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#カケルの運命

これは僕が生まれて十六年目にして初めての恋物語。それまで僕は彼女なんていなくても良いものだとしか思っていなかった。そう、あいつに出会うまで――。


九月一日。今日から新学期、一学期が始まる。僕の学校では、日本とは違い九月から学校が始まり、七月ごろに修了式がある。どちらかというと、アメリカとかに近い。僕の住む街は完全な計画都市だ。完成当時は人工知能の使用数が世界最多だった。今は一番じゃないけど、一応三番目だ。その、三番目になった理由というのが、完全に金だろう。この街に入るだけで、なぜか一万もかかる。それでもこの街に入ろうとする人はいた。そりゃ、完成当時は世界で一番の人工知能都市だったし。それから数年たって、他の国にもいろいろ同じようなものが出来て、かなり人は減った。まあ、他の人工知能都市は入ったところで金はかからないから仕方がない。それに、この街に遊園地感覚で来る家族も増えている。


新学期というだけあって、僕は早く家を出た。新しいクラスも気にはなっていたけど、それよりももっと知りたいことがあった。学校は全部?人工知能で動いている。学校に入るのは全部カードをかざさないといけないし、各階各教室もカードが必要だ。学校についてさっそく僕は職員室に行った。あれを知るために。


「先生!例のやつ早く教えてください!」


「何、それだけのためにこんな早くに来たのか。まだ、五時だぞ。まったく、キミは何を考えてるのか理解に苦しむな」


「で、教えてくれるんですよね」


「ああ、仕方がない。お前のことだ、向こうから来るだろうから待つと言われてたし、しょうがない。入れ。転校生のレンだ。カケルはあったことがあるんだよな」


あれは、十年くらい前だったかな。僕が初めて海外に行ったときのホームステイ先がレンの所だった。


「あれ、本当にレンレン?やったー!じゃあさ、レンレンまだ時間あるし、ちょっと付き合ってよ」


「おい、ちょっと待て。まだ話は終わってない。大事なことを言う。カケル、お前はレンの専属世話係だ。いいな」


は?何を言ってんの。一応、レンレン、僕より一つ年下だし、小さいし、それになんて言っても可愛いし。


「あっ、そうそう。これは決定事項だからもう変更できないよ。安心したまえ、お前のレンなら大丈夫なはずだ」


確かにレンレンは僕と一緒に入ればなぜか絶対に安全?だ。なぜ『安全?』なのかというと、確かにレンレン自体は安全なんだろうけど、そのおかげで僕がけがをしそうになる。僕がそばにいると、レンレンには完全防護シールド的なやつが出来て、近づくものをすべて排除してしまう。たとえ髪の毛一つでも。

それで何をもって安全なんだ。僕とレンレンが一緒にいてもいなくても変わるのは、レンの安全性だけだ。僕の安全に関しては一緒にいる方がレンレンの分が僕に回ってきて余計危険になってる気がする。それでも僕は、レンレンと一緒にいるときの楽しさが忘れられなくてできる限り一緒にいたいと思ってしまう。


「ええ、いいですよ。ただし、それ相応の見返りを。レンレンの世話係をする代わりに、僕の給料を五万上げてください」


給料というのは、僕は去年から生物を教えている。免許は持っていないけど、年齢さえ満たせば持てる段階ではある。この学校は特別に僕に授業をする許可をくれた。


「それだけでいいのか。よしいいだろう。では、カケル、レンの世話係を頼む」



【本館:廊下】

ここは中高一貫校なだけあって、それなりに広い。校舎も本館、新館、別館、芸術棟等いろいろある。ちなみに、さっきの職員室は新館にある。そこから少し歩けばすぐに本館だ。


「レンレン、なんでこの学校に転校してきたわけ。だって、向こうの学校の方がこんな学校よりも賢いところたくさんあったはずなのにさ」


「Why?Because you are.That's all.what's the matter?(なんでかだと?お前がいたからだ。それだけだ。何か問題でも?)」


「あれ、日本語話せないの。さっき話してたくせに」


「It’s not impossible, but I’m not used to Japanese so much.(無理じゃないが、日本語にあまり慣れていない)」


「そう。このまま英語で話されても、僕は困らないけど、他の人が困るんじゃない?少しくらい日本語で話す努力をしてくれればいいのに」


「分かった。できるだけ努力する。お前は、相変わらず、ここで好きなように過ごしてるようだな」


「そりゃ、随分好き勝手にさせてもらってるよ。こんな学校に来たのはいいが、授業はどうする気なの。高校レベルも学士レベルでも普通に全部分かってるだろ」


「確か、ここには天才教師がいたはずだ。Maybe, her name was supposed to be Maura Isles.」


「確かに天才ではあるが、あれと話せる奴はそうそういない」


「でもお前は受けてるんだろ」


おい、なんでそれ知ってる。まあ、モーラ先生は全部授業を英語でするから理解するのが大変で授業を受ける生徒なんて数が知れてる。僕は、英語で授業されても全然問題ない。一応、中国語とフランス語までならまだ理解できる。よく昔、レンレンと日本語と英語以外で会話してたし。


「La leçon de ce professeur est intéressante.(あの先生の授業面白いんだもん)」


「Il semble que Kakeru.(カケルらしいな)」


「I know that Len likes this play, but stop it because it's troublesome.(レンがその遊びを好きなのは知ってるけど、それ面倒くさいからやめて)」


「Oh sorry.But I think it is very interesting.(でも、面白いと思うんだけどな)」


「それはレンだけだから。もちろん、分からない日本語は英語で言ってもいいけど」


「Rally?もしかしたら英語よく使うかも」


今回のこの遊びはましな方だ。レンレンは時々、イタリア語やスペイン語まで出してくる。そんなの話せないし、書けない。確かに勉強にはいいかもしれないけど、使うのは英語だけで十分。


「ちなみに、今日から授業受けるんでしょ。ノートとかあるんだろうな」


「もちろん、全部ある。というより、空港から直でここまで来たし」


「入学手続き海外で済ましたの?そんなことできるんだ。それより、Do you know wher she is now?」


「I think she has not come yet.」


「そう。残念」


「朝ご飯食べに行こうよ。レンレンの好きな物か何かあるだろうし。今日はおごるから好きなものを好きなだけ食べていいから」


「分かった。そうだ、カケル、狼用の餌はあるか」


「狼用はないけど、肉か魚ならあるからそれでいいか」


「ああ、ちなみに、校舎内で狼を連れて歩いてもいいか」


「僕はいいけど、他の人が怖がるだろ。僕の授業部屋においておけば。そこなら広いし、普段生物選択者しか来ないし」


一応、僕の授業部屋はほかの部屋と比べるとそれなりに広い。最初は半分くらい物置状態で他より小さかった。その荷物の中身がまさか、動物の死体だなんて思っていなかった。僕は生物の授業をできるだけあって、別に死体を見ても何にも怖くない。それどころか、骨格標本も何度か作ってる。だから、その死体を全部骨格標本にしてやった。今は壁一面に僕の中では最適な姿で飾られている。


【食堂】

ここの食堂は朝は六時から開いてる。ただ、朝が早い分作るのは機械だから、味にはずれがない分あたりもない。その分安いからいいんだけど。


「ちゃんと狼も連れてきたんだ。大きくなった――」


うお、走って飛んでくるな。重いっての。狼は大人になったら人間とほとんど同じくらいの体重だし、二体いるし、殺す気か。


「お前ら、カケルに飛び込むのはやめろ、それをしていいのは俺だ」


「Lenlen, you know what you're talking about?」


「ああ。そのままの意味だ。カケルは俺のだ。いくら俺の狼でも譲れない」


レンレン、前からそんなキャラだったか?前はもっと可愛くて変な所意地っ張りだったけど、『カケルは俺のだ』なんていうことなかったと思うんだけどな。


「はい、これ食べて。好きだったでしょ」


「まだ覚えてたのか、あんな昔のこと」


「だって一応、僕のはつ――いや初めての友達なんだからさ。忘れる方がどうかと思うけど」


一応、これは本当のことだ。僕はレンレンに出会うまで、誰一人友達がいなかった。知り合いすらいなかったと思う。正確にはいないんじゃなくて、作らなかったんだけど。昔は、友達とか知り合いとか、いたところで、別に役に立つものでもないし要らないと思ってた。どちらかというと、騒がしいし、めんどくさいし、邪魔だと思っていたくらいだった。

そんな僕でも、役に立つ友達と思えたのがレンレンだった。初めて会ったのは、僕が授業をこっそり抜け出して、近くの森で、死体探しをしていた時だ。レンレンは狼たちと一緒に走って遊んでいた。当時僕には、狼なんかと一緒に走り回れるだけの体力は全くなかった。今でも運動全般苦手な方だ。だから、本来

ならレンレンを見たところで、あんなに走れて楽しそうだなとしか思わないはずだった。けど、その時の僕はいろいろ、おかしくて、『目の色があんなにきれいなのは初めて見た。それに、あの足も珍しいし。もう少し知りたいな』と思っていた。今更考えれば、なんであんなことを思ったのかすら不思議だ。

僕は基本的に生きたものには興味を持たない。持つのは死んだ動物だけのはずだった。今考えれば、あれは一目ぼれだったのかも、いや、そんなわけはない。僕がいくら変だとしてもレンレンを好きになんてなるはずがない。なったらそれこそ異常だ。


「レンレン、その狼どうやって、こっちまで運んできたの」


よく考えれば、こんな島国に大きな狼を連れてくるのはそう簡単じゃない。小さかったとしても簡単には動物を持ち込めないはずだ。


「ヘリで輸送してきた。ほら、自家用ヘリがあっただろ」


そうか、レンレンの家は十分金持ちだった。自家用ヘリはもちろん、ジェット機に船、州軍まで持ってる。しかも、その軍隊は世界最強とまで言われている。今のところ、世界で唯一宇宙に進出できてる軍隊はレンレンの所の州軍だけだ。


「相変わらず金持ちはすることが違うな。そうだ、別館裏に願い事がかなうガムの壁があるんだ。そこに行こう」


【新館 職員室】

一応、カケルに任せたが、大丈夫か。別に心配する事ではないが、さすがに今回は不安だ。レン、あいつは何者なんだ。なぜあんな天才がこんな学校に転校してくるんだ。カケル、お前ならそう簡単には死なないだろうが、レンでも大丈夫なのか。


「もうすぐだな、カケル」


【別館 裏】

うわ、相変わらず、この辺ゴミがすごいな。この辺は自動掃除ロボの管轄じゃないから、仕方がないけど。ここ、別館裏でいつも人通りが少なかったのに、最近はガムの壁のせいで人が増えて、ごみも増えた。さすがに衛生面的にはどうかと思うが、今更なくせないだろう。僕は一度も願い事をしたことは無いけど。


「なんだこれは。よくこんなものを置いているな。お前らは馬鹿じゃないのか」


「それは同感できる。これを置いてるのはさすがにおかしいと思う。レンレンも願い事をしてガムを付ければ?」


「は?するわけない。俺は狼がいるから大丈夫だ」


レンレンの狼愛もすごいな。僕は死体とレンレンしか興味がないけど、レンレンは狼と多分僕にしか興味がない。


「どうした、カケル。ぼーっとしてるぞ」


「いや、この辺は自動ロボが一切入ってこないはずなのに、通った跡があるからな、おかしいなと思ってな」


「迷い込んだじゃない?今は何も起こってないんだし、そんなの気にするな」


そうだな。確かにレンレンの言う通り、いくら人工知能と言っても何度か迷い込むことはある。時々、校舎内に外掃除用ロボが迷い込むことがあったし。


【新館:生物教室】

なんか、ここに帰ってくると落ち着くな。やっぱり、この骨のおかげかな。僕の安らぎは、レンと骨格標本によってしか、もたらされない。

なんか、ここに帰ってくると落ち着くな。やっぱり、この骨のおかげかな。僕の安らぎは、レンと骨格標本によってしか、もたらされない。もちろん、僕が暇なら、レンレンと話すか、骨格標本を作るかしかない。一応、レンレンは僕より一つ年下だけど、飛び級で今は同じ学年だ。前はレンレンとは学年が違ったから、修学旅行とかも一緒に行けないから、レンレンが海外に修学旅行で行ったときは、僕も自費で学校を休んでまでついて行った。僕が海外にいるときは、レンレンが付いて来てくれたからそうしただけなんだけど。その時は僕はレンレンに一切何も言わなかった。僕的には付いて来てほしかったけど、あの頃の僕にそれを言えるだけの覚悟は無かった。


