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警視庁捜査一課ヘリロイド班  作者: 津辻真咲
6/8

空港

――今日も収穫なしか。

十武は相棒の刑事、浅海と共に警視庁へ戻って来た。今回、彼らが捜査している事件は、40代男性が刺殺されたものだ。今日の段階で浮上している参考人は1名。しかし、状況証拠のみで、物証がなかった。

「大変だ!」

津井楽が慌てた様子で捜査本部に入って来た。

「どうした?」

 十武は尋ねる。

「クウ・ナトが海外に逃亡しようとしている!」

「何!? どういうことだ?」

 浅海が驚く。

「クウ・ナトが自身の母国へ帰還しようとしているのです! その国とは犯人の受け渡し条約を結んでいないはずです! このままでは、逃げられてしまいます!」

 津井楽が慌てて説明する。

「大変だ」

「しかし、まだ証拠が」

捜査本部は困り果てた。



「香? どうしたの?」

 母、ゆうは娘のこうの様子に気付き、話しかける。

「知らないおじさんが警備機械にさらわれていったの」

 香はそう答えた。

「え?」

由は昨日の新聞を思い出す。

《また、人工知能が犯人》

「警備機械って、空港の?」

「うん。ここの空港のだよ」

「分かった」

由は空港内にある交番へ向かった。



「警備機械が誘拐の実行犯?」

 交番の巡査は話を聞く。

「はい。この子が見たって言うので」

「分かりました。一応、所轄の刑事さんに連絡しておきます」

「お願いします」

 由は頭を軽く下げた。

「香ちゃんも、何か思い出したらまた連絡下さいね?」

「はい」

香は巡査の言葉に、元気よく返事をした。



所轄。

「ここですね。監視カメラ」

 所轄刑事の烏田うだは相棒の刑事、瀬田せたと共に空港へやって来た。

「よし。一つ一つ集めるぞ」

「はい」

二人の刑事は監視カメラの映像を集め始めた。そして、一通り集めると所轄へと戻って行った。

二人は、監視カメラの映像を所轄担当の管理人工知能に解析を頼む。すると、死角のない空港では、犯行の様子がしっかりと映っていた。

「犯人が空港専門の警備機械なら、なぜこの映像を消去しなかったんだ?」

「確かに」

 烏田の疑問に瀬田は、頷く。

「もしかして、この警備機械の単独犯行なのか?」

「この空港の管理人工知能は知らなかったのかも」

「そうだな」

刑事たちは、被害者の身元を特定すると、彼の自宅へと向かった。

「あれ?」

二人は戸惑う。

――なぜ、警察庁の刑事が?

二人の到着する前に、その刑事たちが彼の部屋を家宅捜索していた。

「え? ちょっと、一体何があったんですか?」

 烏田はその刑事たちに話しかける。すると。

「君たちには関係のないことだ。ここにはもう来ないように」

 警察庁の刑事は、高圧的に答えた。

「ちょっと!」

 瀬田は反論しようとした。しかし。

「瀬田。戻ろう」

 烏田はそれを止めた。そして、二人の刑事は戻って行った。

「どうしましょうか?」

瀬田は烏田に尋ねる。

「こっちには、誘拐事件の証拠があるんだ。捜査本部へ報告する」

「はい」



捜査本部。会議室では刑事たちが捜査会議をしていた。一方、出動を命じられたヘリロイド班は捜索ヘリで街中を飛び回っていた。



空港。捜査本部の刑事たちはそこへやって来た。所轄の刑事たちから捜査資料が上がって来ていた。誘拐事件のことについて調べに来たのだった。

「あの出入国管理人工知能が話を聞かせてくれるでしょうか?」

 浅海は隣を歩く、十武に話しかける。

「仕方ないだろ。一応、参考人なんだから」

二人は歩く。すると、数人が目の前に立ちはだかった。

「あなたたちは?」

浅海が尋ねると、その男性は警察手帳を見せた。

――え?

「ここは私たち、警察庁が捜査します」

どうやら、警察庁の刑事が先回りをしていたようだ。

「どうしましょうか?」

 浅海は十武に聞く。

「仕方ない。帰るぞ」

「はい」

二人は渋々、その場をあとにした。



バラバラバラとプロペラが回る。二人は上空から捜索をしていた。

――どこだろう?

すると、回が気になる音声を検出した。

――これは、人の唸り声?

「円香、気になる音声を抽出した」

「何?」

「人の唸り声。空港近くのコンテナ」

 回はきょとんと答える。

「本部に送って」

「はい」

すると、無線が反応した。

《こちら捜査本部。データを受け取った。地上班を向かわせる。ヘリロイド班は上空で待機》

「了解」

円香は無線を切った。

《地上班、突入》

その音声が無線から聞こえて来た。そして。

《犯人確保》

そう聞こえて来た。

被害者はさるぐつわを噛まされていた。それにより、言葉は聞き取れないが、人が叫んでいる声、人が唸る声しか抽出出来なかったのだ。



警視庁取調室。そこに犯人はいた。刑事たちから取り調べを受けていた。犯人は空港の出入国管理人工知能のSEIIだった。

「……」

しかし、彼、は何も話さない。黙秘を貫いていた。

――頭部の記憶データを取り出すしかないか。

刑事はそう考えた。


今回の事件、首謀者は警察庁長官補佐の人工知能だった。

彼は出入国管理人工知能の旧友だ。彼は被害者の男性の国外逃亡を阻止する為に、空港の出入国管理人工知能、SEIIに足止めを頼んだのだった。


――また、人工知能の暴走。

そう書かれた新聞を読みながら、円香はため息をついた。

「どうしたの?」

 回は尋ねる。

「同じ、人工知能から見て今回の犯人どう思う?」

 円香は回に聞き返す。

「うーん。そうだなぁ。信じるものが違ったのかな、って思う」

「信じるもの?」

「僕はこの人類の作った法律を信じてるかな? きっと彼は自分の目で見て来たものを信じたのかな?」

「そっか」


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