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***   クロネコメンバーズ・2

七夕なのに残念なお天気ですが……(´ω`;)


この方達は相変わらずのパワフルガールズぶりでしたw



 いらっしゃいませ、お客様! はい、では……こちらの長方形の紙に、願い事を書いてみたりしたいな~とか思いませんか?


 “……あ、七夕?”とは流石お客様です! 一発で当ててしまうとは、この荒廃しきった現代社会で風流な気持ちを忘れていない証拠ですね。


 ささ、どうぞ、どうぞ。気兼ねなく、普段なら絶対言わないような願い事をぶっちゃけてしまって結構ですよ。


 “――それ、何だか七夕の流儀から外れてないか?”


 え? 外れてませんよ? 今日は老若男女関係なくこの長方形の紙に思いの丈をぶつける日です。


 良い子、悪い子、普通の子の区別なく願い事を出来る、数少ないイベントですよ? よくよく考えてみたらこの手の祭事で誰でも参加可能って珍しいですよね。


 “そもそも七夕って祭事なの?”


 ――ん? 言われてみれば、祭事と言うほどのことでもないというか……他人の逢い引きに割り込む形の無粋な行事ですよね……。


 “………………”


 ……………………。


 まぁ、細かいことは良いじゃないですか! あんまり深く考えすぎると、日本のお祭りの半分くらいいらなくなっちゃいますよ? 


 ほらほら、コーヒーも丁度入ったことですし! 気にせず願い事を書いて、天の川にズバーっと流してしまいましょう!


 数日前にいらっしゃったクロネコさん達なんか、ものすごく生き生きと便乗してらっしゃいましたよ?


 “そう言えば店に笹がないけど……この短冊どこで手に入れたの?”


 嫌だな~、お客様。うちの店内に笹飾りは絶対に合いませんよ。英国風味の店内に笹飾りは店主が断固拒否します。


 なので、この短冊はすぐそこのスーパーから拝借してきたんです。季節行事に敏感ですよね、スーパーって。


 あ、別に無断で貰ってきたわけではないので悪しからず。用意してもいつもスカスカだから~って仲良しのパートさんがくれました。


 ですのでこちらで書いていただいたものは、全部店主が責任を持ってくくりつけて来ますよ。御利益があるかは……まぁ、気分ですよね?


 “ごり押しが凄かったのにオチで興醒めだろ……”


 うーん、そう言いつつも書いて下さるお客様は素晴らしいですね。


 ではいつものようにコーヒー片手に店主の話にご傾聴下さいませ。


 数日前にいらしたのはいつものクロネコメンバーさん達だったんですが、皆さんすでにお子さんに付き合ってスーパーで書いてきた後みたいで、メンバーで昼食とるついでに何を書いたのか教え合っていたみたいなんですけど――。


 これがもう、実に微笑ましい! 相変わらず安定の子煩悩ぶりで素晴らしいんですよ。


「七夕飾りって幼稚園過ぎたらせぇへんから忘れてまうよな~」


「そうそう、幼稚園で作った笹飾りとかの後片付けせぇへんで済むのはええんやけどねぇ」


「なんやかや、子供はあれ楽しみにしとるしな。折り紙とか、うちの子なんか不器用やのにやりたがりやし」


「そーそー。スーパーいったら花のコーナーある方いかれへんよ」


「買って買って攻撃がスゴいもんー!」


「「「「「ね~!!」」」」」


 から始まって、スーパーの七夕飾りがすごい助かるよねー、みたいなことに皆さん大いに頷き合い……本題の短冊ですよ。ここで皆さん我が子の短冊に書かれた願い事の暴露大会。


 その内容の可愛さを全面に押し出して、どの短冊が一番胸に刺さったか選手権を始められたんですよ。


 内容としましては《おかあさんのおきゅうりょうが、ふえますように》とか《おやすみがふえますように》《いっしょにおふとんはいりたい》《いえおるときは、おこらんといて》などなど。