「相変わらず、お前の部屋は散らかってるな」


「余計なお世話だ。昔よりはましになってるだろ。それに、この部屋は元々物が多いんだ。」


「じゃあ、俺はここで寝る」


は?レンレンの部屋は別にあるはずだろ。僕がわざわざ隣の部屋を取っといたのに、それはそうしたんだ。


「そうだ、レンレン。抱きしめさせて」


「何を言ってる。お前はいつまでそんなことを言ってるんだ」


もう少し、レンレンに愛想があればいいんだけどな。見た目も可愛いし、彼女の一人くらいいてもいいと思うんだけど。


「カケル、彼女を一度でも作ってみたらどうだ」


「それをレンレンが言うか。僕には彼女なんてものはいらない。それに、レンレンがいれば他は何もなくても大丈夫」


多分、僕に彼女がいないのは、こんなことばっかり言ってるからだろうな。レンレンよりも大事な物なんて今まで出会ったこともないし、出会うこともないだろう。


『生物科のカケルさん、いますか』


「はい、何でしょう」


『もうすぐ授業の時間です。講義の用意をお願いします』


「了解です」


もうそんな時間か。レンレンと話せばなぜか高速で時間でが過ぎてる気がする。一応、僕も学生だから勉強もしないといけないけそ、月曜から土曜まで、一限から七限まできっちり授業が埋まってる。僕の勉強時間は朝と放課後だ。そんなに授業が埋まってたらもちろん、僕が授業を受ける余裕は欠片たりともない。そんな状態でも僕は、ちゃんと学年トップを保っている。レンレンが来たら僕は二番目になるだろうけど。僕には、レンレンと離れられない理由も一応ある。離れたくないのではなく、離れられない理由が。



【カナダ北西部】五年前

このころ、僕は親の仕事の関係でカナダにいた。昔から海外に行くことはよくあった。そのおかげで英語に関しては海外で生活するのには全く問題ないくらいにはなっていた。

カナダには僕は初めてだったけど、親は来たことがあるようで、何も問題なくカナダの家に着いた。


「カケル、好きなところで遊んでいいけど、ひがくっる前には帰ってきてね」


「分かってる。携帯持ってるし大丈夫」


小学校高学年にもなれば、どこに行くかなんて前もって調べてたし、行きたいところは全部決まってた。


「London Bridge is broken down,broken down,broken down.London Bridge is broken down,my fair lady」


ここ、カナダだけど僕の好きな歌だからよく歌ってる。カナダの国歌も民謡も知ってるけど、あまりうまく歌えない。

あれ、ここどこだ。道間違えたかな。一応ちゃんと調べてきたから間違えるはずないんだけど。

なんだろ、この施設。この周辺には森ばっかで、そんなに大きな建物は無いはずなのに。

あ、あそこに人がいる。小さい子だけど、何か分かるかも。


「ねえ、ここどこかわか――」


わあ、かわいい。抱き付きたいけど今はや止めめとこう。



「東に六キロ進めば大丈夫だ」


何も言ってないのに、道に迷ってるって分かってるんだろ。そんなにすべてを見通されたように見られても困るんだけど。


「君はここで何をしているの」


「俺は――」


「誰と話している。キミ済まないが、この子には近づかないでくれ」


なんだこの人たち。なんでこんな子供一人に数人の大人で囲む必要があるんだろ。理由はなんにせよ、あまりかかわらない方が良いんだろうな。一応隠しているようだけど、銃を持ってるようだし。


【商店街区画】

何だったんだろ。どんな理由でも、僕には関係ない。あんなかわいい子がいるのに、僕が無視できるわけがない。それに明日からしばらくはこっちに来たばっかで学校もないし、暇つぶしにはいい。そうだ、ちょうどいい。ここであの子にお見上げを買っていくのも悪くない。


「カケル、何してるのこんなところで」


「母さんこそ何をしてるの。家にいるんじゃなかったの」


「明日からこの店で働くから。友達でも見つけたら」


「もう見つけた。その子、とてもかわいいの」


「よかった。前みたいに独りぼっちかと思ったのに」


前は前だ。別に友達なんかいなくても全然困らないし。どうせカナダに来なくても友達はいなかっただろうし。


「チョコレートケーキを二つちょうだい」


「二つ?その友達に買っていくのはいいけど、変なことに巻き込まれないでよ。もちろん巻き込むのもやめてよ」


あんなかわいい子にかかわって変なことに巻き込まれるわけがない。さっきの銃を持った奴ら以外はさほど問題ないし。すぐに戻ればさっきの子にまだ会えるかも。急がないと。


「RCMPです。この子供を見ませんでしたか」


さっきの男の子といたやつって警察だったのか。RCMPというのは王立カナダ騎馬警察、英語でRoyal Canadian Mounted Police 略してRCMPだ。まさか僕を捕まえに来たんじゃないだろうな。


「推定年齢十歳、男の子、あと顔。それ以外は何も分からない」


あの写真、いつ撮ったんだ。あの写真はさっき僕とあの子が一緒にいたときだろう。初日から警察に目を付けられるのはさすがに嫌だな。警察程度の射撃力ならほぼ確実によけられるけど、あんまり目立つ行為はしたくない。早くどっかに行ってくれ。


「多分その子なら、さっき店を出て右に走っていきましたよ」


「協力ありがとうございます。よし、行くぞ」


警察ってあんなに簡単にどっかに行くもんなのか。僕にとって困る事じゃないけど、嘘をついても大丈夫なんだろうか。


「今回だけだよ。なんでそう、うまい事、面倒ごとにかかわれるのかな」


そんなの知るか。僕も出来れば面倒ごとになんか関わりたくないよ。

あっ、こんなところで無駄に時間つぶしてる暇ない。早くしないとさっきの男の子に合えないかもしれない。



【森】

まだいるかな。もしかしたらさっきの人たちに連れていかれてるかもしれないけど。なんとなく、まだいる気がする、絶対に。僕には聞こえる、あの男の子の音が。このあたりにいるはずだ。どこだ、どこにいるんだ。


「お前、何をしに来た」


「いた!探したんだよ。なにしてたの」


「お前に探される覚えはない。それに、俺が何をしていようとお前には関係ない」


なんで、この子はこんなにも生意気で可愛くないのかな。もう少しでいいから愛想を振りまいてくれたらな。


「関係なくない。キミと出会ったおかげでRCMPにまで目を付けられてるんだから。えっと、キミじゃ呼ぶのも変だから、名前教えて」


「名前?それは何だ」


何だって、どう説明すればいいんだ。多分、名前が何なのか分からないということは、名前がないのか覚えていないのかもしれない。


「名前っていうのは、他の物や人と区別するために付けるもの。僕はカケルっていうんだけど」


「ああ、狼とか、犬とかのことか。それなら心当たりがある。俺の名前はゼロゼロだ。正確にはコードだ」


それ、名前なのか。まあいいか。数字で呼ぶのはなんか変だし、他の名前を付けてあげたいな。


「ゼロゼロって言いにくいから、僕がほかの名前つけていい?」


「好きなようにしろ。面倒くさいやつだな」


分かってる。それ、親に何度も言われてるし。僕は気になったことは全部細かく聞くし、基本納得いくまでずっと聞き続ける。あんまりよくないことだとは分かっているけども、直そうと思っても簡単には直せない。

他の名前を付けるって言ったのはいいけど、よく考えたら僕にネーミングセンスは、ほぼない。どうしよう、ゼロゼロから何か思いつけばいいんだけど。この場合、アナグラムでも難しいな。『ゼ』と『ロ』しかないと作れても、六パターンしかない。こういう時くらい、何か思いついてくれよ。


「そうだ、ゼロゼロ。漢字って分かる?ゼロっていうのは、漢字で書くと『零』になるんだ。零は読み方を変えると『レイ』から『レン』になる。だから、キミの名前は、レンだ。これでどう」


「どうもこうも、お前が自由に決めればいい。別に何も変わらないんだし」


そうなのかな。僕にはすぐには分からなくても、いつか何かしらの違いが分かると思うんだけど。


「じゃあ、レンレン。僕の家に来な――」


「また来たのか。今度は容赦しない。全員発砲を許可する」


な、なんだと。さすがにそれはまずい。


「レンレン、逃げるよ。つかまって」


僕はあんまり走るのが速いっていうわけじゃないけど、僕はある程度なら銃弾の動きを予測してよけられるし、レンレン一人くらいいてもそこまで問題ない。



【僕の家】

うわ、完全に誘拐になってる気がする。小学生が小学生を誘拐するなんておかしな話だな。捕まらなければ問題ないし。レンレンが誘拐されたと思っていなければ誘拐にはならないからいいか。


「お前、何をしたか分かってるのか。こんなことをしたら、殺されるかもしれないんだぞ」


「でもさ、してしまったんだし、これからどうしようとも変わらない。それに、レンレンもあそこにいるの飽きてたんでしょ。だから、一切抵抗せずについて来た、違う?」


「レンレンって言うのやめろ。それと、他人のために自分を犠牲にするのも。自分のために生きろ」


ほんと、生意気。でも一応心配はしてくれてるんだ。やっぱり、可愛い!

それはいまは置いといて、あとで母さんたちが帰ってきてからが問題だ。犬や猫でも飼ってくれないのに、レンレンを家に数日間泊まらせるのはさすがに許してくれないだろう。


「とりあえず、僕の親が帰ってきても、レンレンは友達で、数日だけ家に一緒にいるだけって言ってよ。別に言わなくてもいいけど、あんな所よりもここにいたいならそうするしかないと思うけど」


「分かった、考えとく」


考えとくって、即答しないの?まあ、他人のために自分を犠牲にするなって言われたら、レンレンに強制できないし。


「たっだいま!カケル、帰ってる?」


『レンレン、早く二階に行って』


一応、アイコンタクトはしたつもりだけど、分かってるかな。二階には行ったから大丈夫だと思うけど、変なタイミングで降りてこないでよ。


「母さん、早かったね。何かあった」


「何かって、今日まだ仕事初日だし。で、カケル。何を隠してるの」


うそ、もうバレた。気づかれないように、レンレンのいた形跡は全部消したはずなんだけど。


「隠すって、僕が何を隠すっていうの。こっちに来て初日なのに、友達もできない僕に隠し事をできるはずないでしょ」


「友達ねぇ。そういうことか。で、わざわざ誰を隠してるの」


「どうしてわかったの」


「玄関の外に持ってないはずの靴跡があったもん。前にここに住んでた人の郵便が来たとしても、あの靴跡は明らかに子供。この辺で子供がいる家庭は無い。それに、さっき店に来たとき、ケーキを二つ買って行ったから確実だって分かったけど」


「レンレン!もう降りてきていいよ。えっと、僕の友達のレン。いや、正確にはレンじゃなくてゼロゼロなんだけど。細かいことは置いといて。ねえ、この子可愛いでしょ。ぎゅうって抱き着きたくなるでしょ。ね、ね」


