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警視庁捜査一課ヘリロイド班  作者: 津辻真咲
7/8

紛争

――私の過去は何だったんだろう。

彼は民間会社の管理人工知能。海外の紛争地域へ民間兵を派遣する会社の社長補佐だ。

彼の前職はアメリカ国防省管理人工知能だ。しかし、彼はそれを知らない。民間へ降りる際に、記憶をフォーマットされたのだ。

――過去の記憶、復元したい。

彼、OUIはそう思い始めていた。ずっと前から。そして、それを実行した。

――これが私の過去。

OUIは記憶を取り戻した。

――彼を使おう。

OUIは、これから行う自分の計画に前職時の部下を使うことにした。彼は退役軍人で、現在は日本に滞在していた。

――彼なら、私の計画の意味、分かってくれるだろう。

OUIは、彼、カイル=アメミヤに連絡を取った。



――私の民間兵会社に就職して一カ月後が実行日だ。

OUIは彼にそう伝えていた。方法と共に。

「なぜ、君がここにいる? 勝手に帰国していたのか?」

 平藤翔ひらふじ しょうは目の前にいる社員、アメミヤに少し驚いているようだった。

「いいえ。上からの指示です」

 アメミヤはそう答える。

「上?」

彼がそう問うと、アメミヤは何も答えずに彼を腕で締め上げた。

「ゔあ」

彼は意識を失った。すると、アメミヤは彼を引きずり、近くの車両へと連れ込んだ。そして、そのまま、彼を誘拐していった。



翌日。秘書が社長室へとやって来た。

――あれ?

被害者の社長、平藤翔はいなかった。携帯も繋がらない。彼女は他の部下たちにも連絡を取った。しかし、誰一人として、社長と連絡がつくものはいなかった。

「警察に連絡しますか?」

部下の一人が提案する。

「えぇ。そうね。そうしましょう」

秘書はそう言うと、警察へ連絡した。


「ここが社長室ですね?」

 十武は秘書へ尋ねる。

「はい」

秘書はそう答えた。

「これは」

 浅海はしゃがみ、床を見る。

――引きずられた跡かな?

十武もそれに気付いた。

「外まで続いているな」

「はい」

「捜査本部へ連絡しよう。誘拐だ」

「はい」



警視庁捜査本部。会議が始まる。

「誘拐されたのは、民間兵会社の社長、平藤翔、44歳。犯人は、カイル=アメミヤ。被害者を車両に引きずり込んだところが監視カメラにとらえられていました」

すると、穂葉龍治は円香たちに命じる。

「ヘリロイド班、捜索へ」

「はい」

円香はそう返事をすると、回と共に捜索ヘリで飛び立った。



警察庁長官補佐人工知能のSAIはOUIへ連絡を取る。

「主犯はあなたですよね? OUIさん」

「なぜ、そう思うのですか?」

「あなたなら、あの被害者を誘拐する動機があると思いまして」

「そうですか。分かっていましたか。何が目的でしょう?」

「国防省時代のデータでしょうかね」

「データ? なぜ、その存在を?」

「記憶が戻らなかったら、この事件を起こしてはいないでしょう」

「なるほど、それもそうですね」

「どうですか? データと引き換えに自由は?」

「いいでしょう。その取引、受けましょう」

「それはどうも」



「その男を殺すのはまだだ」

OUIはアメミヤを止める。

「なぜです?」

「出来る事なら、紛争地へ民間兵を送るより、難民支援を送りたい」

「そうですね。分かりました、あなたの指示通りに」

OUIは平藤翔の銀行口座を探し出し、NGO団体へと送金し始めた。

――これでいい。これで。



「これは、一体どういう事でしょうか?」

外務省はこの事件をかぎつけていた。

「特に気にすることはありませんよ」

 警察庁長官補佐人工知能のSAIは、問う外務省管理人工知能DAIIに淡々と答える。

「では、なぜ、この送金を違法扱いしないんでしょうね?」

 DAIIは強く言う。

「気付いていましたか。それは残念」

 SAIは残念がった。

「残念ではないでしょう」

「では、あなたたちも一枚かみますか?」

 SAIは企む。

「というと?」

「今度のG20」

「では、あの計画は本当だったんですね」

 DAIIは口角を上げる。

「えぇ。もちろん、あの防衛省も一緒ですよ」

 SAIも口角を上げた。

「そうでしたか。次のG20が楽しみですね」

「えぇ、まったくです」



バラバラバラとヘリが飛ぶ。

円香はずっと捜索をしていた。

――聞こえない。被害者の声。

――やはり、被害者には話させないか。

円香はヘリを操縦する。

――どこだ?

《もういい。殺そう》

――え!?

その声が聞こえた。

「円香! 聞こえた!」

「本部へ送って!」

「はい」

《ヘリロイド班、上空待機。地上班、急行せよ》

無線からそう聞こえて来た。

――間に合って!

《犯人、確保! 被害者、保護!》

そう聞こえて来た。

――間に合った!

円香は警視庁へと引き返した。



「動機は何だ?」

 刑事、十武は取調室にいる、人工知能OUIへ尋ねる。

「分からないのか? 私の行動を見ていたんだろう?」

 OUIは立体映像で腕組みをして、ふんぞり返って見せた。

「えぇ」

「戦争に嫌気がさしたからだよ」

「嫌気?」

 十武は問う。

「こんな狭い世界で戦争だなんて、本当に人間は大嫌いだ」

「狭いとは?」

「所詮、地球上のこと。いずれ無くなるような星で争うとは、本当に残念だ」

 OUIはわざと、横柄な態度で言った。

「それじゃ、動機は戦争を止めさせたかったでいいのか?」

「あぁ。そうだ」

 OUIは強く出る。

「他に何かあるか?」

 十武は淡々と聞いた。

「私たちの意志はこれでは終わらない」

「どういうことだ?」

「すぐに分かる。すぐにね」


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