ウィーゼル大森林
この話、書くのめちゃくちゃ大変でした。
何でだろう...
やっぱり移動しながらとか、新しい場所とかを書きつつ戦闘も書かないといけなくて、何をどう書くのか悩むからかな...
苦戦するところとそうじゃ無いところの違いがわからん...
レベル低くてすんません涙
ウィーゼル大森林。
ウィーゼル南部にある、広大な森林地帯だ。
かつては人を寄せ付けない危険地帯であったが、近年では徐々に開発され、その面積を減らしつつある。
生息するモンスターもある程度把握されており、既に危険度が高いものは駆除された…はずなのだが…
「なにこれ!?すっごいことなってるよっ!?」
そこにはわらわらと湧き出るモンスターがいたのだった。
「予想はしてましたけど、これほどとは…」
「アリーナ、大丈夫か?」
「もちろん!この程度、なんでもありません。」
続々と襲い来るモンスター達をなぎ倒しながら、俺達は進む。
流石に勇者が3人もいるだけあって、今のところ危なげない。
美音は雷の魔法を使う。
そしてその武器は…なんとエレキギターだ。
彼女が弦をかき鳴らす度、周囲に雷でできた球体が生み出される。
それを敵に叩きつけるというなんとも不思議な戦闘方法だった。
特徴はなんといってもその殲滅力だろう。
球体は一度に複数生み出すことができ、爆発時の攻撃範囲も広い。
群れに囲まれた時などは非常に重宝した。
反面、ギターを演奏するという一手間が入るため、発動までのタイムラグがデメリットといえる。
今までそれを補っていたのがフランズだ。
彼は植物魔法の使い手。
様々な植物を状況に応じて召喚・使役する万能型だ。
2人で戦う時はウッドゴーレムを前衛にし、美音を守りつつ立ち回り、最後は美音が一気に殲滅、という戦法だったようだ。
そこに俺とアリーナを加えた4人が、今のパーティである。
ワッツ達は流石に危険だと思い、今回はお留守番をしてもらった。
かなり悔しそうだったが、最後は受け入れてくれたのだ。
さてこのパーティ、前衛がいない。
なので恐らく1番機敏に動けるであろう俺が前に出ることにした。
二丁拳銃を携えて、敵が来たら真っ先に前へ。
気持ち的には回避8割に構える。
モンスターの攻撃を躱しつつ、隙ができたら撃ち抜く。
躱す。
言葉にすると簡単だが、実際には物凄く難しい。
後ろに下がって躱すのは素人。
その場で躱すのは初心者。
前に出て躱すのが玄人。
そして相手を動かして躱すのが達人だって言われたっけ。
下がって距離を開けるとより強い攻撃が来る。
かといってその場で躱し続けるのもいずれ捕まる。
だから前に出ることを織り交ぜて牽制する。
それを突き詰めると己の行動で相手を縛り、意のままに動かすことができる。
そしてそのために必要なのは、矛盾しているようだが攻撃だ。
結局のところ、相手に危険を抱かせることが最大の牽制となるのだ。
だから、撃つ。
俺の一撃の危険度を知らしめる。
やがて俺の一挙手一投足に、モンスター共が過剰に反応するようになる。
そうなれば後は、後衛陣のキルゾーンに群れを誘導するだけである。
トロールの大振りの一撃を身をかがめて躱す。
脇から寄ってこようとしていたオーク・ナイトに向けて銃口を向ける。
オーク・ナイト達がたじろいだ。
その隙に、横からするすると植物の蔦が伸びて絡まる。
動けなくなったのを横目に見つつ、トロールに向けて連射する。
堪らず下がったトロールを、風の刃が襲った。
俺はトロールの脚を続け様に撃ち抜き、動きを止めて放置する。
お次はゴブリン、さらにスケルトン...
