国際関係
国際関係入門
試験では、(1)各国が自国の安全保障を追求していながら、それを十分に獲得できない理由、(2)国際秩序を形成する際の覇権国、およびミドルパワーやNGOなどが規範起業家として果たす役割、(3)移行期正義について、2問を選択して解答するように求めた。(1)に関しては、安全保障ではなく、単に各国が対立しやすい国際構造の性格を論じた答案が多く、「安全保障のジレンマ」などを正面から論じていないものが目立った。また(2)については、覇権安定論や国際規範論の基本的概念に言及していない場合が少なくなかった。(3)に関しては、定義の概念に触れていない答案が目についた。とはいえ、全般的には講義の内容を理解した答案が多く、それらは基本的にB判定になっている。A判定は、上記のような問題点を回避し、また重要なポイントをおさえた答案に提供している。(17年)
1)勢力均衡による国際的安定の効果と限界、(2)国際交流による効果、(3)保護する責任の意義と限界について問うた。それぞれについて、講義中に解説した基本的な概念と考え方を論理的に展開しているかどうかに着目して、採点した。
(1)については、安全保障ジレンマなどによって対立が生じやすく、勢力均衡がそれをどのように解消しうるか、しえないかを問うたが、逆に勢力均衡の限界として安全保障ジレンマの作用を指摘した答案が少なくなかった。講義中の説明とは因果関係が逆転しているが、全く間違っているとは言えないため、そうした答案にも相応の得点を提供した。(2)については、相互依存・グローバル化や国際レジーム・国際制度、トランスナショナル・リレーションズなど、また(3)については、国際規範の作用に関して適切な概念に言及しながら論じていれば、適宜得点を提供した。
ふれるべき概念や考え方、歴史的事実などに論及していない場合、解答が論理的な記述になっていない場合については、基準を設けて減点した。その上で、講義中に提出してもらったミニレポートを加算して、採点した。また、興味深い私見を記している答案については、多少場違いな意見であっても積極的に評価した。
全体として例年よりも少し得点が低かったように思われ、また論理的に矛盾した解答が散見された点は残念であった。(16年)
講義では、国際関係の特徴と基本概念を概説した上で、国際関係の歴史的特徴、戦後の国際関係の構造的変化、国際関係の理論的な考え方などについて解説した。
それを踏まえて、試験においては、(1)「アナーキー的社会」と形容される国際関係の特徴、(2)冷戦終結後の国際関係の変化、(3)経済的なグローバル化による国際政治上の影響などについて問うた。3問中2問の選択解答としたため、それぞれ50点満点で採点し、それを85点満点で換算した上で、講義中のミニレポート3回分をそれぞれ5点満点で採点して加算し、全体としての得点とした。以上の採点にあたっては、講義中に解説した概念や現象のうち特に重要なポイントを設定し、それについて十分に理解されているかどうかを基準にした。(15年)
試験は論述式の設問として、勢力均衡の効果と限界、緊張関係にある国家間関係を協調的にする手段について、その効果と限界などを問うた。
論述式であるので、当然、設問に対して回答することを求めているが、それがなく、講義内容の関連する点、あるいは関連の稀薄な点を網羅的に記述した(だけ)の答案が散見されたのは、残念であった。
高得点の解答は、例えば勢力均衡について、その背景にある国際的構造の特徴、勢力均衡の意味とその歴史的事例、さらに設問で問うた効果と限界を解答しており、さらにそれらを論理的に議論を展開しているものである。多少誤りがあったとしても、設問に真摯に向かい合い、議論を論理的に進めようとしている答案は、高く評価している。
また各設問について、講義内容を踏まえて、当然論及すべき概念や現象を設定し、それも評価の基準として用いている。加えて、講義中のミニレポートも考慮した。(14年)
試験では、アナーキーな国際関係における安全保障ジレンマと、冷戦期と冷戦後における国際紛争の特徴を問うた。また、最近の国際的な諸現象の何かを選び、それを講義中に紹介した概念によって、簡潔に説明するように求めた。前二者では、講義の内容を踏まえて、受講生が議論を自ら展開することを期待していた。後者の設問では、国際関係論の概念を現実の国際的現象に自ら適用してみることを、出題意図としていた。