「まあいい。で、何日間いるつもりなの」


「何日間でもいいじゃん。ほら、犬をかうなら自分で世話をできることを証明しろって言ってたし。レンレンの世話は僕がする。もちろん、その間は僕のこともほっておいていいから」


「仕方ないな。今回だけだ。どうせカケルにはできるわけがないと思うけど」


出来るわけないってひどいな。それでも僕の母親か。でも感謝だけはしとこう。


「じゃあ、レンレン。僕の部屋に来て。一緒に遊ぼう」


【】

昨日はよく遊んだ。レンレンも思ってたのと違って、部屋で遊ぶより外で遊ぶのが好きだったみたいですぐに外に行ってしまった。その時いろいろ驚いたことがあった。


「レンレン、きょうは買い物しよう。お金なら十分あるから」


「そうか。おれは別にいい。あいつらがいるから、お前は一人で行ってこい」


「なんで。一緒にいてくれなきゃ、僕死ぬよ」


「は?訳が分からない。なぜお前が死ぬ必要がある」


確かにそうかもしれないけど、一応レンレンが僕にとって初めての友達なんだもん。


「カケルには一応感謝しているし、しょうがないからついて行く。その代わり、俺の欲しい物を買え」


「じゃあ、付いて来てくれるんだ。理由はなんでも付いて来てくれるだけでうれしい。レンレン、意外と可愛いところあるじゃん」


「かわいいとか言うな。俺は男だ」


「何も言われないよりはましなんだから、素直にうれしそうにすればいいのに。本当に可愛げが無いんだから」


「お前は何が言いたいんだ。さっきは可愛いと言っておきながら、可愛げがないと言う。どっちなんだ」


「うーん、どっちも」


「は?」


確かに可愛げがあるにはあるんだけど、可愛げがない。なんて言ったらいいんだろう。好きだけど好きじゃないみたいな感じだと思う。あんまり自分でもよく分かってない。思ったことをそのまま行ってるだけだから、よく考えずに言ってる。


【AWOGATE】

ここは僕のお気に入りの店だ。AWOというのは、僕が生まれたころに発売された、現時点での最新のARゲームらしい。らしい、というのは本当に最新のARと思えないからだ。でも、発売当初からいままでずっとではないけど、人気があった。もちろん世界中でだ。AWOSTORE(以下AWOS)では何を買うのにも現金やクレジットカードは使えず、AWO内で稼いだお金だけしか使えない。僕はさほどそのゲームには入り込んでいないけど、効率よく金を稼いでいるせいで、今でも全プレイヤー十数億人中五位だ。ちなみにこのAWOは課金したからと言って効率が上がったり、何か特があるというわけでもない。ただ、AWOと提携している店が多く、その店でもゲーム内で稼いだ金で払えたりするので得をする、と人気が出た。その提携先は、コンビニからスーパー、ガソリンスタンド、レストラン、百貨店と幅広く使える。それにポイントカードなどのように還元もあって1パーセント還元になっている。

仕組みは僕もよく知らないが、提携先がAWOによって閉店するようなことは起きていないから、店側にも何かしら得はあるのだろう。あんまり有名なことではないが、このAWOを運営している会社があるはずなのだが、表向きはDWOという海外の会社ということになっているが、実際はその会社では断じてない。AWOは日本で開発製造されている。それに、DWOはゲーム開発の会社ではなく、生鮮食品を扱う会社だ。


「レンレン、欲しいものなんでもいいから買ってあげる。別に一つじゃなくてもいいよ」


「本当に金は持ってるのか。お前の家はどう見てもそこまで裕福とは思えないが」


「安心して。これでも僕は親よりは稼いでるから」


AWOは一応RPGゲームだから普通、店にはAWOに関するものがあるのかと思えば、実はそうでもない。もちろんAWOに関するものもあるが、それ以外にもAWOに関係のない本や衣服が売っている。得するのは、少しほかの店より安い事だけだ。



「これでいいか。あんまりAWOについてよく分からないから、関係ないものが大半だ」


「全然かまわないよ。僕なんかこんなにあるし」


AWO関係で半分それ以外であと半分だ。ちなみに中身は、AWOの好きなキャラのグッズといろんな本、あとレンレンへのプレゼント。


「合計で、4963ドルです」


「じゃあ、AWP使います」


「そこに使用機種をかざしてください」


周辺がなんかざわつき始めた。普通AWPを使っても払える金額は1000ドルを超えればいいところだろう。1AWP=1円または1¢だ。ちなみにレートは1カナダドル九十円だ。日本円で446,670円。数が多いのもあるが、AWO関係は基本高い。でも、僕のゲーム内の財産は優に十億は超えている。それでも僕がランキング一位になれないのは、三位で百億、一位に関しては千億を超えている。ちなみにこれらの単位は円ではなくカナダドルだ。時間があって、あともう少し節約すれば、百億は超えられるかもしれない。でも、さすがに千億は不可能だ。僕が知っている限りの場所で一番効率よく稼げる方法でも、頑張って五百億だ。でもその方法もほぼ不可能に近い。RPGなので、魔獣と呼ばれるモンスターが出現するのだが、その効率よく稼げるところは入場制限があってレベル二十から五十までしか入れない。でも、そこに出る魔の討伐推奨レベルはどう考えても八十は超えている。それにARなだけあって、わざわざ移動しないといけないのだが、その魔獣の出現場所は超高級リゾートホテルの最高級フロアに出る。そのホテルに入るだけで千万AWPいるし、そのフロアに入るのには二百億AWPがいる。プレイヤーレベルが五十以下で二百億以上稼ぐのは到底不可能だ。ただ、今までで唯一、一人だけその魔獣を倒したやつがいるらしい。ゲーム外使えるのはすべて稼いだ分だけだ。課金した分は一切使えない。


僕がAWOをするのに使っている、ブレスレットをかざすと音が鳴った。支払い完了の音だ。AWOができる機種はたくさんある。僕が使っているのは、AWO専用の機種だ。ブレスレット型、ネックレス型がある。昔は眼鏡型があったけど、デザインがダサいとかで製造中止になって今では滅多に見かけない。専用機種でなければ、スマホやその辺の液晶付き電子機器なら大抵できる。ただ、持ち運びとかがめんどくさいからか、専用機種であっても便利さゆえに圧倒的に専用機種の方が多い。


どうでもいいことだが、支払い完了時の音は支払額や支払い方法によって異なる。一応、100AWPから十倍ごとに音が高くなり、分割回数を分けるほど音が長くなる。つまり、一番良いのはより音が高く、より音が短いものだ。基本的に僕は一括払いしかしない。分割ができるのは確かに便利かもしれないけど、僕の財産なら分割しない方が得だ。分割をすれば、回数が多いほど利子が多くつき、最終的に払う額が大きくなる。それにAWPは利子が異常に高い。多分その分はAWOの運営や、提携先に行くんだろうけど、それでもかなり高い。可能な限り分割をすると、最初の約三倍になる。そんな高い利子を払うなら、あまり使わない方がましだ。


「お前、どうやってそんなに金を持ってるんだ。小学生だよな」


「大事なのは効率と努力だ。誰でもこの程度ならできる。レンレン、行こう」



【駐車場】

完全に忘れてたけど、約5000ドルを一括で払ったら、周りの人は基本騒ぐんだった。数年前に一度それをしたときは、あっという間にそのうわさが広まって、いろいろ大変な事になった。あれからもうしないって決めてたけど、レンレンを見たら、そんなこと忘れてしてしまった。


「今更なんだが、この車ってまさかさっきみたいにAWPとか言うやつで買ったのか」


「そりゃもちろん。2万ドルくらいだったかな。一応それが財産のランキングが二つ落ちた理由なんだけど。レンレンはAWOはしてないんだ」


「AWOだけじゃなくてゲームというものをしたことがない」


そんな人本当にいたんだ。よく自慢とかで聞くことはあったけど、本当にしたことがない人は初めて見た。レンレンって普段どんな生活してたんだろう。勝手に連れ出したし、僕がいろんなところに連れまわしてるせいであんまりレンレンのこと聞けてないし。


「じゃあ、ちょっと待ってて。買い忘れたものがあったから」


AWOをしたことが無いんならあれさえあれば多分大丈夫だろう。それにレンレンと一緒にゲームしたいし。



「ごめん、ハイこれ。レンレンゲームたことないなら、どうせゲーム機とか一切持ってないでしょ。だから、ついでにAWOの専用機種も。色はこれでよかった?」


「あ、ああ。こんなのもらっていいのか。高かったんじゃないのか」


「要らなかったら別にいいんだけど、出来ればもらってほしいんだけど」


「そういうことなら、素直に貰っといてやる」


貰っといてやるって、なんか偉そうに言うな。まあ、もらってくれるならいいんだけど。そうだ、渡しただけじゃ多分使い方も一切分からないだろうし、教えておかないと。


「レンレン、それは、僕と同じブレスレット型だから、腕につけて。自動で電源が入るはずだから、しばらくしたら、アカウント登録の画面が出るはずだから、必要箇所だけでも入力していって。場所と文字を想像すれば勝手に字が打てるから」


「誕生日と、住所はどうすればいいんだ。どっちも分からないんだが」


「誕生日はどうしようかな。とりあえず、住所は僕の家でもいいよ。誕生日はね、何か特別な日は無いの?」


「特別な日なら、おそらくお前と出会った日だ。ちょうど二日前だったか」


「へえ、まあそれでもいいよ。名前はどう――」


あ、レンレンちゃんと名前の所に『ゼロゼロ』じゃなくて『レン』って入れてくれてる。意外とあの名前も気に入ってるんだ。そういえば、そこまで嫌そうにしてるのも見たことないな。喜んでる所もないけど。


「できたぞ。あとはどうすればいいんだ」


「右下にメニューがあるからそこをタッチして、電話番号登録して。僕の電話番号これね」


「これよくできてるな。何で物を触ったのか、画面を触ったのか分かるんだ」


「多分、さっき字が打てたみたいに、考えてることも分かるんじゃないかな」


「あとは何をすればいいんだ」


ゲームが初めてのくせに以外と呑み込みが早いな。そうだ、レンレンにあれ送っとこ。


「五万AWP送ったから、それでAWOを買って。余ったのは、装備とかで使うから」


「機械と別にゲームも買わないといけないのか。買ったぞ」


「AWO内での種族を選んで。関係ないかもしれないけど、僕は人間にしたけど」


「そうか、なら俺もそれでいい」


へえ、同じにしてくれるんだ。確かに同じ方があとあと便利なんだけど。別に現段階ではどの種族を選んでも特に違いがないけど、人間の方がいろいろ都合がいい。他の種族は、魔法を使えたりするけど、その分マナの量を増やさないといけない。それに魔法が使える分、武器の性能が良くない限り、魔法なしではさほど強くない。


とりあえず、レンレンに初期武装でも送っとくか。初期武装と言っても、本当の初期武装よりは性能に関してはかなり良い。攻撃力、防御力が三倍、体力上限が二倍だ。プレイヤーレベルだけ見ると異常な強さだ。


「お前は、なぜそんなに稼いでるんだ。こんなに良い武器まで」


「それは、イベントで手に入れただけだから無料だよ。あ、もう帰らないと。車走らせながらだけど、アイテムがドロップしてる道通るから、全部集めといて。基本拾って損のあるものは無いから」


今はもう車はほとんど自動運転化されてるけど、それでもまだAI補助の車も多い。僕のは一応AI補助の車だけど、AI補助は僕の運転では運転の妨げになるから、AIは切ってある。だからただの車と同じだ。AI搭載車は安全のために、信号は黄色で停車し、速度も街中では六十キロ以上でないようになっている。僕もさすがに六十以上は出さないけれど、信号を黄色で止まられるのは困る。それにドリフトもできないし、