次から次へやってくる。
雑魚のゴブリンは撃ち抜いて仕留め、ゴブリン・ウォーリアーとスケルトンはフェイントで下がらせる。
集まったところに、すうーっと青白い球体が滑って来た。
美音が弦を弾くと、球体はバリバリと放電しながら暴発する。
雷が落ちたような激しい音とともに、その付近のモンスター共が一瞬で絶命した。
トロールやオークも片付いたらしい。
「はぁー、あたしもう疲れたよぉ...」
「美音ちゃん、頑張らないと...」
「うっさいなぁ...わかってるよ」
美音がぼやくのもわかるほど、異常な数のモンスターだ。
俺もかなり息が上がっている。
それから少し進むと、なぜかモンスターが全くいない場所にぶち当たった。
襲ってきていたモンスター達も、明らかにその辺りを避けているようだ。
「何でしょうね、ここ...」
アリーナが薄気味悪そうに言った。
この辺りはなんと言うべきか…生気が感じられない。
草も木も、どことなく薄黒く、歪に捻じ曲がっている。
なにより生命の気配がない。
モンスターどころか普通の動物すらいないのだ。
気温も一気に下がったような気がする。
俺達は慎重にその不気味な森を進んだ。
ふと気配を感じ、俺は特に黒い大木を凝視する。
よく見るとそれは木が黒いのではなく、大木を引き裂くように、漆黒の闇が口を開けているのだと気付く。
「あれは…穴…なのか?」
誰かが疑問に答える暇もなく。
その闇から、奇怪な生物が姿を現した。
体長は、俺の身長と同じくらい。
二足歩行で四肢があり、シルエットは人間に近いように見える。
そいつは周囲の木々と同じように、奇妙に捩くれている。
全身は黄色がかった乳白色で、その顔はグロテスクなマスクのようだ。
凹凸がほとんどなく、目はまるで黒い空洞のよう。
鼻は不釣り合いなほど小さく、口は不自然なほど大きい。
全身からは黒い粒子が湯気のように立ち上っている。
何故かはわからないが俺はそいつに強烈な嫌悪感を覚えた。
「なんだこいつ…!」
俺は油断なく銃を構える。
ぴりぴりと全身の毛が逆立っている気がした。
「"壊魔"…!こんな豊かな森に…!?」
アリーナが驚愕の表情で呻いた。
「"壊魔"って…」
俺の注意がそれた一瞬。
壊魔が電撃的に動いた。
壊れたからくり人形のような、非生物的な動きでこちらに迫ってくる。
ドンッと俺は引き金を引いた。
肩に命中したにも関わらず、止まる気配がない。
痛みを感じていないかのようだ。
俺は咄嗟に銃口を下に向け、脚を撃った。
右足が吹っ飛び、壊魔が倒れ込む。
が、それでも奴は腕を使って這いずって来た。
「気持ち悪っ!?こっち来んなっ!」
美音の雷球が炸裂し、ようやく壊魔は生き絶えた。
しかし…
「てかまだまだ来てるんですけどっ!?ひぇぇぇぇっ」
そこら中の木に黒い穴があき、壊魔が次々現れている。
妙にシンクロした動きでギクシャクと迫ってくる様は、毛虫の大群を見たときのようなゾッとする光景だ。
「キリがない!駆け抜けるぞ!」
俺たちは壊魔の群れを縫うように走った。
いつの間にかそこら中から歪な生き物が駆け寄って来ている。
「きもっ!ほんとにっ!無理!!!ゴキブリより無理っ!!」
「言ってるっ!場合かっ!!」
一旦群れを抜け、すぐに反転する。
それぞれ必死であらゆる攻撃を繰り出し、迫り来る壊魔達を迎撃した。
「こんちくしょおおおおっ!!」
特大の雷球が炸裂し、青白い光と共に周囲は静寂に包まれる。
「終わりか…?」
と思ったそのすぐ後。
耳障りな声が、そこかしこから聞こえた。
「まじかよ!」
再び現れた大群。
そして背後からも…
「こっちからはモンスターがいっぱい!」
俺は首の宝石に触れ、ビスマルクを発動せんとした。
しかし…
「待ってください!様子が…」
モンスター達は俺たちには見向きもしない。
