表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
警視庁捜査一課ヘリロイド班  作者: 津辻真咲
PR
2/8

時効

《警視庁より各局。渋谷区で誘拐事件発生》

 アナウンスがスピーカーから流れた。

「回、行きましょう」

円香と回は格納庫へと向かった。



バラバラバラとプロペラは回る。捜索ヘリは上空を行く。

「捜索開始」

「はい」

 回はそう返事をする。

捜索中。

――ここじゃないのかな?

 回は意識を集中する。

「不審な家屋は?」

 円香は問う。

「該当ありません」

「もっと北かしら?」

「分かりました。捜索します」

「お願い」

「はい」

捜索中。

――う~ん。

「違うかも」

 回は呟くように答える。

「分かった。場所を変えよう」

「はい」

捜索中。

《航空班、全機戻って来い。以上》

 本部から無線でそう連絡があった。

「はい」

 円香はそう返答する。そして、回の方に向く。

「回、戻りましょう」

「はい」



捜査本部。

「捜査会議を始める。報告」

 本部長の穂葉龍治はそう告げる。刑事たちはそれぞれ報告を開始した。

「はい。誘拐されたのは、半沢次朗はんざわ じろう。今朝、家族のもとに身代金の要求がありました」

――ふーん。営利目的か。

 円香は話を聞いて、そう考えていた。

「航空班は捜索へ向かって下さい」

 穂葉龍治はそうヘリロイド班へ指示した。

「はい」



バラバラバラ。プロペラの音が上空に響く。

「回、捜索開始」

 円香は告げる。

「はい」

 回はそう返事をすると、捜索を始めた。

「どう?」

 円香は状況を聞く。

「該当家屋なし」

「もっと、北へ行きましょう」

「はい」


バラバラバラ。捜索ヘリは上空を旋回する。

「捜索開始」

「はい」

 回は捜索を始める。すると、音声を抽出した。

《俺が殺した》

「ん?」

 回は戸惑う。

「どうしたの?」

 円香は回の様子に気付き、尋ねる。

「今、あのショッピングモールから、《俺が殺した》って聞こえて来た」

「不自然ね。ショッピングモールのどこ?」

「倉庫としても成り立っている、看板の所」

「分かった。本部へ送信する」

「はい」


 じじじっと無線が鳴る。

《報告ありがとう。今、地上班を向かわせる。そこで待機》

 無線からそう聞こえて来た。

「はい」

 円香はそれに応答し、待機した。


じじじっと無線。捜査本部からだ。

《地上班、突入》

 現場にやって来た地上班が突入を開始した。それは旋回をしていた捜索ヘリからも見えた。

《地上7班、被害者保護》

――よし!

