*** 床下は大事だよって話です。
今回は店舗を探すときの注意事項っぽいものです(´ω`*)
これがあるとないとでは大違い! らしいです(笑)
あ、お久しぶりですお客様!! お元気でしたか?
……ってそんな胡乱な顔でこっち見ないで。梅雨だからって持ってる傘で足をつつかないで下さいよ。ご安心下さい生きてます。幽霊じゃない。
まま、お久しぶりついでに一杯コーヒーサービスさせて頂きますから、いつもの席におかけ下さいな。
ええ? “久し振り過ぎて顔を忘れるところだった”とは心外ですね~!
店主はちゃんと憶えていたのにあんまり薄情な言い分じゃありませんか。
“それは単に客が少なすぎるから店主の頭でも憶えられるんだろう?”
お客様は相変わらず正論で人を打つのがお得意のようですね。言葉責めですか? 店主はその手ので喜ぶ性癖はないので普通に傷付きますわぁ。
“嘘付け”って酷いですね。ま、店主とお客様の仲ですから多少の暴言は良いですよ。……はい、お久しぶりの当店自慢のホットコーヒーにございます。
今回もこんなに間が空いちゃった理由聞いてくれます? ね、聞こう。聞くべきだ。聞かねばならない。
“……何でカフェオレ用のマグカップでコーヒー出てきたのかと思ったら、愚痴を聞かせるためだったな?”
――――……スン、となっちゃうような突っ込みは結構ですよ? まぁ、では、今日もいきますよ! 今日のお題はこちら!!
【店主震撼! 天井から舞い落ちる白い粉の正体を暴け!?】
と、いう訳でですね、今回は八年目ともあって結構やれ始めている店舗の修繕企画第二弾ってところですね。床はほら、ちょっと見て下さい。前回よりも色がうんと明るく綺麗になったでしょう?
これはね、店舗用の新素材らしくて、木目調でありながら水拭きが出来て、汚れと傷に強くてワックスも不要という優れものなんですよ。元の床の上から張れるのでコストパフォーマンスも割と高め。
素材の柄のバリエーションも豊富で良いですよ~。たぶん新しいお家を立てたいけど、高齢で車椅子のご家族がいたり、犬猫を室内で飼ってたり、小さなお子さんがいるようなご家庭にオススメ。
八坪(キッチンスペースは省く)で十四万(税込み)くらいですね。ちょっとお値段高めなのはうちが店の売上を考えずに【店舗】を可愛がった結果です。ちなみにこれでもこのお店を手がけて下さった大工さんの口利きで多少お安くなっています。
お店をする時は職人さん達を大切にして味方につけると、後々心強いアフターケアをして頂けることもありますよ!(確実ではありませんが)
いつも頑張ってくれてるうちの子を、少しでもドレスアップさせたかったんだ……(遠い目)
“ちょい待ち、床の話じゃなかっただろうが。早速脱線してるぞ”
あ、はい。そうですね。じゃあ台風の被害で修繕してくれる業者さんがなかなか捕まらなくて、店を丸っとひと月休んだ話とかは割愛します。
“ほとんど、それほとんど言ってるから。さっさと本題に入って”だなんて、お客様はせっかちさんですね。そんなこと言ってたら、マグカップに延々コーヒー足しますよ?
……と、はい、待って、席を立たないで。つい久しぶりにお客様に会えてはしゃいでしまいました。スミマセン。
“分かれば良い”ですか。お客様がちょろっと謝れば許して下さる懐の深い方で良かったです。
“褒めるか貶すかどっちかにしとけよ?”
