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***   穴だらけのプランター。

今回は鬱なスピンオフです。

苦手な方はご注意下さいませ(´・ω・)<ふぅ……。



 ――――ん、あぁ、いらっしゃいませ……お客様。


 え? “テンションがヤバいぞ?”ですか……ははは。


 いえね、本日通算十三回目となる花泥棒が現れまして……今が一番綺麗な時期だったうちの看板娘達が、ごっそり攫われてしまいまして。


 本当に綺麗に咲いて、蕾も上がって、香りも良くて……あぁ、春だな~、これから見頃だな~って時だったんです。


 それが、今朝見たらなくて。


 ――この街の掟として、持ってる人間が悪いんです。


 ――花なんて飾る人間が悪いんです。


 ――見せびらかしてるなら抜いて持って帰ったって良いんです。


 ………そんな、恥ずかしい街なんですよ。


 で、店主は毎回その都度ぺしゃんこにめげても、また花を植える大馬鹿野郎なんです。


 攫われ行ったあの子達は、その後ちゃんとお世話をしてもらえるんでしょうか?


 置かれたのが日当たりが悪い所だったら、太陽の光のある場所に運んでもらえるんでしょうか?


 雨が降りそうな日は、花びらが傷まないように軒下に入れてもらえるんでしょうか?


 風が強い日は風除けを立ててもらって、表面が乾いたら水をたっぷりもらえるんでしょうか?


 何が言いたいかって言うとですねー……もうここでお店続けるのも……あぁ、駄目ですね、せっかくお客様がいらして下さっているのに……。


 すぐに当店自慢の美味しいコーヒーをお持ちしますね?


 ――と、んん、他のお客様が……。


 “……大丈夫?”ですか? ふふ、そんな風に訊いて下さるのはお客様だけですね。


 ねぇ、お客様、ここだけの話ですよ?


 本当に、本当に、ここだけの話ですよ?


 あぁして舐めるみたいに店内を覗き込んで来るお客様を見ていると、今度はうちから何を盗んで行くつもりなんだろう……って、ほんの少しだけ思っちゃうんです。


 駄目ですねぇ。


 駄目ですよねぇ……。


 こんなこと考えてる時点で、喫茶店の店主なんてしちゃいけないのかもしれないですねー。


 あ、いらっしゃいませ……お好きなお席にどうぞ……。


 ――ね、お客様、今の話は本当に内緒ですよ?


 でないと店主は明日から無職のプーさんですから。あれ? 今の笑う所ですよお客様。


 ――あ、はい、ただいま参りますので少々……、


 “他の客がいんのに無駄口きいてんじゃねぇぞ!”


 ――申し訳ございません、すぐにご注文を伺いに参りますのでもう少々お待ち下さいませ。


 …………ごめんなさい、お客様、ここにいてもこの先気分を害することになりそうですから、今日はもうお帰りになられた方がよろしいかと。


 次回は――もしもお客様がこの店に現れて下さる時には、いつも通りの店主ですから、ご安心下さいませね?


 ――それではお客様、またのご来店をお待ちしております。



あの黒い穴だらけのプランターは何度見ても辛いなぁ……。

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