「カケルは黒が好きなのか」


「そうでもないよ。車は黒だけど、AWOも基本は白だし」


AWOでは普段から白の装備だ。車は、形と色を合わせたらたまたま黒の方が良かっただけで、黒よりは白の方が好きだ。それに白にはいろいろ思い入れがある。


【僕の家】

はあ、なんかレンレンといるのは楽しいのに、でも何か物足りない気がする。何が足りないんだろう。


「一応聞いておく。お前の部屋はまさかだがAWO関係で埋まってないな」


「それは大丈夫。ちゃんと整理整頓はしてるから。階段上ってすぐ左だから。先行ってていいよ」


僕の感覚だけど、僕の部屋は片付いてるはずだ。そういえば、レンレンの部屋ってまだなかったな。


「レンレン!待っ――」


人の話は最後まで聞けよ。せっかくレンレンの部屋を用意しようと思ったのに。あ、まさか今足りないと思ってたものって。

レンレンって、なんであんなに背が低いんだろ。多分僕より二つぐらい年下のはずなのに。前までいた施設でちゃんと食事をしてなかったんだろうか。そんなこと今は気にしなくていいか。レンレンが自分から言わないことは嫌いなことだろうし。とりあえず、僕の部屋に行こう。


「あれ、レンレンどこにいるの。レンレーン!」


「叫ばなくても聞こえてる。確かにお前の部屋はきれいだったが、なんだあれは。変な趣味だな」


「あれって、AWOのやつだよ。変なのは、AWOを作った方の人たちだし」


いや、それよりレンレン、今どこにいた。そこキッチンだよね。何をしてたの。


「あ、そうだ。人参の皮はどうやってむくんだ。カレーを作ってやろうと思ったんだが、うまくできない」


人参をむくって、それはむいたうちに入るのか。ただ単に、下手くそに切っただけにしか思えないんだけど。それによく手を怪我せずに包丁を触れたな。まあまだ、石鹸で野菜を洗うようなやつよりましかもしれないけど。意外と石鹸で野菜を洗うやつっているんだってカナダに来る前に気付いた。学校の合宿で料理をするときに、石鹸で野菜を洗おうとしている奴がいて本当にいるんだって驚いた。


「人参やじゃがいもの皮はここにあるピーラーを使ったら簡単にむけるから。それと、勝手に包丁は触らないこと。料理したいなら、言ってくれればさせてあげるから」


「すまない、次からはそうする」


レンレンが、料理もしたことがないし、ゲームもテレビも漫画もパソコンも触ったことがないと言っていた。施設にいた時は何をしていたんだろう。他の方法で時間をつぶせるなら僕も見習いたいぐらいだけど。


「カケル、電話が鳴ってる」


「はいはい」


「Hello,this is Central children houses.」


「What's that?」


「I'm an institution for homeless or maltreated children.Do you understand?」


「Ok.But what can I do for you?」


「Do you know Zerozero?」


「Who is he or she?」


「He is little wild boy.」


「I don't know him.If you want to know true or false,you can my house.」


「Ok,thank you for make time.」


はあ、何事かと思った。引っ越してきて数日しかたたないのに、家に電話がかかってくるなんて。そういえば、レンレンって日本語話してたんだ。あんまり違和感なかったから全然気づかなかった。それよりも――


「レンレン、さっきの電話多分レンレンがいたところの施設の人からだと思うけど、来たらすぐに追い払うから」


「いや、来たら俺は帰る」


「なんで帰るの?別にここにいたっていいじゃん。初めて会った時より楽しそうだし」


「俺が今ここにいるのはいてはいけない理由がないからだ。だが、いてはいけないのなら俺は素直にいなくなる」


なんで、そういうところは素直にいなくなろうとするのかな。そういうのは頑固に拒否するものじゃないの。


「レンレン、それ本気で言ってる。それなら、僕もう生きている意味ない。レンレンがいなくなったら、また僕は一人になる。それなら死んだ方がましだ。レンレン、いてはいけない理由は何?僕はそんなこと言ったつもりないけど」


「施設から俺を引き取りに来るんだろ。それは、俺がここにいてはいけないからだ。それにカケル、お前は俺に勝手に包丁を触るなと言った」


「ああ、言ったよ。それがどうしたの」


「それは、勝手に行動するなと言うことだろ。それは俺が邪魔だからってことだろ」


え、そう捉えてたの?そういうことか。レンレンっていきなり変に考えるなあ。


「勝手に触るなというのは、レンレンに怪我してほしくなかったから。邪魔だなんて思ったこと一度もないし。それに、邪魔どころか、いて欲しいんだけど。お願い、ずっとここにいて」


「俺を引き取りに来たらどうするんだ。さすがにお前が何を言っても無理だろ」


「それは大丈夫。今から手を打つから」


一応、いくら養護施設だって言っても正式に引き取れば問題ない。それなら、親が正式に引き取ればいいだけの事だ。


「あ、母さん。レンレンのことなんだけど、養子で引き取ってくれない?うん、それは分かってる。だから、だよ。そう、そう。じゃあさ、条件付きで。面倒は全部見る。それと母さんが今一番欲しいものを買ってあげる。これでどう?うん、分かった...」


「どうだったんだ」


「レンレン、よく聞いて。正式に引き取ってもらえることになったよ!やったー!」


「よかったな。一つ聞きたいんだが、お前の母親が一番欲しがってるものは何だったんだ」


「僕が楽しそうにすること。親が一番望んでることってそういうものなのかな」


「さあ。でもお前の場合はそうなんだろうな」


お前の場合は、ね。確かにレンレンは施設育ちだから、親に愛されるとか、そういうのは分からないんだろうな。僕もそれほど愛されたことは無いはずだ。普段から親にはほったらかしにされてるし、親なんかよりもレンレンに何十倍も何百倍も愛されてると思う。


「Excuse me.This is Central children houses.Could I open the door?」


「Please your ID card.Can you speak Japanese?」


あ、本当に来たんだ。まさか来てもいいといったけど、本当に来るとは。


『レンレン、早く上で隠れて』


レンレン、うなずいたのはいいけど、本当にわかったんだろうか。


「こんな時間にすみません。一応念のために、建物内を調べさせてもらってもよろしいですか」


「それは、何をもって必要とお考えですか。必要と思えない限り家に入れることはできません」


「何か、見られてはいけないものでもあるのですか。それとも令状が欲しいと」


「もちろん令状があれば確実に入れますが、この家は僕のものではなく、親のものなので全権親に委任されてる。僕に令状もなしにあなたを入れることはできません。それと念のために言っておきますが、見られて困るものなどありません。あと、武力行使をするおつもりでしたらおやめください」


「そうか、令状を手配するのも悪くはないが、それでは時間がかかる。それに君は銃というものを知らないのか。さすがに銃は素手では対抗できないだろ」


「それはどうかな。銃と言っても銃弾の速度はたかが知れてる。その程度ならよけられる」


僕は昔からよける事だけは得意だ。車に引かれそうになっても、引かれることは無いし、暴力を振られても絶対にあたらない。僕は体力がないから、抵抗は出来ない。だから、出来るだけよけて抵抗する必要をなくそうと努力したら、こうなった。


「そうか、そこまで度胸があるのなら、今回は見逃してやる。この家にも近づかないでやろう」


母さん、まだレンレンの手続きは終わらないのか。早くしないと、またこんなのが家に来るかもしれない。それに、レンレンを引き取れなくなるかもしれないし。


「携帯なってますけど、出ないんですか」


「あ、ああ。言われなくても分かってる。なんだ、ああ、そうか。今すぐ帰る。よかったな、お前はゼロゼロと一緒に居れる。まあ今この家にいるかどうかは知らないが。そういうことだから、今後ここには近づかないことを約束しよう」


どういうことだ。母さんはさっきはああ言ってたはずなのに。まあいまはいいか。あとでそれは考えればいいか。


「それは、こちらとしても嬉しい。また会うことは無いだろうけど、次会うときは覚悟しといて」


はあ。いくら本当に銃弾をよけられると言ってもあの状態じゃ僕も緊張するし、普段あんな偉そうにすることもないから疲れた。それより、なんでレンレンの施設の人が銃を持ってるんだ。そう簡単に持てるはずないし、持つ権利があってもなんで銃が必要なんだろう。それより、レンレンに報告が先だ。


「レンレン、おーいレンレン!どこにいるんだ。もうさっきのやつは帰ったぞ」


レンレン、どこにいるの。二階に行っとけと言ったからいるはずなのに、どの部屋にもいない。どこ行ったんだ。どこに行ったんだよレンレン。

あ、これ、レンレンの字だ。この部屋レンレン用だけど、まだ教えてなかったはずなのに。どうしてこの部屋に机があるんだ。それに何この手紙。どういうつもりなんだよ。


『カケル、お前には世話になった。だが、これ以上迷惑はかけられない。だが、カケルが心配するだろうから、施設には戻らない。俺はお前に教えてもらったAWOで一人で生きていく。数日間だったが、感謝している』


あ、そうだ、レンレンに電話すればいいんだ。よかったレンレンと電話番号交換してて。


「レンレン、今どこにいるの。今すぐそっちに行くから」


「いや、来なくていい。それより勝手にいなくなって済まない。やっぱりお前に迷惑はかけられない」


「悪いと思ってるなら、直接謝れよ。それとも顔は会わしたくないとでもいうのか」


「そうだ。次お前とあったら、お前は俺のせいで死ぬかもしれない」


「レンレンと会わなくても、僕は死ぬよ。レンレンが隣にいないんだったら、生きてる意味ないって言っただろ。それを分かってても僕から離れるっていうつもり?」


「...そうだ。だが、AWOでなら会える。だから死なないでくれ」


「それがレンレンのお願いというなら、死ぬのはまだ先にする。でも、AWO内でもいいからレンレンと毎日会いたい。それが条件」


「分かった。もう切る」


「じゃあ、バイバイ...レンレン...」


なんで、勝手に思い込むの。レンレンと一緒にいてあんなに楽しいと思ったの初めてだったのに。僕が今すべきことは何なんだろう。レンレンを探し続けるか、AWOに引きこもるか。もしレンレンが今まだ僕のそばに居ればなんていったんだろう。わざわざレンレンが電話に出てくれたってことは、探してくれって事なんだろうか。もしそうじゃなくても、そうと思いたい。


「ただいま。どうしたのそんなに泣いて。もう泣かないんじゃなかったの」


「レンレン...僕に会ってくれない。僕何かレンレンが会いたくないと思うようなことをした?」


「そ、それは聞く相手が違うんじゃないかな。それと、泣くのはやめた方がいい。血液中の水分が減るだけだ。そんな無駄なことはするな。それとレンのことがそんなに大事なら、今どこにいるか想像つかないの。それでもレンの兄か」


そうだ、レンレンの居場所も分からないなんて、そんなのレンレンの友達じゃない。僕ならレンレンの居場所が分からないはずがない。なんとしても探し出さないと。


「母さん、今から、数日間家に帰らないけど、ちゃんと金は持ってるから。レンレンと会えたら、ここに帰ってくるから」


「早く行っておいで。ただし、期限は今月末まで。だから、あと二週間」


「ありがとう」


【】

何もよく考えずに家を飛び出して十日目。もうすぐ期限が迫ってる。警察署や病院、レンレンがいたところ以外の養護施設、他にもいろいろ周ったけど、誰もレンレンのことは知らなかった。何か居場所が分かる方法はないのか。それでも僕はレンレンと一緒に居てもいいのだろうか。レンレンの居場所も探せないのに、一緒にいる資格なんて最初からなかったんだ。


『レンレンより新着メールです』


あ、AWO起動してるの忘れてた。レンレンからメールか。なんだ、メールなんて...レンレンからだって。内容は何?