 子供らしい可愛いものが多かったですね。あとは何でしょうか、全体的に共働きやシングル家庭の子供ならではのお願い事が多いイメージですか。


 小学校の低学年とかだと、まだまだ寂しいですもんね。店主も帰ったら親のいるお家が羨ましかったもんです。


 ――が、


「――ふふ、皆、今回は悪いけどうちの子の一人勝ちやわぁ。これ見て」


 そう、あるお一人のクロネコが腰に付けたポシェットからぽち袋を一枚取り出して、その中に丁寧に折り畳んで入れてあった薄桃色の短冊をテーブルに広げたんですよ。


 ――何故か、二枚。


「え? 嘘やん、あんた子供一人やのに二枚あるんおかしいで?」


「ちょ、待って待って。これ裏真っ白。短冊の裏白いとか変やし、穴があらへんよこれ」


「えー? ほんまや。こよりがついとらんやん、なんでよ?」


「いや、しかもこれ同じ文章? 二枚も………書き損じ?」


 残りの四名様がブーブー言うのを片手で制したお一人のクロネコさん。


「ええから、願い事、読んで」


 もう、その表情たるや、ニヤニヤが止まらない! とばかりの満面の笑みですよ。


 他のメンバーさん達も良く分からないけどそこまで言うなら……という風に覗き込まれて……店主も思わず“音読してくれ”とか思っちゃいました。


「“おとうさんと、おかあさんが、おなじひにやすめますように。そんで、さんにんでごはんがたべられますように”って……いやぁぁぁぁ、何コレめっちゃ健気やんかー!!」

 

「ええやん、ええやん。うちの子の怒らんといてが霞みそうやわ~」


「それはそれで可愛いやんか。でも、確かにこれは……」


「うんうん、ええよな。そやけど、これ何でおんなじの二枚あるん?」


 うっかり店主も胸キュンしていて忘れそうだった疑問を、最後のメンバーさんが突っ込んで下さいました。この土地において突っ込みは文化。


 すると、あっけらかんとぽち袋から短冊を取り出したメンバーさんが言い放ちました。


「え? そら、カラーコピーしたからに決まってるやん?」


 他のメンバーさん達ポカーンです。店主も“ん?”ってなりましたが、当のご本人様はその反応に納得いかなかったようで、


「こんな可愛いのん、ダンナにもやらなあかんやん? 将来どんなクソガキに育っても“こんな頃もあったわ~”って思えたら我慢できるし、ダンナと喧嘩して離婚や! とかなったときに印籠みたいにして出したろかと思って」


 そやからチビにお菓子買いに行かせてる間にカラーコピーしたった、とネタバレをしてもう一度丁寧に短冊を畳んでぽち袋にしまうクロネコさん。


 それから一瞬の間を置いて、店内に爆笑が響きわたりました。不思議と気持ちのいい騒音って世の中にありますよね~。


 他のクロネコメンバーさん達は、


「普通そこまでするかぁ?」


「余白勿体ないやん~!」


「お金貯まらへん訳やで!」


「余白メモ用紙にしたらええよ」


 皆さん散々笑いあって、席を立たれました。店主もあの日は幸せの余韻を感じながら仕事に励めましたよ。


 ん、願い事、書けましたか?


 “おい、人の分見るなら自分のも見せるべきだろ”


 おや、それもそうですね。良いですよ? じゃあ、これをそちらに。そしてお客様のをこちらに。


 では、行きますよ……いっせーのーで!


 “………………”


 ……………………。


 “一日売上五千円欲しい”


 夏のボーナス上乗せしてくれ、ですか。まぁ、あれですよ。大人の願い事なんてこんなもんですって。


 店主は直前まで《マトモなお客が欲しい》って書きそうになりましたが、近所のスーパーにくくりつけて店を特定されるのも怖いので……ね。


 子供のまま大きくなれる大人はそうそういませんよ。


 吃驚するくらいの大富豪で、才能もありまくりとかなら話は別ですが。


 では、このお客様の思いが籠もった短冊は店主が責任を持ってくくりつけて来ますので!


 それではお客様、またのご来店をお待ちしております。



子供の人権は親バカの前には無力なのです(笑)


どれも可愛らしいお願い事だったので叶うと良いですね~。

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