきた。

 ラジオのヒロインって一体どんなことをさせられるのだろう。


「ブルーの事はあんまり気にしないでいいぞ。

 多少ラジオの話題に出される程度で何かさせられるわけじゃない、多分」


「多分って……」


 まぁ、積極的に何かをしないなら別にいいか……本当にいいのだろうか。


「俺の方は単純にナナシの事が気になるんだ」


「へ……!?」


 一瞬ドキッとして顔が赤らむ……が、内容を確認する前に次の言葉がすぐに紡がれる。


「いいかナナシ、お前は覚えていないかもしれないが、2属性の魔力を扱える人間は、今現在1人も確認されていない」


「え……?」


 では何故私は普通に使うことが……?

 私に残っている魔法に関する記憶の中では、この力が特別な物だというような認識はない。


「可能性があるとすればナナシが1人目か、もしくはこの情報誰かに操作された情報なのか……。

 いろんな事が考えられるが、いずれにせよ間違いなく面白い話に繋がっている、だから気になる。

 真相を知りたい」


「こいツ、ミステリアスなの好きなんだヨ」


 私は、いったい何者なんだろう。

 漠然とした使命感に、普通ではない魔力。


「俺達がナナシを仲間にしたい理由はこんな所だ」

 

「私は……、いったい何者なんでしょうか……」


 自分の正体に予想がつかなくなり、不安感に襲われる。


「それが分かってたら仲間にしねぇよ。

 わかんねぇから面白いんだろ」


「俺様的には顔がいいからヒロイン候補にしてもいいゼ?」


 はぁ、人の悩みなんて知らないで……とことん自分勝手な人達だ。

 なんだろう、この人達を見ていると悩んで不安になるのが馬鹿みたいに思えてくる。

 よし気合を入れ直そう、弱みを見せるなんて私らしくなかった。


「わかりました……。

 貴方達はとことん自分勝手な人達ですね」


 よく知らない人からの得体の知れない善意、もし彼らが私を仲間にしたい理由がそう言ったものだったら仲間にはならない、そう決めていた。


「でも、だからこそ信用出来ます。

 私も、貴方達の仲間に入れてください」



___



 意思表明ののち、2人と順に握手を交わす。

 ブルーさんの手にはしっかりと肉球が生えていてぷにぷにだった。


 そしてふと今までの経緯を思い返し、疑問に思った事があったので尋ねることにした。


「冷静に考えるとあの時、私まだ炎と雷の魔法を見せていないのに2人は私を助けてくれましたよね?」


 私を馬頭から救ってくれた時点では私はまだ炎の魔法しか見せていない。

 あの時に私を救ってくれたのは彼らなりの優しさだったのだろうか。

 だとしたら、一応お礼くらいは言っておかないと。


「あぁ、俺は見捨てるつもりだったぞ」


「え……?」


「あれは俺様がヒロインにしたいから助けようッて提案してナ!」


「俺達、意見が割れたらコインを投げてどっちの意見にするか決めてんだよ。

 んで、俺が外したから助けた」


「……」


 訂正、やっぱりこの2人に優しさはない。


「ちょっとひどくありませんか!?

 可愛いー女の子のピンチですよ!」


「いやいや、一回は助けたろ。

 あれも目の前でミンチになるのを見たくねぇからだけど。

 っていうかせっかく助けたのに逃げたやつなんか知らん」


「罪悪感とかないんですか!」


「そういヤ、3人になったからコインじャない方法も考えないとナ」


「じゃんけんでいいだろーー」


 私の抗議をそっちのけにして話を続ける2人。


 はぁ……この人たちについて行って大丈夫なのだろうか。


 仲間になってからものの数秒で不安感を覚えるのであった。

 

 

 

 

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