*** アップルパイ入りまーす。
お久しぶりです。
先日確定申告に深刻なパンチを受けました(ヽ´ω`)
あーっと……いらっしゃいませ、お客様!! ちゃんと張り紙にある通り、留守にしてたのは五分ですよ!!
“――いや、今来たところだからそれはいいんだけど、何この【ちょこっとお使い中。五分位で戻ります】ってやつ。不用心すぎないか?”ですか。
不用心は不用心かもですけど鍵かけてますし、この時間帯お客はおらずとも人目はまぁ、そこそこありますから。
それに店内に金目のものはほぼないですので無問題。いや分かってても“自虐的すぎて痛くない?”とか、言っちゃ駄目よお客様。立ち話も何ですから店内でコーヒーでもどうぞ!
“テンションがおかしい上に、膝がブルってるけど何かあった?”とか、伊達にうちの常連じゃないですね。店主の豆腐メンタルぶりを分かっていらっしゃる。はいはい、それではカウンターでコーヒー淹れつつお話しますね。
――って、お話しますねと言っているのに“自転車乗ってお使いって……ウーバー◯ーツでも始めたの?”と質問しますか。欲しがりますねー。だがそこが良い。店主も気心の知れた話し相手に若干飢えてますからね。
ウーバー◯ーツを始めた訳では全然ないんですけど、コロナ禍で忙しい常連さんがおりまして。ほら、あのホワイトすぎる会社の社長さん憶えてらっしゃいます? あ、良かった憶えてらっしゃいますか。
それでですね、あの常連さんが今日いらしてくれたんですが、その方とてもインテリジェンスな七十代のオジサマなのですけど、光栄なことにうちのアップルパイがお好きでして。
でも今日はまだ用意はしてたけど焼いてなかったんです。そこでこのコロナ禍、売上を一円でも増やしたい店主は「まだ焼いてないけど、一時間くらいで出来ます!」ってお伝えしたんですね。
“必死かよ(笑)”って……こちとら必死だよ……こないだ【確定☆深刻!!】してきたとこ……ってやだ、つい心の澱が漏れちゃいましたね。すみませんでした。
――で、その方が「じゃあ僕今から会議やから、焼き上がったやつ受付の子に“会長宛”で預けといて」と仰って下さって、先にお代金を頂いて帰られたんです。
“社長からさらなる高みへ……!”ですか、ちょっと憧れを刺激されましたかね? まぁ、うちも今年で十年目ですし、見るからにお仕事出来る方なので出世もなさるでしょう。
ですが店主はその会社は正面からだと町工場くらいだと思ってたので、軽い気持ちで焼き上がったアップルパイを前かごに乗せて、コロナだしマスク着用の上、エプロンしたまま行ったんですよ。
あ、こちらコーヒーお待たせしました。熱いのでお気をつけ下さいね。
“何で会社にエプロンして行こうと思った”って、いや、考えてもみて下さい。普通にジーパンにカッターシャツの一般人が社内に入り込んできて、受付で「これ会長様宛です!」ってケーキの箱出して素直に受け取る? 不審すぎて受け取らないでしょ?
“警備員を呼ぶ一択”か。知ってますよ。店主でもそうします。実際エプロンして行っても入口で不審人物見る目で見られましたから。しかし真の地獄は胡乱な目を向けられた玄関のすぐ傍にあったんですよ。
常連さんが仰った受付の子、どころか……会社が鰻の寝床方式に奥に広かったんです! 普通受付ってドラマで観るみたいにちょっと目隠しがあって、小さい窓口に受付の方が二人くらいかなーって思うじゃないですか?
それがその会社はワンフロア丸ごと受付とか打ち合わせの業務に割くとこだったみたいで、パソコンに向かっていたキチンとした身形の社員さん達三十名ほどが、一斉にこっちを見たんです。胡乱な目で……不審人物を見る目でよぉ……。
思わずお相手して下さった受付の方に「喫茶◯◯◯デス。コ、コチラゴ注文頂キマシタ。会長様アテデス」って、ガクブルしながら手渡して逃げ帰って来たんですよ。以上、店主チャリで五分の大冒険・完。
これでさっき店の前で見た膝がブルってた理由がお分かりになりましたね。軽い気持ちで引き受けて、表の見た目で判断しちゃ駄目よという体験談でした。
めでたしめでたし……って、めっちゃ笑いますね、お客様。コロナ禍で憂鬱な毎日にちょっぴり花を添えられたようで良かったですよ、ええ。
――――それではお客様、またのご来店をお待ちしております。
寒いと暑いが交互にきて体調に圧をかけてきますね。
皆様も体調管理にお気をつけ下さいませ(*´ω`*)




