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定期対策A  作者: 馬の頭
講義集
14/18

レジュメ:フィンランド経済と金融:政治学入門

前提条件

・フィンランドは単独ではパワーバランスに寄与しない

・対ロシアの最前線(ロシアをレジームから放置しておくことでの勢力均衡)

・・・地域統合の成功→未加入国への脅威

        ロシアへの投資(ロシアの資本主義陣営への懐柔)

経済からみた分析

前提の追加:EU内は完全に団結しているわけではない。

国際政治における経済交流と追加議論の詳細

貿易や投資を拡大することで、相互依存の関係となり、各国が協調しがちになる。

→とは言うものの高坂は以下の様に反駁している。


「イギリスが、『世界の工場』の役割をつとめ、他の諸国が原料及び食料の供給者となるという分業形式は・・・いちおうは、諸国家のあいだの協力関係ということができたけれども、イギリス以外のイギリスに対する依存性がそうとう高いものであったことは否定しえないのである。そして依存関係があるところ、支配関係が生まれやすいことは言うまでもない。」

(『国際政治―恐怖と希望』第2章)

→確かに政治的意義として、EUはロシアやアメリカに対抗しうる勢力となりつつある。しかし、経済的に見れば、内実としてドイツ中心のヨーロッパとなりつつあるのではないか。

ドイツの危険性

ドイツは冷戦中から西は欧州資本主義国家の主力として、東も東欧の二番手として力を持っていた。→東西ドイツの統一は冷戦の終結を表すとともに、欧州における巨大国家の登場


「ネイションへの回帰は、一九九〇年の東西再統一の際、ドイツの課題となりました。それはドイツにとって、引き受けないわけにはいかないタスクでした。ドイツ東部を再建する必要がありました。このような一種の時間的選考の結果、ほとんど偶然にもドイツは二〇一〇年頃から、ヨーロッパ大陸で圧倒的な優位を手に入れることになったのです。」(『問題は英国ではない、EUなのだ―21世紀の新・国家論』 第一章)

不景気の原因:2008年金融危機→外需に依存した輸出中心の経済体質,経済制裁・不況等の対ロシア貿易の制約・・・

現在、失業率も8,6%と高い・・・

一体、政策的に不景気から脱出できなかったのか?


貨幣

フィンランド・・・ユーロ:欧州中央銀行が統括(不可逆的な固定相場制)

スウェーデン・・・クローナ:スウェーデン中央銀行が統括(変動相場制)

ユーロ→金融政策不可能(為替レートの減価を図ることができない)

=悪化している財政(37.7億ユーロ赤字,累積債務1,359億ユーロ)で、財政政策できる?


そもそも財政政策は本当に有効か?(それとケインズですら想定していない、財政政策のみの脱不況はできるのか?)

例え有効であったとして適切に運用されるのか・・・

「選出された政治家は、何らかの積極的便益を選挙民にもたらす計画に公金を使うことを楽しむ。彼らは、その同じ選挙民に税を課すことを喜ばない」(J・M・ブギャナン、R・E・ワグナー 『赤字財政の経済学』)

さらに・・・

貨幣の違い→北欧諸国の政策的協調を妨げているのではないか?(北欧としてのパワーを結合させることができない)


国内経済

1、1990年代のIT、製鋼業などの成長:経済的な成長←起業家が群生的に表れたことでのイノベーション


理論的分析


 「第一に、・・・新結合の大部分は旧結合からしかも直接にそれに代わって生ずるのではなく、それと並んで現れ、それと競合するのである。・・・第二に、大量の企業者需要の出現は、まったく本質的に新しい購買力の出現を意味する者であって、第二次的好況の波を呼び起こし、この波は国民経済全体にわたって広がり、かくして一般的繁栄減少の動輪となる」(『経済発展の理論』第六章)


But


2008年以降、スウェーデンのGDPが上昇している一方でスウェーデンは停滞している。


現状分析


A,スウェーデンの新貨幣導入(電子マネー)