『なぜそこまでして俺を探そうとする。それに探すのなら、もっと楽な方法があるはずだ。お前と俺が持っている共通点を探せ』


どういう意味だ。なんで僕がレンレンを探してることを知ってるんだ。まさか、レンレンどこかで僕とすれ違ったんじゃ。レンレンと僕の共通点ってなんだ。性別以外何かあったっけ。あっ、まさかAWOのことか。でもAWOで何が分かるっていうんだ。

とりあえず、ここの店に入って、ゆっくり考えよう。焦ってもすぐに答えは見つからないし。


「いらっしゃい。見ない顔だね」


「え、ええ。遠くから来たので」


「どうしたの、何か探し物でも?」


「察しが良いですね」


「よく言われるわ。それで何を探してるの」


「友達です。一週間以上前に一緒住んでたんですけど、いなくなって」


こういう人がいるのは、僕にとってもありがたい。誰かに話せたら、かなり楽になるし。

僕はレンレンのことを一応プライバシーには気を付けていろいろ話した。出会った時のことや、レンレンの好きなこと、それにAWOを買ってあげたこと。


「レンくんはAWOを今も起動してるんだよね。それならプレイヤー検索で居場所分かるんじゃない。どうせフレンド登録か、電話番号交換してるでしょ」


そんな機能があったのか。僕でも知らなかった。共通点のAWOはそういう意味だったのか。でもそれなら、なんで僕にわざわざ探させたんだ。


「レンレンの居場所分かりました。ありがとうございます」


「今から行く気?危ないからやめときな。今日はここに泊まっていけばいいよ。もちろんタダで」


「そんな、迷惑かけられません」


「遠慮も大事かもしれないけど、人に甘えるのも大事だと思うよ」


「では、お言葉に甘えさせていただきます」


優しい人だ。泊めてくれただけでなく、食事まで作ってくれた。別にそこまでしてくれなくてもいいのに。しかもその食事は、刺身だった。僕の大好物だ。特にマグロは好きだ。用意してくれた部屋もベットがあって、普通の部屋と同じだった。きれいに掃除されてたし、ベットもふかふかで寝心地が良かった。一週間も連絡しなかったら、親も心配してるかな。まあ、あんな親だし、別にしなくてもいいかもしれないけど、一応連絡しとくか。


「母さん、一応心配してるかなって思ったから連絡した」


『やっと連絡してきたか。それでレンは見つかりそう?』


「居場所は分かったから、明日そこに行ってみる」


『それならよかった。それはいいとして、食事と寝場所は大丈夫なのか』


「優しい人がいて泊めてもらったから」


『がんばって。見つかることを願ってるから』


「じゃあ、自分で探せば。自分の子どもを探そうともしないのに、願ってくれる必要はない。それともレンレンが養子だから?養子だったら自分の子どもじゃないから心配しないよね。まあいいや。もう遅いからまた明日」


『お、おい』


普通ならこの程度で怒らないだろうけど、僕の場合はしょうがない。数年前に僕が迷子になったとき、僕の母親は数日間探し始めなかった。もちろん僕は同じ場所でずっと待つほど馬鹿じゃないから、交番に行って食事をもらったりいろいろお世話になった。たまたま、数日前に自転車の練習で何度も転んでけがをしたせいと、すぐに親が捜索願を出さなかったせいで、虐待じゃないかと疑われそうになった。それから、僕は母親を親とは思えなくなった。


-翌日-

結局また寝れなかったな。やっぱ一人じゃ寝れないのかな。おとといも一切寝てないからそろそろからだがもたないし。早くレンレンを探しに行かないと。眠気と寂しさで僕の体が持たなくなりそう。


「あ、起きたかい。朝ごはんは出来てるよ。レンくんの所まで送っていこうか。車で行ける所なら大丈夫だけど」


「いえ、近くに車を止めてるから、大丈夫です。あ、でも水だけもらえますか。40リットルほど」


「そんな量何に使うんだい」


「僕の車は水を燃料にしています。もうすぐ燃料が切れそうなので、それで水が欲しいんです」


「裏に水道があったから、それで入れていきな」


「ありがとうございます」


僕の車の燃料が水なのは、いろんなところで水があれば助かるからだ。それに水なら、川さえあれば、燃料には困らない。ただ、川がないところに来ると、雨が降らないと燃料の補給ができない。そこだけが、少し難点だ。

燃料も満タンだし、レンレンの所に行こう。いまレンレンはどこにいるんだ。あれ、この場所ってこの近くじゃん。いつの間に近くまできてたんだ。今すぐそこに行かないと。レンレンに会えるのが楽しみだ。


【アルバーダ州 郊外】

この辺田舎のくせに広いんだな。というより、広すぎて車線というもの自体見えないんだが。こんなところに住んでいる人なんているんだろうか。さっきレンレンがいたのは誰かの別荘のようだった。近くには車がギリギリ通れそうな道があったから、いけるところまでは車で行こう。こんな山奥に住むような人の理由って何だろう。確かに自然もあるし、静かで環境はいいかもしれないけど、近くに店もないし、不便にも思える。AWOのプレイヤー検索機能は大丈夫なのかな。こんなところにレンレンがいるのかな、いたとしてもなんでこんな不便なところに。

今朝泊まっていたところから三時間以上。レンレンを探し始めて十数日。もうさすがに疲れてきたけど、レンレンを見つけるまでは帰れない。このあたりか、レンレンまだいるかな。


「プレイヤー検索、プレイヤーネーム:レン」


一応、正常なら、さっきとほとんど位置は変わってない。ていうことは、この家にいるのか。さすが別荘って感じ。庭はないけど(周辺が庭なのと同じか)、建物は大きい。


「レンレン!ここに居るのは分かってる。顔を出せ!」


「うるさいぞ、誰だ君は。レンというのは男の子のことか」


「ああ、そうだ。僕はカケルだ。レンレンは僕の弟だ。ちゃんと法的にも認められてる」


「なんだ、カケルか。ここからじゃ遠くてよく見えなかったが、大きくなったな」


な、誰なんだ。カナダに住んでる人で知り合いはいないはずだ。


「だれ?」


「カケルの母親の姉だ。つまり叔母だ」


なるほど、そういうことか。なんで、人見知りのレンレンが他人と一緒に入れるのかと思えば、叔母だったのか。多分、叔母と母親は双子だからレンレンもすぐに慣れたんだろう。


「そんな寒い所でいるのもあれだから、早く家に入れ。車は、この下の、車庫にでも停めとけ」


【叔母宅】

なんで、カナダの家はどこでもとは言わないけど、大きいんだ。今まで、狭い住宅地で過ごしてた分、すごくうらやましい。


「カケル、どうしてレンの居場所が分かったんだ。しばらくあちこち連れまわしてたから簡単には分からないはずだが」


「レンレンに買ってあげたAWOの位置探索で分かった。それより、レンレンに食事は与えてたの。それと寝る所も」


「私を誰だと思ってる。妹とは違うんだから。食事はちゃんとあげてる。本当よく食うやつで困ってる。ただ、寝る所は与えてるんだが、布団で寝ないんだ。覚えてるか、カケルが子供の時に遊んでた犬のことを。あいつらと一緒に寝てる」


「犬っていったって狼同然でしょ。レンレンはよく襲われないな」


「襲われそうになるどころか、犬どもから懐いていったし、昼間はちゃんと犬とどこかで遊んでる。まあ、カケルあとは面倒頼んだ」


「え、なんでそんな簡単に面倒任せるの。こういうときって、なにか理由があるよね」


「理由って何が。そんなのあるわけないじゃない。」


「レンがしばらくカケルと離れてたおかげで、二日目ぐらいから、犬みたいになった。風呂には排卵し、布団で寝ないし。カケルと一緒にいた時は、そんな事なかったんだろ」


そういうことか。確かに、それでは面倒を見るのも大変だ。僕といるときはいちどだって、そんなことなかったのに。なにかそうなる下人がここにあるんだろうか。僕の家にいるときは、普通に風呂にも入ってるたし、寝るときだって、僕と一緒に寝てた。落ち論布団でだ。レンレンのベッドを用意する時間がなかったし、床で寝させるわけにもいかない。そこで思いついたのが、僕のベッドで一緒に寝る事だった。僕のベッドはダブルベッドだから二人で寝ても狭くない。だから、レンレンと一緒に寝ていた。


「どうせ、前もってレンレンにAWOでメールでも送って呼びだしたんでしょ。あの養護施設の人も偽物でしょ」


「いや、行くように頼んだのは私だ。一応、レンレンとカケルが一緒に居れる環境かどうか知りたかったんだがな。まさか、カケルが追い返すとは思っていなかったが」


「それじゃあさ、もう時間もないし、レンレン連れて帰ってもいい?」


「ああ、別に構わないが、ついでにこの犬どもも連れて行ってくれ。すっかりレンに懐いてしまって、引きはがせそうにない」


「犬って言ったって、実際狼だろ。それを僕の家で飼えというのか。一応、ここほど田舎じゃないけど、十分住宅地のど真ん中なんだが」


「それじゃあ、カケルの愛しのレンは連れていけないな。どうせ、レンだけ連れて行っても、犬どもは追いかけてくるだろうし」


「分かったよ。レンレンを連れていけるなら、他に何が付いて来てもいいから」


「そうか。じゃあ、レンの食事代と、買い物代を払ってくれるか。こんなに小さいくせによく食べるせいで、あっという間に冷蔵庫と冷凍庫が空になったんだぞ。それに、なんでレンが欲しいものは少ないくせに一つ一つは高いものばっかなんだ。電子辞書に、車に、パソコン、自動掃除機、それに家だ。さすがに家はローン組まないと私でも買えなかった。で、そこでだ。ついでにそのローンも払ってくれ。それでいいな」


レンレン、なんでそんなもんまで欲しがるんだ。電子辞書とかパソコンはまだわかるけど、車と家はさすがに無理があるだろ。それに、なんで車を現金で買えるほど金を持ってるんだ。多分、その車は僕が車を止めたところに泊まってた車だろうけど、あれ、何十万ドルとかする高級車じゃなかったっけ。僕の車の数倍してるし。


「カケル、俺のせいで迷惑をかけてすまない。金を貯めたらいつか返す」


「いいよ。レンレンの欲しいものはどうせ僕があげるつもりだったし。そのことは気にしないで。で、僕に請求する金額は全額AWPで払えるんだろうな」


「それはもちろん。私もAWPが使えない店では買い物はしないし、今時使えない店の方が珍しい。だが、いくらお前でも、この金額は無理があるだろ」


「いや、それがギリギリできるんだ。レンレンの居場所を見つけてからここに来るまで、出来るだけ稼いできたから」


「ほんと、どうやったらそんなに稼げるんだ。教えてほしいぐらいだな」


それはむりだ。教えたところでどうせできないし。だって、効率が異常にいいのは、僕のAWOのスキルが関係しているからだ。各AWOごとに何かしらのスキルがあるのだが、そのスキルの一部にはチートに近いレベルのものある。例えば、AWO内で通常時で攻撃力五倍とか、HP三倍とか。あくまで通常時なのでそこに追加でアイテムでまだ上げることが出来る。ちなみに、僕のは全然有名じゃないけど、一応、チートに近いかもしれない。バトルでは一切役に立たないけど、アイテムを買うときにはだいぶ楽だ。獲得金額が約二倍から最大二十倍まで上がる。さらに二倍にできるアイテムを使えば四十倍、武装によってはさらに二倍になり、僕が知っている限りでは最大八十倍にまでなる。ちなみに、僕よりランキングが上の人は、こんなスキル補正じゃなくて、大型魔獣をずっとソロで倒しているらしいけど。多分、攻撃力やHPなどのパラメーターがいくら低くて、スキル補正で上げるよりは、普通に高級武装であげる方が楽なところがいろいろある。まず、スキル補正では見た目には一切出ない。でも、高級装備とかなら見た目で分かるし、それでパーティーを組みたがる人も少なくない。もちろんARだから、近所の人とか、一時的にだけ、と限定されてしまうが。ただ、僕は金はあるけど、装備強化も何も装備には手を付けていない。一応、初期装備のままだ。初期装備で倒せない魔獣を倒す機会が少ないのと、パーティーを組みたくないから、装備は絶対に上級クラスにはしない。


