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***   ゴールデン会員制度。

どんなことでも、

知識が増えるのって楽しいですよねσ(^ω^*)


 

 いらっしゃいませ、お客様! カードを! スタンプカードの提示をよろしくお願いします。


 “前回使用してからもらってない”――あ、やっぱり。そういう時は仰って下されば新しいものをご用意致しますので、遠慮なく。


 “普通そっちが気付くことだろう?”ですか。ははは、何とも痛いところを突かれましたね……。


 では今回は忘れないようにお先にお渡しさせて頂きます。今日の分と前回までの分はスタンプ捺させて頂きますね。


 おぉ、これは……すでに半分埋まっちゃいましたよ。これからもご贔屓にして下さい。


 ふむ、お客様ならもしかすると当店で二番目のゴールデン会員様になる素質があるのかもしれませんね――。


 “何それ?”とは……やっぱり気になりますか? ちょっとそれっぽく言ったらコロッと引っ掛かって下さるなんてありがたいお客様ですね~。


 ――って、嘘嘘、嘘ですってば! 帰るだなんて仰らないで下さいよ!


 ささ、ゴールデン会員の説明をさせて頂きますのでお席にお戻り下さい。聞いて損は……しないかな……どうだろう? その辺りのジャッジはお客様にお任せしますね。


 え~、ではゴールデン会員についてまず簡単に説明させて頂きます。


 その① 店主の興味がある情報、ないし趣味を持っている。

 その② 極度の趣味人である(寝食忘れる位の重度の者)。

 その③ その趣味の面白さを知らない人に熱く語ることが出来る。

 その④ お金がなくても趣味に使った失敗談がある。

 その⑤ 趣味仲間が少なくても平気である。


 この五項目をきっちり押さえていて、なおかつ店主がその趣味に見事にハマってしまった場合にのみゴールデン会員の称号を与えます。


 “何だか面倒そうだけどゴールデン会員の特典って?”ですか。そうですよね、これだけ面倒だと特典が気になりますよね~。


 あ、でも全然大した特典じゃないので驚かないで下さいよ?


 ――当店のコーヒー又は紅茶が永久的に無料となります。


 ほら、そんな……微妙な顔するでしょう。大体まったく流行ってない喫茶店が金一封とか出せません。無理ですよ。


 当店がここにある限り無料で、別に一日二回とかいらしても大丈夫です。連日のご利用も話のネタがあるなら歓迎しますよ!


 ただそこはまぁ、大人なので……常識的な回数に抑えていただけると助かりますが。


 ちなみにこの称号を現在持っておられる方は、年中ジリ貧の店主に合計額にして八万円近く使わせた猛者です。そのせいで店主は自宅で真夏の半月間クーラ 使えませんでしたもの。


 いやぁ~、恐ろしい方ですよ本当に。


 でも買っちゃう! 


 話も凄い聞いちゃう! 


 閉店後に来ても開けちゃう!


 ……何やってるんでしょうね……。


 “そこまで興味のある趣味って何だったの?”――ですか、うーん、どこから話そうかな……。


 このゴールデン会員様は昔、古美術商をやっておられた方でして。年齢が確か七十五歳のお爺さんでして、若い頃は陸王とかハーレーを乗り回していたヤンチャさん。


 しかも今はもうないですが、知ってる方は知っている、そういうレース場で国内でもまだ珍しかったバイクレーサーをやっていらしたそうです。


 写真を見せてもらいましたが、もう、今見たら趣味人は垂涎もののバイクが勢揃い。

 

 目黒とか、陸王のような国産車から始まって、イギリスの究極の曲線美で一世を風靡した某有名メーカー。


 アメリカのハーレーに、ドイツの軍用バイクメーカー、イタリア、フランスの戦闘機メーカーが転身したところのものもありましたよ。


 当時の機械って生き物めいたフォルムが素晴らしいですね。オイルが漏れる様はまるで血液のよう。あの頃の形で止まってたら良かったのに。


 思わず某作品みたいに『ここはゼラバンカ。レイテの古戦場――』とか言いたくなっちゃいます。


 ――ん? このネタ元が分かりませんか? 


 ふふふ、気にしないで下さい。かなり古い作品なので。しかも決して見て楽しいものでもないですし。


 何せ店主が小学校の四年生くらいの時に兄に「アニメ見ようぜ!」と騙されて見たトラウマですから。涙腺が弱い方にはオススメしません。


 年の割に冷めた性格をしていた店主は号泣して吐きましたよ。胃酸でのどが焼けてしばらく痛んだ記憶が……兄貴、マジ許さねぇ……。


 それにしても新型のカブの形、あれ何でしょうね? 個人的には前の方が断然好みだったし、今回のモデルチェンジで初期型の形に戻すって言ってたのに!


 ………おっと、脱線が過ぎましたね。


 ともかく現在の市場価格だと一千万してしまうようなものまで、昔はレースに使っていたんですねぇ……当時の光景見てみたかった~。


 でも装備がまだ軍服みたいで多少集合写真が物々しい感じではありましたけれどね。


 そんなお爺さんの持ってくる品物の数々はどれもこれも大変魅力的で……店主は毎回良いカモですよ。


 いや、買わなきゃ良いのは分かってるんです。勿論。


 お爺さんの持ってきた中でも特急品があってそれをまんまと買っちゃった訳なんですが――元値は決して高くなかったんですよね。


 お爺さん、バイクの販売を歳のせいで断念してからは自転車の収集に目覚めまして。店主ももともと古い自転車とか大好きなのでついつい、ね。


 でも趣味人なら分かるでしょう? レストア的なあれ。あれに予定外の金額をぶち込んでしまいまして。元レーサーのお爺さん自らやってくれるので安心安全!


 オマケにお爺さんが現役時代にストックしていた古いパーツを付けてもらえて大満足です。ライト可愛い!


 他にも登録料とか被せるカバー(デカすぎてバイク用しかなかった)とか、何やかんやで八万円まで膨れ上がってしまった、と。


 ―――そこまで引かなくても……“結局どんな自転車買ったの?”って?


 突然ですがここで店主からクイズです! 


 “真っ赤……よりやや朱色な自転車ってなーんだ!”


 ちょっと、ちょっと、せめて答えを聞いてから……って、良いですよ、分かりましたよ。 答えれば良いんでしょう、答えれば。


 正解は“払い下げの新古品。完品の郵政自転車”でした。

 

 うちの買い出しは一気に買い込むので普通の自転車だと重くてタイヤが潰れちゃうんですよね。だからこの子が来てくれた時は狂喜乱舞しましたよ。


 漕ぎ出しが全然違うんですよね~。何でもお爺さん曰わく小包とかの運搬車なのでギアが違うそうです。もうこれが軽い軽い。


 そのかわりに通常押すときはびっくりするぐらい重いんですけどね……。


 ふふふ、どうです? お客様もゴールデン会員目指してみませんか? 店主は大抵の話題に食いつくので考えてみて下さいね。

 

 それではお客様、またのご来店をお待ちしております。



当店の可愛い自転車ちゃんは、

その名前を【赤兎ちゃん】といいます♪


……三國志好きなんですよ。

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