住処の話と、町へ
第4話公開です
評価してくださった方、ありがとうございます
「住む家かぁ、確かに大事だね」
住む家が欲しい、とイルセに告げると顎に指を添えて考える素振りを見せる、ただ家と言っても高望みする気は無い、せめてテントぐらいは欲しいのだと伝える
「いや、さっきも言った通りキミがこの世界に転移してきたのは間違いなく僕の責任だ、協力者になる、というのも了承したし、家とまではいかないけど人一人住める程度の小屋ぐらいは魔法で用意出来るよ」
魔法で用意、まさかとは思うが「転移魔法で小屋を転移させてくる」という方法ではないのか
「─────違うよ?」
今の沈黙は何だ、と詰め寄る
イルセは「冗談だよー」と笑みを浮かべている、ちくしょう、無駄に顔がいいのが腹立つ
「あんまり細かいことは説明しづらいけど、魔法で何かを作るっていうのはこの世界ではありふれたことだよ、ただ流石にちょっと時間はかかるけど」
なるほど、そういうものなのか、なんとなく理解はできたがどのぐらい待てば良いのだろう
「そうだね、大体1時間位かな」
1時間───普段なら退屈で待てないが、魔法で作っている様を見ていれば待てない時間ではないだろう
「まぁでも1時間はちょっと長いだろうし、折角だから森の外の町を見に行ってきたら?」
森の外の町、というのは先程聞いた国の中、というのだろうか、確かにほんの少しでも情報は欲しい、この世界の話はイルセに聞けばある程度答えてくれるだろう(イルセが嘘をついていなければ)が、「他人から聞く」のと「自分の目で見る」のとは大きく違う、ただ1つ大きな問題があるのだ
────それは今の自分の服装だ
今の自分はパーカーとズボンという現代服だ、しかし最初に出会った少年とイルセはいかにもといったファンタジー世界の服装をしている、このまま町へ行けば間違いなく目立つ、嫌な意味で、もしそうなれば自分は怪しまれて、最悪何かしらの罪を被せられて牢屋に入れられる可能性もある、そうならない為にこの世界の服が欲しい
「服?それならすぐ用意できるよ」
そう言うとイルセがパチン、と指を鳴らす
すると何もない空間から突然服が出て来た、これも魔法なのかと考える
「随分君も慣れてきたね、サイズは合ってると思うから着て確認してよ」
何故大体のサイズを知っているのか、と言いたいがとりあえず着てみる、みようとする、が
「うん?どうしたの?」
何故こちらを見ているのか、この男は
「いやまあサイズが合ってるとは限らないし、僕の方でも確認しようと────」
手を上げて掴む動作をする、それだけで引き笑いを浮かべて後ろを向く、その間に木の陰に隠れて、周りに人が居ないかも確認して服を着る
────何故サイズがピッタリ合うのか
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「ちゃんとサイズもピッタリ合うね、よかった」
そーですか、と冷たい目線を送る
イルセが用意した服はフード付きの短いケープに袖がついたワンピース、膝上までのスパッツであった、靴も先程まで裸足であったが同じく用意されたブーツを履き、鏡で確認は出来ないがあまり違和感はない、と思う
「じゃあこれを渡すね、はい」
イルセが何かを手渡す、それは宝石がついた指輪だった
「この森は広いからちょっと歩いただけでも道に迷うけど、この指輪には道案内の魔法をかけたから迷う心配はないよ、あ、町はキミから見て右の方向に真っ直ぐ行けば到着するよ」
なるほど便利だ、と素直に関心する、早速指輪を右手の人差し指につけて町に向かう
「行ってらっしゃーい」というイルセの声に振り向き手を振る、ただこの時自分はよりにもよって重要なことを忘れていた、それに気付くのは町に到着してからだった────