聞こえない聞こえない。では気を取り直して白い粉の話ですね。
別に店主が店が傾いているのを悲観して、怪しいお薬の取引場所として店を提供したわけではないんですよ? なのにですね、毎年梅雨の前、だいたい時期にしてゴールデンウイーク頃なんですけど、なんか店内にちらほら白い粉と、細長くて小さい羽根みたいなのが落ちてるんです。
それで、時々本体も一緒に見つけるんですけど、たまに外で見かけるような黒い蟻なんですよ。背中に羽根がある意外には何の変哲もないやつ。
でもね、外で見かける羽根蟻って触っても羽根が取れたりしないでしょう? “普通触らない。触ろうとも思わない”ですか。都会っ子ですねぇ。このシティーボーイめ。
……待って、座って、ごめんなさい。
まぁそれでですね、羽蟻蟻が残した羽根で店の端っこが黒くなったりするんですよ。それも毎年じゃなくて二、三年に一回くらい。その姿を一切見なくなったあたりで白い粉が店の端っこに降り積もるんですよ。
これが毎年なら契約してるダス○ンさんに聞くんですけど、二、三年に一回ならただ蟻が繁殖してるだけなのかな~? って、いつもは暢気に考えるんですけど。
今回は前回から二年が経って、ここ最近はお店がやれてきてるし、何だか嫌な予感もする。何故って三軒隣のゴミ屋敷が最近無人になってから自壊し始めてるので。自壊……早くない?と。
そこで文明の利器、このお話を打ち込んでいる魔法の板様で捕獲した羽根蟻をじっくりルーペで観察しながらググったわけですね。
そうしたら……何でこういう時って一番疑ってたけど、一番知りたくなかった真実にたどり着くんでしょうか? 不思議ですね。
捕まえた羽根蟻の特徴を全部ぶち込んだ生命体がヒットしました。その名も素敵に男らしい【ヤマトシロアリ】。
“何て言ったらいいのか……ご愁傷様”
……ふふ、ふふふ、ねぇ? 即日ダス○ンさんのシロアリ駆除にお電話しましたよ。でもちょうど発生時期で忙しいから一週間待ちで。しかも下見に来てもらったら『あっちゃあ~、このお店……床下がないんですかぁ』という不穏な言葉。
何でもシロアリ駆除は一般的に床下に入って薬剤を散布するのが一般的で、効果も発揮できる上に、撒いた後にいなくなっていなかったら保証がつくんです。無償で撒き直してくれる。
ところが、床下がない場合は保証もつかない、効果もあまり期待できない、当然撒き直しには追加で同じ金額を取られると。それが嫌なら床を一部剥いで床下の隙間から散布する方法もあったのだそうですが……床、見て。
……綺麗でしょう? 張り替えたばっかりですもんね……。
結局泣く泣く他の方法にしました。それがもう、身を切られる思いというか、断腸の思いというか。金額もさることながらうちのお店の壁に五ミリくらいの穴を三、四十ヶ所開けるという……恐ろしい提案でした。しかもお客様の目に付く腰高くらいに。
内心全く納得していませんでしたけど、店が文字通り傾くよりはマシです。不承不承それでお願いしまして、一週間待ちました。
当然その間もチラチラと白い粉が降ってくるわけです。店主の前で当店の材木を美味しく召し上がっていらっしゃる。随分堂々とした無銭飲食です。必ず報いを受けさせてやると思いました。通帳を握りしめて。
そしてようやくダス○ンさんに来て頂いて、さぁ薬剤散布ですが……あれ、散布っていうよりも注入なんですね。なにやらタンクを載せた車を店に横付けして、ホースで注入するんですよ。なので、なるべくお店やお家の隣が開けた場所でないとしんどいかも?
さて、まず壁に穴を開ける作業です。凄いですね、うちの子の断末魔が聞こえるようでした。ダス○ンの方も後ろで青ざめて作業を見守られるのが辛かっただろうと思います。ごめんなさいでした。
次にホースで薬剤を注入するんですが、うちのお店、元の造りがかなりインチキなんですよ。前のオーナーさんが、戦後すぐの物件を新築そっくりさんみたいにしただけだったので。
注入してしばらくすると床に染み出すのでそれを拭き取りつつ、仕上げにめっちゃ頼み込んで店内の色に合わせて塗ってもらった木栓で穴を塞ぎます。ガッツンガッツンとハンマーで叩き込むので、隣近所に人が住んでいる場合は先に挨拶まわりしないと怒られますよ。
“いや、そんなレクチャーされてもこっちに関係ないから”とは、甘いですよお客様。店主はこの場を通して同業種の方々に注意喚起をしているだけですので。チャンネルはそのまま!
九坪の薬剤散布だと相場は十二、三万円(税抜き)なんですが、今回は八年契約してるので九万八千円(税抜き)でしてもらうことが出来ました。
床の張り替えと薬剤散布で一年もまだ半年の時点で、店舗の補修金額は総額二十四万五千八百四十円もかかったんです。もうこの時点で今年の赤字は確定しました。
おや“コーヒー代、やっぱり払うわ”だなんて、お気になさらず! 愚痴代としてそれはお納め下さい!
でも、そうですね……またこうしてお近くにお寄りの際は、当店にコーヒーを飲みに来て下さると嬉しいですね。
――――それではお客様、またのご来店をお待ちしております。
うーん、コーヒー何杯売れば良いのでしょうか(笑)
修繕費用を頑張って稼ぐ毎日ですwww