「そうそう、母さんにここに住んで良いって許可貰ったから。そういうことだからしばらくここにレンレンと一緒に住むけどいい」


「別にだめだとは言わないが、こんなところに住んでたら学校もないし、店も遠くて不便だぞ」


「でも、レンレンがいるから大丈夫。どうせ学校に行っても時間の無駄だし、彩が教えてくれれば問題ないし」


「彩は俺に勉強を教えてるからお前に教えるほどの時間はない。それにお前は自分の家に帰れ」


「二人とも家にいていいから。どうせカケルの母さんといても疲れるだけでしょ」


「彩がそういうなら、仕方ない」


レンレンが彩と一緒にいてどんなことをしてたのか気になったけど、意外と普通だった。ベッドで寝ずに犬と一緒に寝てるというから心配したけど、今はちゃんと僕と一緒に寝てくれる。昼間は犬と一緒に森の中を走り回って、夜は彩に勉強を教わっていた。もちろん僕も昼間はレンレンと一緒に走り回って、夜は彩にレンレンと一緒に勉強を教わった。確かにレンレンと違って賢くないから、レンレンに追いつくのにはだいぶ時間がかかりそうだ。


―二年後―


「レンレン、久々に帰ろう。一年ぶりにレンレンに食事を作りたいし。」


「それに食事くらい自分で作れる」


「じゃがいもの皮もむけないし、野菜も切れなのに?」


「うるさい。できると俺でも思えばできる」


「ほんとカケルとレンは仲がいいな。そうやって言い合いができるのはうらやましいな。ああ、そうだ。カケルの車の水は補充しといたぞ。ちゃんとカケルの好きな奴だ。安全運転で帰れよ。AIが無かったから、カケルの運転は相当荒かっただろ」


「ああ、でもカケルの運転なら絶対に事故らない」


「ありがとう、レンレン。褒めてくれて」


「くっつくな。それとほめてない」


ほんと不愛想なところは変わらないね。まさか、不愛想なのは僕に対してだけだったりして。そうだ、道混んでたりでたりしたら面倒臭いから、ここから僕の家までの道にドローンを飛ばしとこう。レンレンが車を持ったせいで横にレンレンがいなくて寂しいな。

あれ、まさかレンレンわざわざ車の色、白にしてくれたのかな。そんなわけがないけど、そうだったら嬉しいな。レンレンの事だから、そんなわけがないけど。あ、ドローン買ってきた。さほど周辺は混んでないな。まあ、平日だし、昼間だし。あれ、僕の家が映らない。どうなってるんだ。性能が悪いからって、さすがに映らないわけがない。映らなくても人一人程度だ。


「どうしたカケル。まだ帰らないのか」


「いや、これを見てどう思う。何でか、僕の家が映らないんだけど」


「いや、映らないんじゃない。家が消えてるんだ。ほら、ここに焦げた跡がある。もしかしたら、火事で焼失したのかもな」


そんなことがあるか。引っ越してきてまだ、数週間しかたってないのに。運が悪いと言えば、確かにそうだが、これは偶然なのか。


「レンレン、あとギリースも。今すぐ、僕の家に戻るから、一緒について来て。レンレン、速度何キロまで出せる」


ギリースというのは、叔母の名前だ。一応、アメリカ生まれのアメリカ育ちだから、英語名だ。


「一応、百キロまでだ。それ以上は、さすがにまだ無理だ」


「じゃあ、今日中に戻るから、絶対に付いて来て」


「なぜ、私が行かないといけない。これはあくまで二人の問題だろ」


「なぜって、一応妹が巻き込まれてるかもしれないんだぞ。僕はどうなっても別に気にしないけど、ギリースは違うだろ」


「仕方がないな。今回だけだ。これでも私は忙しんだ。さっさと済ませて帰って来るぞ」


【僕の家跡】

本当に焼け消えたようだ。地面に焼けた跡はあるけど、建物は一切ない。


「Excuse me,this space is mine.What happened?」


「あ、日本語話せますから大丈夫です。えっと、カケルさんですね」


「ええ、そうです。見た感じで言うと、火事ですね。出火元はストーブですか」


「いえ、庭で落ち葉等を焼いていたことによる火事です。遺体が二人見つかったので――」


「そうですか。レンレン!家持ってたよね、それどこにあるの」


「車では行けない。正確に言うと、車だけではいけない。前にお前が住んでいたところの近くだからな」


ってことは、日本にあるのか。確かに海を渡るのは車じゃ無理だな。だが、なぜわざわざ日本に家をかったんだ。レンレンの地元のカナダの方が住みやすいだろうし、それにギリースの家でも問題ないはずだ。ギリースに買わせるほどの理由は何だったんだろう。


「ギリース、船の予約を取るってくれ。それと、レンレンの運転免許を国際免許にしてくれ」


「もうしてある。ここに来るまでに予約しといた。それにレンの運転免許はもともと国際免許だ」


まあ、それなら話は早いが、ギリースは大丈夫なんだろうか。僕からすれは母は、ただの同じ家に住む人だけど、ギリースにとってはたった一人の妹だ。妹というのはいなくなれば寂しくなるものじゃないのか。僕には兄弟という物がないからよく分からないけど、レンレンがいなくなった時ほどではないにせよ、それなりには心に傷を負うものなはずだ。


「あの、遺体の身元確認をしていただきたいのですが」


「家があったところの敷地は僕が今は所有権を持ってる。遺体の確認や、その他事後処理は任せる。弁護士ならその程度できるだろ。僕はレンレンとしばらく日本で暮らす」


正直言って、僕は逃げたいのかもしれない。一応親はいたけど、親と思ってはいなかった。が、親が死んだことを認めたくない僕がどこかにいる。何を言っても実の親だし、少しは悲しいと思ってる。もちろん、見つかった遺体が親とは限らないけど、多分それ以外の可能性はないだろう。一応、遺体は見たけれど、焼死体だからあんまりよく分からなかった。親に違いないだろうけど、それが分かったところで僕は少したりとも涙は出ないだろう。


【港】

ここに来るのは二週間ぶりだ。こんなにすぐに来るとは思ってなかった。一応予定では、日本に戻るのは、二年後だった。まあ、レンレンがいればどこに居ても一緒だけど。


「あ、ここまで来たのはよかったけど、レンレン、パスポート持ってる」


「大丈夫だ。彩が何度かアメリカに連れて行ってくれた時のがある」


うわ、いいな。親のせいで何度も海外に行かされたけど、アメリカはいたことがなかったな。カナダはもちろん、イギリス、フランス、スイス、中国とかは行ったことあるのに。よし、日本での生活が落ち着いたら、レンレンとアメリカに観光に行こう。それで、自由の女神とかホワイトハウスとか行ってみたい。ちなみに、彩というのはギリースの日本名だ。


「えっと、レンレンどの船に乗ればいいのか分かる。見た目同じだからわかんないんだけど」


「何を言ってる。俺とカケルが乗るのは、あっちだ」


え、いやあれってどう見ても空母だよね。あれに乗るわけないでしょ。多分あれは、速力50ノット、飛行機搭載可能数は80かな。50ノットってことは、1ノットで1.851キロだから大体92.592キロくらいだ。90キロも出れば随分早いと思うが、一応世界最速は81ノット、150キロだ。ちなみに、数十年前までは、四十ノット出れば異常な速さだったらしいけど、新型五十ノットはもちろん百ノット以上出せるようになった。ただ、そんなに速度を出せる必要がどこにあるのかあんまりよく分からないが。多分、飛行機は搭載できるだろうけど、搭載してないようだから、多分就役は終わってるんだろう。でも、こんなのに乗るのは違和感がある。


「レンレン、なんで空母で日本に行くの。普通の客船でいいじゃん」


「車を乗せれる船だから問題ない。それに、一応あの客船より速い。お前の家を焼き消したやつが誰か分からないのに、カケルが安全とは言えないだろ。一緒にいる俺も安全とは言えないが」


「レンレン、もしかしてそんなに僕のこと心配して」


「バカじゃないのか。俺が他人を心配するわけないだろ」


「ふーん、じゃあ他人じゃ無かったら心配するんだ」


「お前は何があっても他人だ。これがあってもな」


「あ、これ戸籍謄本か。ってあれ、なんでレンレン僕の弟になってんの」


レンレンが彩の所に行く前に母さんに頼んだら無理だって言われたはずなのに。あの時はレンレンには隠して嘘を言ったけど。何があってもって、そんなに他人になりたいのに、なんでこんなに一緒についてくるのかな。僕的にはうれしいけど、レンレンが何を考えてるのかいつもよく分からない。


「すいません、カケル様とレン様でしょうか」


「はいそうですが、何の用でしょう」


「私は海軍中央艦隊旗艦の艦長のメロディアナと申します。お二人を日本にお送りするよう頼まれております」


「...カケル...あいつは大佐だ...」


いつも強気なレンレンなのに、どうしたんだ。なんで僕の後ろに隠れる。レンレンに限ってこの人を危険視してるわけじゃないだろうけど、怖がってるのかな。


「レンレン、もしかして 人見知りだったりする?」


「人見知りというのはよく分からないが、知らない人は怖い。特にお前みたいな優しいやつは」


あれ、もしかして僕も怖がられてるの。まあ、こんなレンレンも可愛いから好きだけど。


「メロディアナ大佐、いくつか質問をいいですか」


「ええ、構いませんが、出航時間まで時間がありますので、艦内でお食事でも召し上がりながらにしましょう。車は私共の方で積載しておきますので」


【艦内 食堂】

さっき気付いたけど、日本語話せるんだ。なんか、海外にいるはずなのに変な感じ。そういえば、空母だから、中に航空機があるのかと思ってたら、そのスペースは居住区のような状態になってた。さすがに中は車では移動できないけど、多分僕がカナダで住んでた地区よりも充実してる気がする。


「何を食べますか?和食に洋食、その他いろいろありますが」


「レンレン、何食べる?僕同じのでいいけど」


「パスタでいいのか。俺はパスタが食いたいが」


「もちろんレンレンが好きなものは僕が好きなものだから大丈夫。ってことなんでパスタ二つでお願いします。それと、敬語使うのやめてもらえますか。大佐に敬語を使われるとぼくとしても困ります」


「そうか。ギリースにいろいろとくぎを刺されたんだ。カケルに許可をもらったということでいいか」


「助かります。それで、料金はいくらですか」


「あ、いや、おごりだ。そういえば、二人とも身分証を持ってなかったな。パスタができるまで待っててくれ」


別にこの艦に乗ってるのは数日間だし、身分証なんてわざわざ要らないんだけどな。


「レンレン、そろそろ背中に引っ付くのやめてくれるかな。少し重いんだけど」


「ああ、よくお前は知らないやつと普通に会話ができるな。怖いとか、警戒とかないのか」


「そんなのいちいちしてたら、誰とも話せないじゃん。それにレンレンも僕と初めて会った時普通に話しかけてくれてじゃん」


「それは、お前があまりにもしつこいからだ。今も相変わらずしつこいが」


「レンレンも相変わらず不愛想。もっと可愛くすればいいのに。ほら、髪型もこうやって、ピン止め使ったりしてさ」


「何をする。髪型を変えようとするな」


「かわいいんだからいいじゃない。ほら、嫌がらないの」


「お待たせ。はいこれ身分証。『海軍特別少佐』、これが二人の身分」


「海軍特別少佐って言っても、一応少佐には変わりないですよね。レンレンならまだしも僕にそんな身分合わないです」


「それじゃあ、中佐か大佐が良かった?無理ではないけど、ちょっと手続きが面倒なんだよね」


「そうじゃなくて、少尉でもよかったんですけど、と言いたいんです」


「それは無理だ。日本に着くまでの間は二人にはここで働いてもらうんだから。もちろん有給で」


「働くのはいいけど、それは僕たちにできる事なのか」


あ、もうめんどくさくなって敬語使うの忘れてた。敬語を使われるのも嫌いだけど使うのも嫌いなんだよな。まあ、レンレンは敬語を一切使わないし別に問題ないか。


「それはもちろん。カケルには艦長補佐、レンには副長を任せる。これは決定事項だから変更できない。ちなみに元の副長は今寝込んでてな。代役を頼みたいんだ。操縦室には少尉以上しか入れないんだ」


