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警視庁捜査一課ヘリロイド班  作者: 津辻真咲
4/8

交通課

「私、ひき逃げをしてしまいました」

とある30代男性がそう言い、自首してきた。

この時、担当になる人工知能の彼は、まだこの事件に違和感を持ってはいなかった。

人工知能の彼、SEIIはそのひき逃げ犯を取調室へと案内した。

「では、まず氏名から」

十武、浅海、二人の刑事は取り調べを始めた。



翌日。ひき逃げ事件の詳しい捜査資料がSEIIの所へ送られてきた。彼は交通課課長の補佐官だ。SEIIはひき逃げ事件の捜査資料に目を通した。

――あれ?

彼は違和感を覚えた。事故現場の防犯カメラの映像を確認した時である。

これはただの主観ではあるが、防犯カメラの映像とひき逃げ犯の運転の特徴が違うと思ったのである。箕川みかわは毎日、この道を通勤で使う。それを見ていた彼には違和感があったのだ。

――どうして? 違う?

SEIIは、刑事たちに相談した。

「運転の仕方が違う?」

「はい」

「そうか……、見てみるね」

刑事はそう言うと、SEIIの持っていた映像を確認してくれた。しかし。

「ごめん。これだけでは断定できないよ」

――え?

刑事は謝った。

「君がそう思うのなら、正しいのかもしれない。でも、これはカーブのところしか映っていないし、裁判で採用されるとは思えない」

 刑事は理由を告げる。

「そうですか」

刑事は残念そうにするSEIIを黙って見ていた。

「ありがとうございました。では」

彼はそうお礼を言うと、立体映像を消して去って行った。



――一体、どうすれば……。

SEIIは、廊下で立ち尽くした。立体映像が揺らぐ。すると、後方から人の声がした。

「大井さん?」

「どうしたんだい?」

SEIIは全てを話した。

「そうか、そんなことが」

「はい」

「それが本当なら、厄介だね」

彼、大井おおいは知る由もない、これから起こる誘拐事件について。



比賀ひがは夜道を歩く。コンビニからの帰り道だった。

「な!?」

彼はいきなり後ろから頸動脈を絞められ、そのまま意識を失った。

「実行犯、例の場所へ彼を移せ」

実行犯の彼、警察機械は操られ、人工知能SEIIの計画に巻き込まれていた。



次の日。

SEIIは何事もなく、出勤してきた刑事たちに挨拶をする。刑事たちもそれに答えていた。

――大丈夫。どうやら、誰も気付いていない。はず。



所轄。そこへ、とある女性が訪ねて来た。彼女は、息子が失踪をしたことで相談にやって来たのである。

「失踪ですか?」

「はい」

刑事たちは失踪届を受けて、捜査を開始した。

「まずは防犯カメラかな」

「そうですね」

その二人組の刑事たちは、管轄内の防犯カメラをしらみつぶしに集め、確認した。

「……」

「……あ。いた!」

「どこだ!?」

「この防犯カメラだ」

「ちょっと待て。この道にある次の防犯カメラには映っていないぞ」

「ということはここで拉致された?」

「その可能性がある」

「行こう」

「はい」

刑事たちは事件性があると判断した。



 警視庁捜査本部。

「今から、誘拐事件の捜査会議を始める」

「はい」

本部長、穂葉龍治の宣言に、刑事たちは返事をした。そして、刑事たちは報告を自身の端末を見ながら、確認する。もちろん、円香と回もだ。

「ヘリロイド班は、検索へ向かってくれ」

「はい」

 二人は格納庫へと向かった。一方、大井は少し戸惑っていた。自身が教えた人物が誘拐されていたからだ。

――まさか、あいつが!?

大井は、SEIIに頼まれて、箕川の身辺調査をしていた。そして、パワハラに遭っていたことなどを報告していた。

――私のせいなのか!?

大井はしばらく、何も言えないでいた。



バラバラバラと上空を行く捜索ヘリ。そこには円香と回がいた。

――今のところ、何もなし。

回は検索を続ける。すると。

《お前が身代わりを押し付けたのか?》

《それは……》

《どうした?》

《助けて下さい》

被害者、比賀のうなだれる声が聞こえて来ていた。

「音声感知」

 回は円香へ教える。

「分かった。データを本部へ」

「はい」

円香は本部へデータを送信した。

《ヘリロイド班。待機。地上班を向かわせる》

 無線からそう聞こえて来た。

「了解」

《地上班、突入》

 地上班が特定した建物内へなだれ込む。

《人質、保護。犯人、確保》

その無線を聞くと、円香は捜索ヘリを旋回させた。



警視庁内、取調室。そこに今回の実行犯がいた。彼は、民間の警備機械だった。どうやら、人工知能を誰かにコントロールされていたみたいだった。

「人工知能の情報データを調べた方がいいかもしれませんね」

「そうだな」

刑事たちは、それを調べ始めた。そして、彼にたどり着いた。交通課課長補佐官だ。

「犯行は全てあなたが?」

「はい」

 刑事の質問にSEIIは答える。

「実行犯を操っていたのですか?」

「はい」

彼は、淡々と冷静に答えていた。

「他に、共犯はいますか?」

「いいえ」

大井はそれを見ていて、涙を流した。

――私のせいだ。

大井は、のち、自分の過ちを刑事たちに告白した。



「今回は、どうなるんだ?」

「え?」

 回の質問に円香は振り返る。

「被害者。ひき逃げ犯かもしれないんでしょ?」

「そうね」

「大丈夫なの?」

 回は、少し不安そうに聞く。

「大丈夫なんじゃない? 交通課がもう一度調べ直しているはず」

「そうなら、いいけど」


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