B,ユーロにおける経済発展の規制

:ユーロは国境なき通貨であるため、財政及び金融政策が不可能。


 →一度、不況が来ると、財政危機とのスパイラルになりやすい


 →弱小国家が破綻することになる。


 →同時に煽りを受けて失業率が下がらない。


 →実際にリーマンショック以降失業率が下がらない状態に陥っている。




2、高福祉国家⇒ベーシックインカムを試験的に導入するも失敗


失敗分析

「若し土地が一國全住民に、各々自己生存の薦めに必要なる量を正確に所有し、其れ以上のものを全然有せざるが如くに分配せらるとすれば、總ての者は平等であり、誰も他人の薦めに働かうと欲しないであらうことは明らかである。又、何人も他人の勞働に對する支拂手段をも有しないであらう。何故ならば、生活必要物を生産するに必要なだけの土地を有する各人は、其収穫の全部を消費し、其結果、他人の勞働と交換し得る何物をも持たないからである。」(『富に関する省察』第一節)


価値を


全てに等しく再配分することの欠陥性は16世紀の段階で証明されている!!!



我々は何を学ばねばならないか。

1、確かに企業家は経済の不確実性を見越して不断の努力を重ねている。

2、イノベーションを含めそれは経済発展の一要因になりやすい

3、しかし、不景気を解消するほどのビッグバンにはなり得ないものであり、政府は経済的な政策を行う必要は確かに存在する。

4、一方で、それらは「慎重に」行われなければ、「政府の失敗」につながってしまうことがある。


結論

経済的にフィンランドは不安定である。また、北欧政治も分断されたままであり、外交的な影響力を期待することはできない


〈参考文献・引用文献〉

E・トッド 2016 『問題は英国ではない、EUなのだ―21世紀の新・国家論』文春新書

ブギャナン/ワグナー(大野一訳) 2014 『赤字財政の政治経済学 : ケインズの政治的遺産』 日系BP文庫SBC(スウェーデン統計局HP) http://www.scb.se/en/


Statistics Finland(フィンランド統計局HP) http://www.stat.fi/index_en.html

阿部 清司 2001 「フィンランドとNOKIA」『千葉大学 経済研究 第16巻』所収

中西寛 2003 『国際政治とは何か―地球社会における人間と秩序』中公新書

中谷巌 2000 『入門 マクロ経済学 第4版』 日本評論社

新川敏光、大西裕、大矢根聡、田村哲郎 2017『政治学』 有斐閣

佐久間浩二 2017 『国際金融の世界』日経文庫

シュンペーター 1977 『経済発展の理論(上)・(下)』 岩波文庫

エドワード・ルトワック 2017 『戦争にチャンスを与えよ』 文春00文庫

小川英治 2002 『国際金融入門』 日経文庫

丸尾直美 2005 『経済学の巨匠―26人の華麗なる学説入門』生活情報センター

外務省 2017 『平成29年度版外交青書』

阿部 清司 2001 『フィンランドとNOKIA』千葉大学 経済研究 第16巻所収

佐久間浩二 2017 『国際金融の世界』日経文庫

和田 重司 2015 『フランク・ナイトの不確実性の経済学―イギリス経済史との比較を念頭において』 中央大学経済研究所年報 第46号所収

シュンペーター 1977 『経済発展の理論(上)・(下)』 岩波文庫

チュルゴオ 1937 『富に関する省察』 岩波文庫

酒井泰弘 2012 『フランク・ナイトの経済思想―リスクと不確実性の概念を中心として』彦根論叢 No,394所収

佐々木憲介 2012 『経済思想Ⅰ講義資料』 北海道大学平成24年度経済学部講義用資料所収

黒木亮 2011 『フランク・ナイトの経済学・競争体制批判―シカゴ学派再考』経済学史学会 『経済学史研究』 53巻所収

BBC 2018.4.25


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