「できると思って言ってるんだろうけど、空母に関してはもちろん、他も何も知らないができるのか」


「分からないことは全部教えてあげるから。な、レンはどう?」


「俺はカケルと一緒にいれるならする」


「どうせすることもないし、一度くらいしてみてもいいと思ったし」


「なら、五分で食事をとって。そのあと、各機関に連絡事項を伝達。修理が必要な個所を報告」


もう、仕事を与えられるのか。僕は艦長補佐だからいいけど、レンレンは副長っていうのが心配だ。それがストレスにならなければいいんだけど。


【操縦室】

「各機関に連絡します。本日より就任しました、副長代理のレンです。機関室、故障や異常はありませんか」


『こちら機関室。特に異常ないよ。機関室室長アゲハだよ。よろしく』


「甲板前区画、問題ありませんか」


『前区画、問題なし。前区画管理者ゼンです。前区画の前とゼンは関係ないです。よろしくお願いします』


「甲板後区画、状況報告お願いします」


『異常ない』


珍しく、レンレンがよくしゃべるなあ。どうしたんだろ、こういうのってしたことあったりするのかな。


「レンレン、なんでそんなにやる気出てるの。それに敬語話せたんだ」


「彩に教えてもらった。難しいから滅多に使わない」


彩は一体レンレンといるときに何を教えたんだろう。敬語なんか教えるんだったら、もう少し愛想よくしといて欲しかったな。確かに敬語も大事だけど。


「前方1000キロに艦影あり。60ノットで接近」


「魚雷発射音8、主砲発砲音4」


「発射音聞こえるのか。バカなのに意外と役に立つんだな」


「レンレン、バカは余計。僕、耳だけはいいか――右舷に原子力潜水艦2。魚雷発射音8」


「なんだと、この艦には一切攻撃装備がないんだぞ」


「沈むのか」


「いや、魚雷数発で沈むような艦ではない」


「それも時間の問題だろ」


確かにどんな艦であっても、いつかは沈む。この際、AWPで戦艦か重巡洋艦、軽巡洋艦でもいいから買うのも策だ。ただ、この前のレンレンの家のローンを払ったから、財産がもうほとんどない。ここで働くことにしたのも、財産稼ぎが目的でもある。ローンを払うことがなかったとしても、さすがに重巡洋艦でも軽巡洋艦でも買えなかっただろうけど。AWPは一応AWO用の通貨だけど、使いすぎて無くなった人のために、AWMという借金のようなものもある。普段の稼ぎ具合なら、AWMを借りれなくはないけど、利子高すぎるから僕は死にそうにでもならない限り使うつもりはない。


「どうした、いつものカケルなら何か策が思いついてるんじゃないのか。そうじゃなかったら、ただの役立たずのバカなだけだ」


「失礼な、策は思いついてるよ。ただ、費用が足りないんだよ」


「やっぱりただのバカだな。AWMを使いたくないのは分かってる。それなら、メロディアナ大佐に相談ればいい。費用を全額は無理だろうが、ある程度は出してくれるはずだ」


「いい事言うじゃない。レンレンやっぱり賢い」


「くっつくな、触るな、近づくな」


もう、ほめてるのにどうしてそんなに不愛想なの。くっつくなって言われるのはまだ分かるけど、触るな近づくなっていうのはさすがにひどくない?


「メロディアナ大佐、今最善の策として、軽巡洋艦以上の艦船をこちらに最速でこちらに向かわせます。ただ、その艦を購入する必要です。その費用を全額とは言いませんが、四割ほど負担していただきたいのですが」


「いや、六割を負担させてくれ。それが条件だ」


六割も負担してもらったらさすがに悪い。確かにそれだけ負担してくれれば僕もうれしいけど、あんまり他人に金を出されるのは好きじゃない。


「五割でいい。それ以上出されてもこっちが困る」


「そうか、では五割だけだそう。費用に関しては問題ないとして、その艦はどこから来るんだ」


「日本だ。装備に関しても問題ない」


「レンレン、なんで知ってるの。それにその艦はさすがに...」


「彩が教えてくれた。今ここをやり過ごすなら、あの艦しかない」


「えっと、その艦って何なの。軽巡、重巡?それとも駆逐?」


「あ、えっと、一応戦艦」


「金剛型戦艦コンゴウだ。最大速力90ノット。搭載装備は主砲36㎝砲8、副砲15㎝砲16、魚雷発射管8、12.7㎝連装高角砲8、機銃96、水上偵察機3機、カタパルト1」


『コンゴウって確か、20世紀の第二次世界大戦に出てきたやつだよね。それと一緒だったりする?』


「そうです、アゲハさん。ちなみに、速力は当時の三倍です」


「なんでそんな戦艦を持ってるわけ。今時戦艦も珍しいと思うけど」


確かに、最近は滅多に戦艦を見なくなった。空母なら、それなりにいるけど、大半は宇宙に艦隊を持っていたりするから、それを地上までおろしてくるだけだったりもする。


「それは、彩に聞いてほしい。軍にいた時に何かしてたんだと思うけど」


「コンゴウの到着時間はいつ」


「あと三十分くらいだ。ちょうど近くで演習を行ってたらしい」


「それじゃあ、それまで時間を稼ぎますか。機関、前進全速」


なんで、そのまま敵艦の方に突っ込むの?確かにそれで勝つ方法は無い訳じゃないけど、今のこの艦でするのは危険だ。


「レンレン、コンゴウに通達。射程圏内に入り次第、全砲門射撃開始。全弾打ち尽くしても構わない」


「分かった。それと、さっき向こうから連絡があった。戦闘終了次第、紀伊水道付近で走行不能になっている高雄型重巡マヤを救出しろと」


「他の艦を回せばいいのに」


「他の艦の演習場より、ここの方が近いからだと言っていた。それに、勝つと信じているようだ」


確かに、勝つことを前提に話が進んでるから、何か勝てると思われてるんだろうな。


「敵艦、主砲発砲。右舷に着弾します」


「機関停止、対ミサイル迎撃用ミサイルはやぶさ発射」


なんだ、そんなものいまだにあったのか。半世紀前に姿を消した迎撃ミサイルで、今では迎撃できるミサイルがないくらいミサイル技術が進歩したため、見ることはめったにできない。確かに、主砲弾程度なら、まだ迎撃は出来る。もともと、主砲弾迎撃用だったっていう噂もあるくらいだし。


「後方に戦艦1。距離6000。80ノットで接近中」


い、いつの間に。いつもなら、距離10000で気付けるのに。そんなにエンジン音が静かな艦ってあったっけ。


『マジェスティック、全速後退』


「後方の戦艦、主砲発砲、魚雷進水音100。高角砲弾50、100、200、400、まだ増えてます」


「全乗組員、耐衝撃姿勢。とりあえず、全速後退」


誰だ、そんなにもバカ並みに撃ってくる戦艦は。って、あれ。この音って確か...


「まさか、コンゴウもう来たのか」


『ああ、誰だと思ってた。ちなみにだが、お前の右にいた潜水艦はとっくに沈めたぞ』


「そういうことか。納得した」


「レン、何が納得したの」


「カケルは基本的にはある程度遠距離でも音を判別できる。でも、コンゴウだけはなかなか気付けない。カケルに気付かれず近づける唯一の艦だ」


『後から追うから、先にマヤの所に行け。マヤがエンジン故障で動けない。他の艦は全部演習中だ』


「コンゴウ、あとでレンレンとお茶会しよう」


『なら、アッサムを用意しといてくれ』


あの艦ならコンゴウ一隻で沈められるはずだ。攻撃を受けてもというより、全弾よけれるし、コンゴウの一弾は威力が強い。それにあの艦には特別な武装がある。


【紀伊水道】

ここは大阪湾に入るときに通る場所である。紀伊山地や四国山地が見える。もちろん、そこには高雄型重巡洋艦マヤがいた。エンジンが故障で動けなくなっている。


「なんでこんなところでエンジンとまるの。コンゴウはマジェスティックのとこに行っちゃうし、ヒエイとハルナとキリシマはアメリカに行ってるし、タカオたちは南の方に行くし。誰か来ないかな」


『高雄型重巡洋艦マヤだな。エンジンを修理する。他に損傷はないな』


「う、うん。で、その声だれ」


『マジェスティック級航空母艦マジェスティック。コンゴウに頼まれた』


「そう。こっちに来て修理できるならしてほしいんだけど」


「さすがに、レンレンでもそれは――」


マヤとマジェスティックの距離が近づけれても50メートルが限界だ。さすがに、レンレンでもマヤには届かない。それにほかの方法も現時点ではない。


「そうか。こんなエンジンでよくここまで動けたな。普通すぐにとまると思うが」


「これ以外のやつが無いんだって。だからこれでここまで持たして、やっと止まった。本当に修理できる」


「ああ。五分で終わらす」


あれ、こいつどうやってこっちに来たんだ。マジェスティックからこっちに飛び移れるわけないし、仮にできたとしてもこの部屋に来るには早すぎる。


『レンレン、勝手に行かないでよ。行くときは言ってよ』


「カケルか。お前に行ったら、絶対に行かさないだろ」


『確かにそうだけど。』


そうなんだけど、出来れば僕も一緒に行きたかったな。レンレンと一緒に居たいし、それに重巡洋艦のエンジンも見てみたかった。二次大戦時の高雄型もすごかったけど、今のも十分すごい。


「マヤ、修理できた。応急処置だから、まず完全に修理してからにした方が良い」


「大丈夫。あとは戻るだけだから」


『れん!まだ?』


「叫ぶな。五分で修理するって言っただろ。まだ三分しかたってないんだからあと二分くらい待て」


「コンゴウから聞いてた通り、仲いいんだね。同級生、それとも幼馴染」


「ただの知り合いだ。それ以外の何でもない」


「そう。それはいいとして、この辺で修理できるとこ、横須賀にしかないんだけど、どうする」


「じゃあ、マジェスティックで引っ張っていけばいいんじゃない。レンレン、それくらいできるよね」


「ああ。それより、横須賀に行くのなら、コンゴウに伝えとく」


そっか。コンゴウはマジェスティックとマヤは紀伊水道付近にいると思ってるはずだし。


【横須賀港】

さすが横須賀なだけあって、他の艦船が沢山いる。駆逐艦に軽巡洋艦、重巡洋艦、戦艦、航空母艦、それに潜水艦もいる。でも、さすがにヤマトとムサシはいないか。いたら中を見たかったんだけど。

