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***   日本人らしさとは……?

今回ちょっと堅苦しそう?

――ご安心下さい、お客様(´ω`*)<全力で裏切ります。



 おぉ、いらっしゃいませお客様! ちょうど良いところにいらっしゃいましたね。


 たった今とても面白いお客様がお帰りになられたところなので、かなり臨場感溢れる語りを見せられると思いますよ!


 では今回のお題は……【日本人らしさとは】です。ほら上に書いてあるでしょう? このコーヒーでも飲みながら長めの前振りにお付き合い下さい。


 と、言いますのもこのお店の近辺って海外の方(住んでる)がちょこちょこいらっしゃるんですが、一時期海外の方々をさして日本文化に浸かることを【畳化する】とかって言いました……よね?


 言いましたとも。確か。えぇ、たぶん――言ったよね?


 あれですね、確証がもてないので“そんな感じの言葉はあった”くらいのフワッとした感じにしておきましょうか。


 それでですね、さっきまで二番席に座ってらしたお客様は三人家族の方々だったのですがなかなか言葉に独特の訛りがありまして。


 顔と雰囲気と会話内容などから考えるに、おそらくブラジル系かどこかその辺りの日系もしくは現地の方だと思われます。


 三人とも家族仲が良さそうで、特に娘さんは店主と同年代っぽいのですが、流暢過ぎる日本語を話されるところからも日本育ちなのではないかと推測しました。


 奥さんは痩せ型、旦那さんと娘さんはふっくら……というかやや堅太りですかね? そして結構食べる量を注文して下さいます。


 食事中の会話も日本語で行われるので店主も食器を洗いながら普段のように聞き流していたのですが……。


「パパもアナタ(娘)も最近太り過ぎよぉ? ママ心配だからあんまりたくさん食べない、良い?」


「何言ってるのママってば、心配し過ぎ。パパもアタシもママが言うほど太ってないって! ねぇ、パパ?」


 店主からすれば確かにそこまで心配するような太り方ではないのですが、そこはほら、個人の意見ですしね?


 そもそも人様の体格をどうこう言えるほどほっそりしてはいませんので。はい、そこで首を傾げないで下さいお客様。


 “言えるほどほっそり……だと?”とか半笑いで言わない。失礼ですよ?


 そしてそこでママはそんな娘に良くあるテンプレ発言を繰り出しました!


「パパは、今はお腹こんなだけど、昔は細くて格好良かったのよー?」


 ちょっと愛を感じますよね。一応格好良かったの部分にイントネーションが強めにあったので。しかしこれには娘さんも負けていません。


「えぇ、嘘でしょ? だって私が高校の 時って五十三キロ位しかなかったけど美人じゃなかったし。パパが格好良かったとかママの勘違いでしょ?」


 “いやそれ、パパ完璧にとばっちりじゃないか?”ですか。まぁ、そうともいえるんですが、面白いのはこの後ですよ。この後。


「そもそもパパ、その頃でウエストどれくらいだったの?」


「……三十」


「え? それ何の見栄なのパパ。三十とかそれもう死んでるじゃん」


 いえね、店主もさすがに“それ、パパいくら何でも言い過ぎちゃうの?”とは思いましたが、娘さんのそのあまりに直球&鋭すぎる突っ込みに店主は一瞬噴き出しかけました。


 気分はもう“頼むっ―――働いて、私の腹筋!!”といった感じでって、笑いますけどね、お客様もあの場にいれば絶対あの勢いに負けてましたよ?


 しかもこの後さらにお笑い芸人さん顔負けの突っ込みをママが放ちます。


「違う違う! インチよ、インチ! パパそんなだったら今頃ここいないから! ね、パパ?」


 身振り手振りは外人さんのそれでとにかく大袈裟で、さながら海外のホームコメディーを視聴しているような気分でしたね……。

 

 こうして店内で生で見ていたら面白かったのに、テレビの画面越しだとあんまり面白くないのは何でなんでしょうね?


 あ、お客様、今もしかしてちょっとツボにハマりました? 娘さんのこれへの返しがまた良くてですね――。


「はぁ? インチとか日本人使わないし、そんなの分かるわけないでしょパパってば。びっくりするじゃん」


 お気付きになられました? 娘さん、心の芯まで日本人基準なんですよ。


 そこでさらにママは上手くやり返すんです!


「アナタそこまで考え日本人なのに、どうして体重外人なの?」


 ……マ、ママぁぁぁぁ! 止めて、これ以上はもう店主の腹筋が――!


「だから結局……六十ちょっと位? だったら今の私とそんな変わらないじゃん」


「嘘ダメよ。アナタ、そのお腹、きっと七十あるよ! パパ、人のこと言えないけど、親だからダメ言うの。それに日本人の男の子、痩せてる女の子好きよ」


 あらら、駄目ですよお客様、ダウンするのはまだ早い。まだこんなもんじゃないんですよ。


「――良いじゃないか、ママ。最近の日本人の女の子は細過ぎる。これくらいしっかりしてた方が安心じゃないか」


「そうそう、ふっくらした子が好きって人もいるから大丈夫、大丈夫」


「そうだよ、ママ。きっとありのままのこの子を好きになってくれる男性がいるから心配しないで」


 “いやいや、主旨変わってきてる。健康面の話じゃなかった?”とは、そんなに前の設定を憶えていられるお客様は凄いですね~。

 

 店主もうっすらそれは感じていたんですが、この面白い展開がどこまで行くのか楽しみで忘れてましたよ?


「それ、二人とも、違う! “ありのまま”言って良いのは一回でも“嘘の自分作る努力”した人! アナタいつその努力するの? 今でしょ!」


 はい、撃沈ー……。何だかんだでママも日本人化してるんですよね。ネタが古いけど。


 もうねぇ、店主は下に物を落としたフリしてシンクの下で笑いをかみ殺すのに必死でしたよ……。


 今まではのらりくらりと言い返せたパパと娘さんも“一理あるな”みたいな顔をして黙り込んでしまいましたよ。


 おや、大丈夫ですかお客様? カップを持つ手が震えておりますが?


 あのママの説得力と臨場感は凄かった……。その場にいたのが店主とパパと娘さんしかいなかったのが悔やまれますよ、ホント。


 あれは世の自分の体型に甘い連中に聞かせてやるべき名演説でしたね。


 ……ちょうど良い気候になってきましたから店主もウォーキングくらいすべきですかね……。


 おっと、お帰りですか? 今回新しいカードをご用意させて頂きますね。


 それではお客様、またのご来店をお待ちしております。



こういう現象って、

普通の家庭では結構頻発しますよね?


あ、だからホームコメディーがあるのか。

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