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***   店内での聖水の販売はご遠慮下さい。

ある意味では行商人、か?


ゲームでは違和感ないのですがね(´ω`;)



 あぁ、いらっしゃいませお客様。


 店の周辺で怪しい術者に声をかけられたりしませんでしたか?


 いえ、今までそこの奥の席に高名な術者(笑)がいらしていたので。


 一緒にいらしたお連れ様にいきなり店内で聖水の販売をし出したときは、店主としてどうしたら良いんでしょうね……。


 急にテーブルの上にハンカチサイズの魔法陣を広げたかと思えばその上に小さいペットボトルを乗せちゃって。


 先に小さい水晶(?)みたいな物が付いたペンダントでダウジングとか始めるしで怖かったですよ。しかも手首にジャラジャラ数珠つけてるのに。


 魔法陣には五芒星、両手首には数珠、聖水はペットボトルに詰められて、占い方はダウジング。


 せめて聖水(仮)くらいはそれらしい瓶に詰めて欲しいものです。そこは経費削減しちゃ駄目だろう。


 ―――ああいうのって術式とか宗派とか喧嘩しないんですかね?


 詐欺にしたって嘘のつき方が雑すぎてあんまり危険を感じなかったくらいです。なろうのハイファンタジー作家さん方の考える描写を見習ってみてはどうだろう。


 例えばもっとおどろおどろしくサバト感を出してみるとか。


 ――あ、でも駄目ですね。うろ覚えなので細かいことは分かりませんが、あれには動物の首とか血液とか使ったりするんでしたっけ? 


 そんなことを店内のテーブルでされたら衛生局の職員と警察官が一気に(お客としてじゃなく)いらっしゃいそう。


 と、まぁ……馬鹿なことを言ってみたところで実際ちょっと困ってます。注意しようにもどう注意したら良いのか分からないですし、当の本人がそれで良いって納得しているなら尚のこと。


「金額の方はそちら様の信心でよろしいんですの。こちらとしてはあなたに元気になってもらえるだけでも嬉しいんですから!」


 どうしよう――何かがうちの店で起ころうとしている。いや、テレビの深夜にやっている買い物番組だって似たような物を売ってたりしますけど。


 公共の電波で流されてたら消費者庁が動くかな~と暢気に見ていられますが個人では難しいですよね? 


 開運の指輪とか健康のブレスレットとか言われると、ついRPGに出てくるような装備を想像してしまいます。


 実際にあんな風に身に付けるだけでその効果があるなら確かに買っても良いかもしれませんが。特にスピード系と体力系。これは是非欲しい!


 ――まぁ現実世界でそんな都合の良いアイテムはありませんけど。


 それこそ似たようなものが実際にあるとしたら急に頭が冴えるお薬くらいですかね。人体に悪影響しかありませんが。

 

 そうそう、当店の近所には新興宗教が揃い踏みでして。選びたい放題な状況です。氏神様を祀っていた神社は潰れたのに不思議ですよね。


 他のタイプとしましては、お客様が当店に来店して下さるとき町中で二人一組で行動されてる、少し普通と雰囲気の違う方々を見かけたことありませんか?

 

 ありますか。では多分それです。


 身形は綺麗に整えてらして、物腰も穏やか。いつも微笑みを絶やさず終始友好的なのに妙な圧を感じさせるあの方々。


 こちらが珍しく忙しく働いていてもお構いなしに店内に乗り込んできてあれな内容の冊子を押し付けてきたり、顔の前に手をかざしてこられたり、ありがたいお言葉を授けて下さるのです。


 時には“村人”にならないか、みたいなハガキとか直筆で聖書の一編を綴ったお手紙などもシャッターに挟まれていたりして。


 聖水の前は何を持っていらしたんだったかな……うーん……あ! 


 そうです、そうです、月の光を一年浴びせ続けた清めの塩だった。三角に盛り付けられる型と霊力の宿った小皿つき。


 ――――せめて東洋系か西洋系かくらいは決めておくべきかなと。


 感心すべきは設定が毎回違うんですよね。重ねて言いますが粗いです。それにもう少しデザインにこだわるべきだとも思うんですよね。


 もう少し可愛らしかったりインテリアとして気が利いたデザインだったりしたら普通に購入を考える方もいらっしゃると思うんだけどなぁ。


 ちなみに店主が一番“惜しい!”と感じたのは邪気を祓うアロマキャンドルでしたね。結構見た目は大丈夫だったんですが如何せんお値段が。


 だって三本セットで二万円はさすがに無理がありますよ。


 しかもお年寄りの多い地域ですから勧められた高齢の女性も“蝋燭なんて仏壇ので良い”みたいな感じでした。少しひねってお線香ならまだ需要があったかもしれませんが。


 ……ところでお客様、今日のコーヒーのお味は如何ですか? 何かいつもと少し違いません?


 実を言いますと今日のコーヒーに使ったお水―――昨日ホシ○キさんに頼んで浄水器のカートリッジ交換してもらったばかりなんですよ。


 ―――ふふふ、すみません。ちょっと吃驚しちゃいました?


 当店のコーヒーはいつも通り平常運転ですからご安心下さいませ。


 それではお客様、またのご来店をお待ちしております。



後日。

近所のお巡りさんではなくもっと本気のお巡りさんが、

段ボールを手にガサ入れにやってきてからちょっと静かになりました。

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