*** 真相は藪の中。
今回はちょっと不思議……なお話? です。
いや、よくよく考えると不思議じゃ駄目なんですけどねσ(・ω・*)
いやー……今日は本当に面白いお話ありがとうございました。やっぱり良く分からないものは導入しないほうが無難なんですかね?
あ、はい。お引き留めしてしまってすみません。それでは帰り道お気をつけてお帰り下さいね~。
――……って、いつからそこで店主の珍しい接客姿見てたんですかお客様。
いらっしゃいませ、ほら、入って入って!
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“それでさ……何か言われるまま入店したけど……これでただの外回りの途中とかだったらどうするつもりだったの?”
――ですか?
言われてみれば…………考えてなかったですね。
いや、何かお客様をお見かけしたらつい呼び込んじゃうというか。これはもはや脊髄反射の域かな?
”……まぁ、良いわ。で、さっき何の話してたの?”とは、さすが! その切り替えの早さあってのお客様!
えっとですね、さっきの若い女性のお客様と話してたのは最近この辺物騒だよね~……と言ったようなお天気の話みたいなものだったんですけど。
“この辺が物騒って……いつものことじゃない?”
うん、はい、ですよね。でもまぁ、このすぐ先の一時間に一本しかないバスに乗って信号に捕まらなかったら、七分位で急行が止まるそこそこ大きな駅に出るんですよね?
で、つい先日その駅前の交番に頭のおかしいオニイサンが飛び込んでお巡りさん……あ、ここの交番の人は真面目ですよ? を、殴ったんですよね。突然白昼堂々意味もなく。
……あ、コーヒーどうぞ~。熱いのでお気をつけて。
で、それなりに規模に大きな駅だし、ちょいちょい薬○の人もいるのでそれ自体はあまり珍しくもないんですけど。
そのオニイサン、殴ったお巡りさんに「“ヒャッハー! このまま他の通行人も殴ってやるぜぇ! 撃てるもんなら撃ってみろよ!”」的なこと言ったんですよ。
え? “お巡りさんどうしたの?”って、そりゃ勿論発砲しましたよ。あの辺だと割と――普通ではないけど、結構捕り物とかありますしね。
ああいう時にニュースとかで警官は軽々しく発砲しちゃ駄目とか言う人いますけどね~、この辺だとそういうおとぎの国の人間は去れ! ってなりますよ。危ない奴は危ない。
だってねぇ、警官にも家族がいるんですよ? 警官にも命ぐらい守らせろよとか思います。
――と、話が逸れましたね。
それでまぁ、ああいうのが増えてきたら売上目当てに襲ってくる危険人物も出るかな、と。
実際店主も近所のATMで売上入金してたら、見知らぬオッチャンがついて来たことありますし。
それでさっきのお客さんとそういう感じで話してて、ふと、じゃあ防犯カメラを取り付けてみたらどうか、的な流れになりまして。
でもあんまり大きな機材とか画面と睨めっこするの面ど……ゴホン。
ということで店主が渋っていたらお客さんが、
「“うちはスマホに防犯カメラの画像送られてくるやつに入ってるけど、機材いらんし面倒くさくなくて便利やよ”」と仰るので、それは何ぞやと。
何か電話会社の業務の中にそういうのがあるらしくて? その方はそれの契約を結んでるから教えてもらってたんです。
で、途中から何が映ってるのかという話になったんですが……。
「“三つ取り付けてるんやけど、何かチャンネル自体は四つあんねんな? それで普通やったらそこが真っ黒で何も映らんはずやねんけど……”」
なんとそこに――、
「“見知らんお爺ちゃんが映るんよ~。それも毎回”」
ですって。ね、面白いでしょう?
“いや……面白い、か?”って、お客様。ここは面白いというほかないじゃないですか。怖いですもん。あ、言っちゃった。
「“でもな~、このお爺ちゃん、身なりマトモやのよ。この辺の人やないんねきっと。毎回白いシャツに折り目ピシッとしたズボンで……急須持ってこっちに近付いてくんねん”」
――ね、もう分かりました? このカメラがどこに付いてるのか。
私達が出した答えは【見守りポット】じゃないか? ってとこでした。
あれ一時コマーシャルで流行りましたよね~。遠方にいる親に安否確認の電話したいけど、日に何度もすると嫌がられるし……とかで、毎日薬とかお茶を飲む時に使うポットにカメラとセンサー付けたサービス。
「“最初は怖かったわ~、全然見たこともないお爺ちゃんが写るの。その内なれたけど、逆に次に見た時に倒れてたらどないしよ~思て、近所の人にそのお爺ちゃん知らんか聞いてんけど誰も知らんでなぁ”」
結局どこのどなたか分からずじまい。それから奇妙な見守り生活がしばらく続いたらしいです。
「“好みのイケメンとかやっても困るけど、お爺ちゃんも困るなぁ?”」
とかしばらくそれでお客さんと二人で盛り上がって、マトモな見た目の人が映っててまだ良かったよね~、と言ってたまでは良かったんですが……ここで問題です。
何で契約してないチャンネルに見知らん人物が写るのか? ってことなんですけど……。
「“何か分からへん言われたわ~”」
――だそうで。え、じゃあそういうのって良くあるんでしょうか? っていう答えが宙ぶらりんに。
そこで店主は止せばいいのにふと思いついてしまった、あることを口走ってしまったんですよ。
これ、映ってたのがお爺ちゃんだからまだ良いですけど、いや、お爺ちゃんにしてみたら良くはないですが……若い女性とかだったら事件ですよね。
――と。
もしそういうことがあったとしても、こういうのって警察に相談して良いものなんでしょうかね~? さっきのお客さんと一緒に答えの分からない迷宮に迷い込んでしまって。
「“うーん、結局防犯カメラ付けたら付けたで誰かに見られてるかもしれへんとか思ったら怖いなぁ”」
という一周回ってやんわりしたオチに。
“ん? ということは……?”
――――つけま…………せん!! ってことですよ。
結局はまた違った見た目に分からないことに怯えるくらいなら、店の会計の隣に竹刀でも置いとこうというオチです。
ははは、貴重な休憩時間を下らないオチにお付き合い頂いてありがとうございましたお客様。
それではお客様、またのご来店をお待ちしております。
結局その後、
例のお爺ちゃんはポットを捨てたのか映らなくなったそうですよw