一目散に壊魔に襲いかかって行った。
モンスターと壊魔が激突し、人外の悲鳴や得体の知れない音、気分の悪くなるような匂いが充満する中、俺たちはそそくさとそこを離れた。
「何がどうなってんだ?」
モンスターと壊魔の争いを遠目に見ながら、俺は呟いた。
戦況は今のところ五分五分といったところだろうか。
どちらもどこから湧いてくるのか、とんでもない数だ。
「普通、壊魔はこんな豊かたところには出ないんですけどね...」
「そうなのか?」
「はい。奴らが出るのはもっと荒廃した土地や呪われた場所などのはず...」
「この森...声が変なんですよね...」
フランズが複雑な声をあげた。
「声?そんなの聞こえないけどな...」
「ああ、セイヤさんには聞こえないと思うよ。フランズはね、植物とか木の声が聞こえるんだって。」
「ふーん。Drドリトルの植物版ってことか」
「はい。豊かな森ではそれこそ五月蝿すぎてシャットダウンしないと厳しいくらいなんですけど...ここの森では...全く声が聞こえないところがあるんです。」
「さっきの暗い森に関係あるのかも知れないな。」
「はい。こんなのは初めてです。」
「暗い森に現れる壊魔、フランズの言う変な声に星獣...なんだかややこしいことになって来たな...」
そうこうしているうちに、対岸の戦闘に変化が起きていた。
徐々に、壊魔の勢いが増している。
均衡が崩れ、乳白色の波が大波となって押し寄せている。
「おいおい...あれ、死んだモンスターが...」
「壊魔になってる!?」
壊魔に貫かれ、あるいは噛み砕かれ絶命したモンスター。
一度地に倒れたそれは...突如激しい痙攣に見舞われる。
そして枯れ枝のように折れ曲り、皮が裏返り...乳白色の怪物として立ち上がる。
モンスターは数を減らすのに、その分壊魔は増えていくのだ。
「あんなのありか!?あれ、やばすぎるだろ!?」
「こんな現象は...初めてです。一体何が...」
アリーナもこんなことは初めてなようだ。
フランズは青い顔で震えている。
「こ、声が...どんどん森が...死んでいきます」
壊魔の勢いが増すにつれ、黒い森もどんどん広がっているようだ。
「とにかく、逃げないと...」
その時。
凄まじい地響きが巻き起こった。
轟音は鼓膜が破れたかと思うほど。
百聞は一見に如かずということわざ、あれは本当だな。
初めて見たそいつは、俺が散々聞かされて想像していたものよりも、遥かに圧倒的だった。
あまりに大きいので、顔は太陽に照らされて見えない。
赤銅色の毛皮に覆われた肉体は、大きすぎてもう生物の域を超えているように思える。
巨獣が大きくその身を震わせる。
再び大音響が轟き渡った。
-怒ってやがる…!
天にそびえるその肉体が、広がっていく黒い森に向き直る。
奴が高層ビルみたいなその両脚を踏ん張る。
絶え間なく響き渡る重低音に、大地が砕ける悲鳴が混ざった。
赤いマナがその全身から発せられる。
熱い。
その膨大なマナ量は、発現してすらいないのに果てしない熱量を放射していた。
「ヤバい…ヤバいぞこれ…!」
ジェットエンジンが耳元で鳴っているような音と共に、急激に気温が上がっていく。
俺達は1秒間お互いを見合った後、示し合わせたように同時に逃げ出した。
とにかく遠くへ。ひたすらに早く。
俺はちぎれそうなほど脚を速く動かしながら、後ろを振り返った。
太陽が2つ見える。
片方は中天に。
もう片方は、雲よりも近くに。
アルデバランがゆっくりとその身を折り曲げると、1つの太陽はもう、手が届きそうな程近く感じた。
やがて太陽は、その輝きを急激に増しながら滑るように森に近付き…
辺りは全ての色を失った。
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