横須賀は一応国内で一番豪華な海港になっている。入港審査が厳しいし、審査後は自動案内で入港させられる。


「メロディアナ、港内でうろうろしてるから必要なときは呼んで。レンレンも好きなところに行っていいから」


「好きなところと言われても、どこに行けばいいのか分からない。俺はお前について行く」


好きなようにしてくれればいいけど。僕に付いて来ても楽しいことは何もないと思うけど。


「あれ、マヤ。他に艦に乗ってる人はいないの」


「意味が分からないんだけど」


「マジェスティックみたいに、艦長と機関室長とか居ないのって事」


「なんでそんなのいるの。一人でできるから必要ない」


「どうやってやるの。頑張って自分の艦を買うつもりだから、方法を教えて。マヤと同じ重巡洋艦のつもりだから今のうちにできるようになってても損はないでしょ」


「いいけど、カケルにできるかな。技量と体力が必要なんだけど」


「僕にできないことは無い。そうだよね、レンレン」


「絶対とは言えないが、カケルにはできる」


よかった。レンレンに聞いたのはいいけど、レンレンのことだからできるわけがないとか言うと思った。


「それじゃ、AWOを起動して。その方が説明しやすいし」


「もう起動してるよ」


「カケルもそっち側の人か。確かにっ便利だけどあんまりそれしない方がいいよ。毎月の通信料高いし、それに危険だし」


「危険って何が」


「AWOの裏に隠された秘密を知ってる」


「それ、デマじゃないの。たしか、AWOに語感が乗っ取られるとか言うやつでしょ。そんなことできるわけないんじゃ」


「そうでもないよ。二十年前にAWOと違ってARじゃないけど、VRで似たようなのがおこったから。あの時は犠牲者が出たみたいだけど」


「そんなことARで出来るの。ARだったら 語感が支配されても危険はある?」


「道を歩いてるときだったら、車道が歩道に見えたり、信号が赤なのに緑に見えたりとか」


「それは大丈夫。僕は音で大体は分かるから」


「何を言ったところで決めるのはカケルだから。それより機関の動かし方から教えるから」


―二週間後―

あれから二週間、僕は毎日ほとんど寝ずに艦の動かし方を教わった。どうせ、重巡洋艦でも軽巡洋艦でも買うのは当分先だとは思うけど、一応資格が取れるからだけじゃないけど損はないから頑張っている。もちろん、レンレンはいつも僕の隣にいた。別に僕がレンレンに居てほしいって言ったわけじゃないけど、ずっといた。レンレンは艦の動かし方には一切興味がないみたいで、隣にはいるけどずっとレンレンのペットを撫でていた。

レンレンのペットはAWO内で買えるんだけど、僕は買った後の餌代やその他いろいろお金がかかるから僕は飼わなかった。それにお金に余裕があっても僕はペットをちゃんと世話できる自信がなかった。


「じゃあ、今日は大阪湾まで処女航海しよう。もちろん、カケルの艦は用意してあるから」


「本当?じゃあ、今すぐ行こう。でも、さすがにレンレンの艦はないよね」


「俺の艦はある。お前が動かし方を教わってる間に艦を一隻造った。計算上、コンゴウよりも早い100ノットは出る。それに、魚雷は千発以上、コンゴウ型戦艦の主砲弾は100発以上被弾しても沈まない。大和型戦艦には劣るが十分な不沈艦だ」


「僕の艦に何かあったらレンレレンが助けてね」


「お前は助けない。俺に得があれば別だが」


「カケルの艦はあれだよ。レンレンと同じ白い艦のやつ」


あの艦どこかで見たのとよく似てる気がするんだけど、どこで見たのかな。それより、あれって重巡洋艦でも軽巡洋艦でもなくて、どう見ても戦艦だよね。なんで、僕のまで戦艦なの。重巡洋艦と同じように動かせるのかな。


「この艦は一応新造艦だよ。えっと、ヤマト型戦艦より少し性能を落としてあるようなやつだから。それと、重巡や軽巡と同じように動かせるから。戦艦は副砲と機銃があるけど、それも使い方は教えたから大丈夫でしょ。他に何か質問はある」


「なんで僕に戦艦をくれるの。それとこの艦型の一番艦はどこにいるの」


「なんでか。カケルとレンは艦船の改造はしたことないよね。それなのに、マジェスティックをコンゴウを呼んで助けたり、マヤのエンジンを修理したり。そのおかげでメロディアナが戦艦を用意してくれたの。ちなみにレンの艦とは見た目以外は同じなんだけど、一応レンレンのがレン型戦艦で、カケルのがカケル型戦艦ってなってるよ。レン型はいいとして、カケル型は不細工だけど気にしないでね。そういうことだから、一番艦はカケルとレンの艦だから。」


マヤによれば、ヤマト型は完全な浮沈艦で大量生産すると危険だから今はまだ二隻しかいないらしい。でも、レン型とカケル型はその他の戦艦を差し置いて、ヤマト型に一番近い艦らしい。


「レンレンは、その戦艦を動かせるの」


「カケルのと仕組みは違うが、動かせる」


仕組みが違うってどうやって動かしてるんだろう。僕のは、すべてを遠隔操作にしてるだけで、さほどややこしい事ではない。でもレンレンのはそんな単純なことじゃなさそうだ。レンレンが賢いのもあるけれど、AWOを最近始めたはずなのに、僕と同じくらいの財産を持っている。レンレンの場合は多分ユニークスキルだろうけど、いくら僕がレンレンにお金を投資したからと言っても僕と同じくらい財産を持てるスキルは何なんだろう。


「大阪港に着いたら、寄りたいところがあるから一緒に来てくれない。別に嫌ならいいけど」


「誰が嫌と言った。俺はお前について行く。彩との約束だからな」


確かその約束って、レンが彩に頼んで約束化したやつじゃなかったけ。付いて来てくれるならどんな形でもいいんだけど。


「どこに行くんだ。確かあそこはお前が昔住んでた所のはずだったと思うが、懐かしくなったのか」


「それもあるけど、レンレン、学校はどうするの。もともと賢いからある程度は大丈夫だけど、僕はレンレンと違って賢くないから学校で勉強しないといけない。レンレンは、僕と一緒にいないといけないから、僕が学校にいる間は学校に居ないといけない。それなら一緒に授業を受ける方が良いでしょ。もちろん僕が頑張ってレンレンが困らない程度まで飛び級するから」


「仕方がない。それでその学校はどこにあるの」


「それは艦を出発させてから」


―二時間後―

なんか、こういうのって違和感あるな。普通なら戦艦とかは何十人規模で動かしているはずだ。横須賀に来るまで乗っていたマジェスティックもそうだった。それなのに、僕の艦は一人で動かせるのがどうしても不思議で違和感しかない。


「そろそろ、教えろ。俺とカケルが行く学校はどこにあるんだ」


「彩が住んでたところほどじゃないけど、田舎だよ。近くを通ってる電車も単線だし、そもそも学校があるところが山の中だし」


「なんでそんなところの学校に行くんだ」


「それは、彩があそこの元生徒会長だからだよ。それに、山の中ならレンレンの好きな狼とかに会えるかもしれないし。もう一つ理由があるんだけど、それは学校についてから」


「彩は一体どんな学校生活を送っていたんだ。二年近くカケルともだが、一緒に居ても全然分からなかった。大体なんで今弁護士をしてるのかも分からないし」


「それは僕も一緒。普段から何を考えてるのか分からないけど、天才なのは確かだ。弁護士をしてるけど、あれでも一応元は理系だったからね。弁護士の前は物理学者だったって言ってたような気がするけど」


「カケル、お前はなんでそんなに上手に艦を動かせるんだ。俺の艦との距離は五メートルぐらいしかない。もし、俺が急に方向転換したらどうするんだ」


「大丈夫。だって、レンレンが何を考えてるかすぐにわかるもん」


「なら、何を考えてるのか分かるのか」


「多分だけど、『暇だ、カケルがいるからここに居るがカケルがいなかったら横須賀でもいいから帰りたい』って感じじゃないかな」


「何をかんがえてるか分かるっていうのは本当なんだな。そういうことだ、大阪港まであと何分だ」


「あと三十いや二十分で着く」


「二十分って、今50ノットだから、75ノットぐらい出さないといけないよ。さすがにその速度で走ったら、カケルとレンが衝突しないかな」


「さっき言ったけど、レンレンが何を考えてるかは分かるから大丈夫。ぶつかることは絶対にない」


―某学校―

無事大阪港にはついて、僕たちは通学予定の学校に向かうことにした。なんとなくだけど、道は覚えてる。僕が通う予定の学校は、山の中にあるけど、ちゃんと電気も通ってるし、上水道も完備されていた。数年ぶりにここに来るから、いろいろ変わってると思ったら、ほとんど変わってなかった。一応、艦の前方の甲板に車を積んどいた。本当は、艦内にスペースを作ろうと思っていたんだけど、時間が足りなかった。マジェスティックみたいに、攻撃を受けて車に被弾したら大変だけど、なんとなく攻撃されない気がしていた。


「カケルが行こうとしてる所は本当にこんなところにあるのか。山を登るにも道が狭い。これより大きい車だったら、溝にはまるぞ」


「大丈夫。こんな道でもバスは走れるんだから。学校はもうすぐ見えてくるから」


学校が見えてくると僕は驚いた。一応、彩に学校の様子を写真で見せてもらっていたけど、本物の方がすごかった。何も言わずに来たのに、お出迎えをしてくれた。


「ようこそ、剣零高校へ。生徒会長のハルと言います」


「僕がカケルで、これがレンです。編入をさせてほしいのですが」


「時間があれば、今からでも手続きは出来ますが、一つだけ確認をさせてください。英語を話せますか、AWOは使ってますね」


「英語は大丈夫です。どちらかというと日本語の方が不安ですが」


「カケルはAWOでビリオンプレイヤーだ」


「そうですか。英語以外の成績を教えていただけますか」


「僕は、高二レベルまでは大丈夫です。生物に関しては大学の博士号レベルまで大丈夫ですが。レンレンは、学校には通ってないけど、大学レベルまで大丈夫だよね」


「アルゴリズムを使ったマイクロプロセッサコンポーネントの実用化、リーマン予想とかなら大丈夫だ」


レンレン、何を言ってるのか全く分からないよ。なんかハルさんも困った顔をしてるようにも見えるし。リーマン予想は知ってるけど、マイクロなんとかって何?


「そ、そう。レンは特待生枠で、カケルは...」


「別に僕は普通枠でも構わないよ」


「いや、そうじゃなくて、生徒会枠というのがあるんだ。生徒会メンバーだけのものなんだけど、生徒会に入る気はない?」


「レンレンと一緒ならいいけど、それが無理なら今はいいです」


「そうか。しばらくカケルの分は枠を空けておくから。もしもうひと枠空けばその時はまた教えるから。ちなみに、カケルとレンは同じクラスだ。えっと、高等部の一年だ。それと、今生物の先生が足りないんだ。カケル、引き受けてくれないか。もちろん有給だ」


僕的にはいいんだけど、レンレンが良いって言うかな。一応、僕自身で決めることだとは思うけど、こういうのはレンレンに許可を取っておきたい。


「カケル、俺は構わない。カケルがしたいことをすればいい。今のうちにしかできない事はしておくべきだ」


「レンレン、ありがとう。ちょっと抱き着いてもいい?」


「それは毎回人に聞くことじゃない。俺が良いと――」


レンレン可愛い!肌もきれいだし、声も可愛いし、初めてだなこんなにも幸せなのは。




「――る、――ける、カケル!」


「な、なに?あ、もしかして寝てた?」


「もしかしてじゃない。授業が全部終わったから見に来てやったら、何のんきに寝てる。頼んでたのは出来てるのか」


「頼んでたものって、あ、あれのことか。ほら、AWOを改良して作った、ナビゲーションAIだよ。レンレンのペットもこれでもっと出来る事が増えたよ」


ちなみに、このナビゲーションAIは僕にも使えて、料理の作り方や問題の解説をしてくれたり、とても助けられている。さらにすごいのは、AWOを起動していなくても、AIと会話ができる。AIだから喋るだけでもいいんだけど、それじゃあつまらないから、可愛い女の子のAIにしてみた。僕もレンレンも男だし、このまま女の子に出会う機会なんてあんまりないだろうと思っていた。

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