*** ヘルパーとストーカー爺さん。
今回はホラーです。(・ω・*)<怖い!
うちのお店の周辺にはかなーりご高齢の方々が多いんですよ。日中あんまり静かなものだから最初は閑静な住宅街だと思っていたくらい。
が、そうではなくて歩き回るけど物凄い早朝か夕方にしか姿を現さないのだと知ったのは店を開けてからすぐに分かった。
先に申し上げれば店主はここに店を構えるまでは、老人の方が若者よりも好きだったくらいです。だからここへ来てまさかこんなに老人に怯える日が来ようとは思ってもみなかった訳で――。
開店したばかりの頃から毎日、朝の九時頃になると本当にもう毎日いらっしゃるご高齢のお爺さんがいるんですよ。
しかも一人ではなくてだいたい近くの訪問介護施設のヘルパーさんと一緒に。でもこのヘルパーさん達、忙しいのか店に入った瞬間このお爺さんを置いていく。
お爺さんはお爺さんでヘルパーさんがいなくなったらすぐに店主に話しかけてきます。この話に開店当初はいちいち相槌をうったり、質問を返したりしていたんですが……これが良くなかった。
このお爺さん、最近多い独居老人だったのですよ。
最初の来店から毎日朝の九時にやってきては十二時まで話しかけてくる。え? それくらい寂しい老人の相手をしてやれって?
――はい、そこのあなた、駄目ヒューマン。
これが店主も男性だったらそれをしても問題なかったんですが……生物学上女ですので。お爺さんが高確率で顔を覗き込んでくるので途中から少し怖くなって、毎日の会話を少なくしてみたりしたんですよ。
そうしたらこのお爺さん、なんと朝昼夕と他にお客がいない時間帯を見計らって現れるようになりました。住んでる場所が目視できるくらい近所の方だったんですね~。
たったそれくらいのことだと思いました? うーん、店主は途中から昼の仕込みにかかるんですよ。で、お話しができる状態じゃなくなる。
相槌はうつけど客席の方は向けない。お爺さん、どうしたと思います?
正解は……カウンターの内側に入ってきてたんですね~! 怖!
店主の真後ろに張り付くように立っているお爺さん。最早ホラーです。
それを毎朝ここへお爺さんを連れてくるヘルパーさんに伝えたところ「まだ何もされてないんだから良いじゃない」と。
何をされたらアウトなのか分からなかった店主はこの場は引き下がったよ! 確かに勘違いかもって可能性だってあるもんね!
ところが――それから毎日夕方、店の買い出しをスーパーでしていたら背後から粘っこい気配が……。振り返れば奴がいる。そう、お爺さんだね。
足早に店に戻ってドアの鍵をかけたら、それからしばらくしてドアノブがガチャガチャ。そう、お爺さんだね。
しかも齢八十を超えるお爺さん、何を思ったかドアにタックルをかけて開けようとするんだよ! うん、怖いね! 警察に電話? したよ!
「何かされて事件になったら呼んで下さい。相手は老人なんですから、いちいちそんなことで電話しないで下さいよ」
この時の交番のお巡りの台詞だけど、ほぼ一言一句間違いないよ! ちなみに最寄りの交番はここしかなくて、この時のお巡りがうちのお店の周辺担当なんだ! 絶望だね!
すでに生活の大半を店にいるといっても過言ではなくなっていたお爺さんには、その日を境に居留守を使うことにしたんだ!
――が、敵もさることながら……毎日違うヘルパーさんを先に入店させて、その後居留守を使えない状態にしてから自分が入店するようになった。
勿論ヘルパーさんには事情を話しているのにそのまま帰ります。忙しいのは分かるけど職務怠慢すぎでしょうが……。
そんなことが数年続いたので、その時の恐怖体験から今は開店時間が違います。
もしもまだ昔のポイントカードをお持ちでしたら、開店時間の上に斜線を引いて、新しい時間を書き込んで下さいね?
え? “そのお爺さんが今どうしてるか”ですか? 毎朝元気にドアガチャして去っていきますよ!
それではお客様、またのお越しをお待ちしております。
若くて優しい女子は気をつけてね!
ん? 店主?(´・ω・`)<聞いちゃうの?
過疎化してる町だと五十過ぎても“青年団”って言われるよね!