最初の問題では、国際関係のアナーキーな特徴と関連づけて、安全保障ジレンマが生じるメカニズムを説明するのが望ましいが、そうできていない場合が少なからず見られた。その場合には相応の減点をしている。第2問では、講義中の説明を自らアレンジするのに苦労したようであり、講義のままの論理構成で冷戦と冷戦後を概説するのに終始しがちで、国際紛争の相違を明確化していない答案が目立った。
最後の問いについては、殆どの答案が講義で紹介した議論をそのまま論じており、自ら考えて現象を説明したケースは限られていた。それができている場合は高く評価し、高得点を提供している。
全体としては、例年と同様の水準か、例年を少し上回る出来だったように感じられた。講義では、国際関係を理解し、分析するための代表的な言葉(概念)を、具体的な現象に言及しながら概説した。それらの概念は、実際の現象を把握し、特徴づける道具なので、受講生が日常的に接したり、歴史として見聞きする現象に自ら適用してみて、考えをめぐらせる手がかりにしてほしい。(13年)
試験問題として、以下の6問のうち3問に解答するように求めた。
①アナーキー的社会について、②国益とナショナリズムについて、③グローバル・ガバナンスについて、④9・11後の国際関係の変化について、⑤開発と援助について、⑥国際レジームによる国際協調について、である。
試験の答案については、論理的に議論を展開し、自分自身の見解も記すように求めたものの、その双方を満たす答案は残念ながら余りみられず、したがってA評価も少なくなっている。とはいえ、講義内容を咀嚼した水準以上の答案は多く、それらはB評価としている。ただ、講義内容を誤解しているケースが意外に多く、戸惑った。一例をあげるなら、国際関係の構造的特徴を示すアナーキーの語は、無政府的の意味であり、無秩序や混沌を意味しないと説明したはずであるが、後者の意味であると断じた解答が少なくなかった(市販されている講義ノートの影響だろうか?)。(12年)
国際関係入門の試験では、第一に、冷戦終結期の国際関係の「変化」について、指定した概念を用いて説明するように問い、第二に、国際秩序を形成する手段について問うた。
第一問については、「変化」の様相と要因を解答するよう期待しており、また提示した概念を眺めれば、まず国際関係の基本的特徴を述べ、それに関連づけて冷戦期の国際関係の様相を説明し、それと対照させて冷戦終結期の変化を説明すれば良いことが分かるはずである。この問題の主旨を踏まえて、適切な内容を論理的に解答できていれば、「A」評価となる。しかし、「変化」を説明できていない答案や、冷戦期についての記述に終始していた答案が意外に多かったのは、残念であった。
第二問では、講義中に紹介した外交、勢力均衡、相互依存、国際レジーム、グローバル・ガバナンスなどの概念のうち一つを用い、それが国際秩序形成に役立つ根拠と限界を述べれば良い。国際レジームを用いた答案が多かったが、その限界についても論及されていれば、より高い評価になっている。答案の中には、大国に圧倒的なパワーを与え、問題のある国を処罰すれば良いという、信じがたい強硬論が散見されたのには、非常に驚かされた。
一回生前期の配当科目でもあり、全体的に「甘め」に採点しているが、「A」評価に値する答案は多くはなく、残念であった。(10年)
この講義では、国際関係の関連科目を受講する上で基本になる考え方や概念、歴史的事実などを講義した。国際関係はアナーキー的社会をなしていて、その構造的特徴から対立が生じがちであるが、同時に国際協調も不可能ではない。試験では、この対立と協調とが生じる要因と、その具体的な様相とを問うた。その際、入門科目でもあるので、主権、冷戦、グローバル・ガバナンス等の基本的な用語を提示し、それを適切に用いるように求めた。
答案は、設問の要因と様相を論じようとせず、講義で知った内容をともかく無秩序にならべている場合が多く、残念であった。前後の文章に有機的なつながりを欠く答案も、多数見られた。より論理的に書かれ、しかも用語を適切に用いている答案を、より高く評価している(09年)




