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***   “良いね!”いいえ、良くありません。

感じて、考えて、行動。

意外と出来ないことですよね~(・ω・`)




 あ! お客様、ちょうど良いところにいらっしゃって下さいました!


 説明は後で致しますので、ほんの十分ほど店内でお待ち頂けますでしょうか!? 


 “スタンプを二個捺すなら”ですか。ちゃっかりしておられ――いえ、分かりました! ではお願いします!


 颯爽と赤兎ちゃんに乗って走り去る店主を見送ってから待つこと十五分。


 お、お待たせ致しました、お客様……ゲッホゲホゲホ! し、失礼、少し水を飲ませて下さい――はぁ、ふぅ~……。


 お待たせした上にお見苦しいところをお見せしました、すみません。“それで結局何だったの?”はい、では説明させて頂きます。


 いえね、さっきお帰りになられたお客様が忘れ物をされたものですから、それを届けようと急いでいたので――ちょっとお客様への対応がおざなりになってしまいました。重ねて申し訳ございません。

 

 いやぁ、最近スマホをお忘れになるお客様が多いんですよ。ほら、昔の二つ折り携帯より軽いから。それなのに便利機能事態は盛り沢山だから皆さん大抵触りながらお食事されるでしょう?


 特に昼休みの後とか結構ありがちなんですよ~。気が緩んじゃう時間ですもんね。当店の居心地が良すぎるのかもしれませんね!


 あ、はい――調子に乗りました、すみません。


 店主は二つ折りとタブレットの二刀流ですよ。だってスマホで電話したりしたら毎回画面がエラいことになるじゃないですか。


 ……テカってません。テカってませんよ?


 あとそそっかしいので絶対割る! 今使ってる二つ折り携帯を手放せないのは頑丈さ故ですよ。それに分厚い方が鞄の中で迷子にならないですし。

 

 割と鞄の中に物を詰め込む習性があるので。文庫本とか、文庫本とか……文庫本とか? 基本的に本ばっかりですね。


 財布が重いのはお会計の時に後ろに人が並ぶと慌てて小銭を出せなくなるせいでいつもお札を出しちゃうからです。


 あぁ、こうやって人に話していると自分の鈍くささに改めて気付く時ってありますよね。その間抜けさ、天井知らず!


 それに最近の方がどうという訳ではないのですが、皆さん歩くのが結構早いのでさっきのお客様も見失ってしまって。探し回っていたら遅くなってしまいました。


 店主は職場と買い出し以外の外出は本屋しかないので、それ以外で外を歩く時は亀の歩みなんですよ。


 ほら、例えばそこの道をまっすぐ行った所にあったお店。


 あそこ今まで潰れてもすぐに居抜きが入ってたんですけど、今回ばかりは年貢の納め時だったみたいで更地になってしまったんですが――店主は二週間後に気付きました。


 あんなに広い空き地だったのに普段どこに目を付けているんでしょうね? いや全く我がことながら恐ろしい。

 

 そうそう、前置きが長くなりましたが今回は“え? それあり?”と店主が困惑したお客様の……もしくはお客様ですらない人々のお話を少々。


 えー、まずはさっきから話題に上がっているスマホさんなんですが……この機械とネットの発展のお陰で少し困ることがあるんですよ。


 あ、勿論スマホがもたらすネット社会の闇! とかじゃなくて。そこまでの暴論は言いませんよ。


 これから話す内容はあくまでも利用者側のモラルの問題と言いますかね?


 昔は【写メ】ってメールに添付。くらいの可愛らしさだったと思うのですが、最近はインスタグラムやツイッターといったものがはやってるじゃないですか?


 む……やってなくても存在くらいは知ってますよ! 一応は現代人ですからね!


 それで、ですよ。店に入っても来ないのに店主に声をかけるでもなく、店の度真ん前で並んで記念撮影とか、花の咲いてるプランターを背景に店の窓(当店自慢の出窓)から店内も一緒に入るように記念撮影とか……。


 あれってどうなんでしょう? 単に店主の心が狭いのでしょうか?


 でも店内のお客様が写り込んでいて、なおかつそのお客様が顔バレNGな方だったりしたら……。


 ブログにアップされたりして怒られるのはたぶん店主ですよね?


 かといってカーテンかけちゃうとお店的に入り辛くなっちゃいますし。困りましたね。


 店内におられるお客様にしてもなのですが……何の声かけもなく店内の写真を撮りまくるのはお止めいただけると良いな、とか。中にはムービーまで撮られるお客様もおられます。


 いえ、声かけをされたところで断りにくいのですが――それにしたってこう“フリ”的なものが欲しいかな~、なんて。


 街中ですれ違った美人なり美男なりを二度見するにしても、さらに跡をつけて写真を撮ろうとは思わないじゃないですか。それと同じですよ。


 “いや、それ暴論過ぎ”とはこれや如何に。だってそうじゃないですか。承諾を得ないでそういうことをするのって。


 “たかだか店舗の内装を撮られただけだろ?”ですって?


 うーん、確かに普通ならそう思われるかもしれませんが。当店をデザイン設計して下さった大工さんに言わせれば、同業者がその画像を自由に見られる時代ではデザインの盗作が多いのだそうです。


 強面な大工さんなのですが、実際にライバルの業者にデザインを盗まれたことのある方なのでその辺りは繊細なんですよ。


 うちとしましてはこんなに底辺な売上の店舗を見捨てずに、毎回手入れを破格の値段でして下さる大工さんの胃を痛めつけたくはありません。


 ですからお客様も今まで通り店内の写真を無断で撮ったり“良いね”欲しさにブログにアップしたり(する場合は店主に確認をとって下さい)しないで下さいね?


 心底お客様を信用している店主からの、心からのお願いです。これからも出されたコーヒーを“美味しい”と言って下さるお客様でいらして下さいね。


 おや――もうお帰りですか? 


 今日は店番をして頂きましてありがとうございました! ではお約束通り……スタンプを二つ、と。


 おぉ、これで八個貯まりましたよ。あと二つで一杯分ですね。


 ――ふふふ、いつもありがとうございます。


 それではお客様、またのご来店をお待ちしております。




コラコラ、

外観をぐるっと自撮り棒を使ってまで撮らないの。


しかも女の子じゃなくてオジサンやないかーいww

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