 円香は口角を上げる。

「でも、不思議だね。何で《俺が殺した》なんだろう」

 回はそう言って、円香を小さな立体映像から見上げた。

「確かに」

 円香は機体を旋回させ、警視庁へ戻った。



次の日。

「円香! ビッグニュース!」

 回は立体映像の姿でやって来た。

「何?」

 円香は振り返った。

「昨日の犯人、元警察官だって」

 回は無邪気に話し出す。

「ふーん。そうなんだ」

「それでね。完全黙秘だって!」

「気になるの?」

 円香は頬杖をしながら、回の方を見る。

「気になる」

 回は真剣に言う。

「そうか……」

円香は、課長の方をちらっと見た。

「いってらっしゃい」

課長は目線を合わせずにそう言う。

「ありがとうございます! さ、いこいこ!」

 回はまた無邪気に誘う。

「えー」

 円香は少し不安になりながら、出かけた



「犯人の毛利もうりは、ここで警備員の仕事をしていました」

「なるほどね」

 二人は彼の働いていたショッピングモールを見上げた。

「さ! 聞き込み! 聞き込み!」

「何でそんなに地上の仕事が楽しそうなの!?」

 円香は少し呆れて、ついて行った。


「彼の不審な行動? うーん、そうだな。警察にはもう既に話したよ」

 同僚の警備員の男性は円香たちの問いに答える。

「それ以外で、何か」

 回は深く聞く。

「うーん」

 警備員の男性は考え込む。

「お弁当を一人で食べていたとか?」

 回は不安げに見つめる。

「なぜ、そうなる」

 そんな回を円香は少し戸惑いながら、言った。

「弁当は一緒に食べていたけど、あぁ、そうだ。あいつ、事件の数日前に一人で弁当を食べるって言って、ゴミ箱探していたな」

 警備員の男性は思い出して、そう言う。

「ゴミ箱?」

 回は尋ね直す。

「あぁ。それで、缶ジュースの空き缶を持ち帰っていたな。自分のじゃないし。変だなって」

「ジュースの缶」

円香はメモる。

「ちょうど、あの自動販売機の所」

 男性は指さし、教えてくれた。

「ありがとうございます」



「ここか」

 回は自動販売機を眺める。

「あ」

「ん?」

 回は円香の方を見る。

「ここ、ちょうど防犯カメラがあるね」

「あ、本当だ」

 回は円香の見ている方を見る。

「見せてもらいましょう」

「そうですね」



 警備室。

「こんにちは」

回は挨拶をして、中へ入る。

「はい?」

 警備員の男性が振り返った。

「警視庁のものです」

 円香が警察手帳を見せる。

「え! あ、はい。何か?」

「あの防犯カメラの映像を見せてもらえますか?」

 円香は警備室の入り口付近から、そちらを指さした。

「えぇ、もちろん」



「あ、本当に空き缶を拾ってる」

 円香は防犯カメラの映像を見て、呟く。

「そうですね」

 回も話す。

「柄からすると、コーラですかね」

「そこ、関係ある?」

 円香は問う。

「あるんじゃない?」

 回はきょとんと答える。

「問題はどうして、拾っているのかどうかでしょ?」

「まぁ。それなら、誰が捨てたのかを見ましょう。少し前も見せて下さい」

 回は警備員に頼んだ。

「はい」

 警備員はその映像も見せてくれた。

「これは」

「今回の被害者、半沢次朗さんですね」

 円香は答える。

「でも、なぜ?」

 回は疑問に思う。すると、一緒に防犯カメラ映像を見ていた警備員の男性が指を指す。

「こちらにも、彼は映っているようですね?」

「え?」

 回は戸惑った。

「こちらの防犯カメラ」

 警備員の男性は指を指し、再び教える。

「赤い枠?」

 回はそれを見て、聞く。

「あぁ、こちらですか? こちらはここの警備管理人工知能のHAIIが防犯のために新しく導入したシステムです」

 警備員の男性は説明する。

「犯罪を起こす前の、心身のストレスからくる微妙な体の振動を感知して、危険人物かどうかを見分けるものです。緑枠なら大丈夫、しかし、赤枠なら厳重注意だそうです」

 警備員の男性は淡々と話す。

「でも、なぜ、赤枠に?」

 円香が問う。

「さぁ、そこまでは」

 警備員の男性は少し、戸惑って答えた。

「ありがとうございました」



「今度はどうします?」

 回は円香に尋ねる。

「半沢次朗は何かの犯罪を企んでいた?」

 円香は呟くように回に話す。

「そのようですね。でも、一体」

「その前に、なぜ、空き缶を?」

「そうですよね」

「あ」

 円香は何かに気付いたのか、声を出す。

「どうしたの?」

 回はそれに問う。

「確か、被害者保護の時、彼は《俺が殺した》って言っていたのよね?」

「うん。聞いたよ」

 回は頷く。

「もしかして、過去の事件で何かあったんじゃ?」

 円香は気付いたことを話した。

「そうだね」

 回は再び、頷く。

「警視庁へ一旦、戻りましょう」

「はい」

 二人は警視庁へ戻って行った。



警視庁。

「過去の資料を片っ端から見ていたら、きりがないですよ」

 回は音を上げる。

「それもそうね。管理人工知能に尋ねてみましょうか?」

 円香はそう提案した。

「それがいいです」

 回は賛同する。

「HAKUI」

 円香は呟く。すると、HAKUIは立体映像で姿を現す。

「あの」

「会話は聞いていました」

 HAKUIは円香の声を遮り、言い放つ。

「あぁ、そうだったね」

 HAKUIは超個体状態で、全てを管理していた。

「それで、該当する事件は?」

「これです」

「通り魔事件?」

 円香は尋ねる。

「えぇ、まだ解決していません。しかし、犯人のDNAは被害者の爪の間から採取されています」

 HAKUIは淡々と答える。

「まさか、あの空き缶って!」

 回は気付く。

「唾液の採取が目的だった?」

 円香も気付く。

「行こう! 捜査一課」



 捜査本部。

「そうか。分かった。その線で調べよう」

 本部長の穂葉龍治はそう答えた。

「お願いします」

 円香は頭を下げた。



「これで、すっきりした?」

 円香は回に尋ねる。

「うーん。なんか変」

 回は考え込む。

「どこが?」

 円香が聞く。すると、回は答える。

「勘」

「何で人工知能は、推理と勘の違いが分からないの?」

 円香は少し呆れて、答える。

「あ」

「何?」

 回が何かを思い出す。

「あの人工知能も気付けたよね? あの被害者の事」

「赤い枠?」

「うん。そう。それで、……」

「なるほどね。共犯? もしくは首謀者?」

「そうそう」

「証拠がないよ」

「確かに」



「おい、大変だ」

 捜査本部で待機していた二人は、十武の声に振り返る。

――なんだろう?

「被害者の動画がネットに出回ってる!」

「本当か!? 分かった。俺も行く」

 十武と浅海はその場を立ち去った。

円香と回は顔を見合わせる。


「あった。これだ」

 円香はパソコンで動画を見る。

「捜査一課は、この動画の送り主が人工知能だと気付いたようですよ」

「え!? HAKUI!?」

「廊下での会話は聞かせてもらいました。すぐに逮捕へ向けて捜査一課を動かします」

「お願いします」



次の日。

『誘拐事件の犯人は、人工知能』

「まさか、こうなるなんて」

 円香は新聞を見て、戸惑う。

「驚いたね。あの人工知能も元警視庁の管理人工知能だったなんて」

「そうね」

 円香は相槌をうつ。

「どうなるんだろう?」

「何が?」

 円香は聞き返す。

「裁判。解体されないといいけど」

 回は犯罪を犯した人工知能の行く末を心配していた。

「あら、心配してるの?」

「いいじゃん」

 回は少し、顔を赤くする。

「そうね」

円香はそれを見て、少し微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