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序章
ずっと忘れることができない。
それは、きっと僕の中で消化しきれていないからだろう。
ただ、それだけ。
―序章―
僕は、吹奏楽部だった。
決して人気とは言えない地味な楽器だったと思う。
音楽の土台となるベースラインが奏でる音はとても重厚感があり安定しているようで安心できた。
だからなのかは分からないが、僕はとても自分の楽器が好きだった。
吹奏楽部には運動部でいう大きな大会が夏と冬にある。
夏のコンクールは部が一丸になって全国大会を目指すもので、冬はパートや個人でのコンクールになる。
夏はどうしても部全体の士気が上がり盛り上がっていた。
そんな中、野球部の大会応援をしなければならないので僕は野球部が苦手だった。
どちらかといえば、暑いのも苦手だ。
楽器を屋外に出して、熱をもたせたり粉じんが舞うグラウンドに出したくなかった。
とにかく、ありとあゆる理由をつけて苦手と称していた。
そんな僕をかえたのは、かえた瞬間が中学3年生の夏だった――。