*** 天候不順、困ったな~。
今年は大寒波のせいでお野菜高騰してますね~!
(´ω`;)<サラダに大打撃です。トホホ。
いらっしゃいませ、お客様、どこもかしこも空いていますのでお好きなお席にどうぞ。
ただし、店主の真ん前にあたるカウンター席以外でよろしくお願いしますね。緊張しやすい赤面症なので。
それとお冷やは……ちょっとお待ち下さいね。指が凄く緑になってる上にやや青臭いので、洗います。
“そのやけに大きいビニール袋何? って言うかその緑のは?”ですか。気になります? あ、やっぱりそうですよね。
これは――あれです、日本の伝統的香辛料に名前を連ねる【山椒の実】ですよ。ご存知ですよね。
あぁ、でも、こんな風に房で売ってることってあまりないですから珍しいでしょう? かく言う店主も最初見たときびっくりしました。ちょっと見た目が……ねぇ?
もう結構こうやって毟ってるんですがなかなか粒が小さいので一人だと大変で。少し手伝いません? “汚れるから嫌”――なるほど、綺麗好きめ。
うん? “そもそも喫茶店に必要ないのでは?”ですか。
それはもう、はい、間違いなく。実際全く必要ないですし活躍する機会はありません。
ただこれ、さっき帰られたお客様のお裾分けでして。ついさっき帰られたところなんですが……大きな木箱を荷台にくくりつけた運搬用の自転車とすれ違いませんでした?
――見ませんでしたか、残念ですね~。まだあるみたいだったから分けて貰えたかもしれないのに。一応高級食材なんですよ、これ。
ただこれ使い道がだいぶ限られているみたいなので、まぁ……使い道はこれから考えますけど。
臭み消しとかピリッとした味と香りを楽しむのに少量使う程度のものですからこんなにあってもどうしようかな~、とは思ってるところです。
和食の――特に割烹系のお店なら喜ばれたかもしれないですけどね。
頂いたお客様によれば、この山椒の実単体では佃煮みたいにするしかないらしいです。それを他の魚の煮付けとか、根菜を炊くときのアクセントに使うと良いそうですよ。
でももう――そこまでいくとちょっとしたお店が開けそうですよね。それで日本酒の美味しいお店ですよ、きっと。近所にあったら行ってみたい。
と、まぁ……聞きたいのはそこじゃなくてこれをくれたお客様の正体ですよね?
そうそう手に入る物でもない枝付の実山椒を山盛り持ってこられるお客様。果たしてその正体は――!?
青果市場の仲介人さんです。うん、想像ついてたにしても……もう少し反応して下さらないとつまらないじゃないですか。せっかく頑張って引っ張ってみたのに。
天候不順でお野菜が高いことをまだ職業が分からない時に漏らしたところ「実は青果市場で働いてんねん」とずっと謎だったご職業を教えてくれまして。
どっちかというと見た目的には日にしっかり焼けているせいで、漁師さんみたいな感じのする気っぷのいいおじさんですよ。
それ以来市場で余ったお野菜をお裾分けして下さる仲に。やったぁ!
ご来店の際に今回のタイトルご覧になられたと思うので、その繋がりだと思って下されば結構ですよ。
当店はストーカー気質のお客様も多いのですが、同じくらい変わった職業や職人さんがいらっしゃったりするんですよね。それでこの実山椒を下さったお客様は当然後者のタイプ。
今回は実山椒だったのですが他にも白菜(一玉)や筍、枝豆(枝付)、水菜、ジャガイモ、ミカンなどなど、色んな野菜を下さるのでとってもありがたいお客様です。
しかもその週ごとのお野菜情報を教えてくれるので、次の週に高値になりそうなお野菜を事前に買い込んでおくことが可能となります。
寒波前の静けさの時に教えてもらった大根と白菜、白ネギの週はとっても助かりました。カンニング万歳。
うーん、でもこの実山椒はどうしましょうかね……。炊いて佃煮っぽくするしかないかな?
はい、ご注文のホットコーヒーお待たせしました。こちら熱いのでお気をつけ下さいね。
気にならないようでしたら毟るの再開しても構いませんか? ……ありがとうございます。
ではちょっと失礼して――。
ムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシムシ――――。
……はっ!? すみません、つい無心になってしまいました。おや、少し気になってきました? では少し手伝って頂け――ませんね。はい。
えーと、それでどこまでお話しましたっけ?
あぁ、そうでした、お野菜カンニング……でしたね。でもこれは結構一概に目安にならないこともあるそうです。
スーパーによってバラつきがあるそうなので、そのスーパーがどこのお野菜を一番多く仕入れているかというので変動するらしいです。
寒波も猛暑も年々読めなくなっているので熊本系が強いスーパーでは冬場に強く、北海道系に強いスーパーは夏に強……かったらしいんですが最近は北海道も暑いから読めないそうです。
“結局運だのみじゃないか”と。それはその通りですけど人間は自然現象には敵いませんから仕様がないですよ~。参考程度にして下さい。
でもこの実山椒を下さったお客様はこの三時頃から職場入りして、早朝の一番寒い四時頃に帰宅なさるそうですから大変です。もう六十五歳だそうなのにご自宅から片道一時間半こちらの職場に通勤されていて――。
いやぁ、パワフルですよね……。運搬用の自転車って普通の自転車より滅茶苦茶重たいんですが――パワーの決め手はほうれん草かな?(ネタが古い)
……はい、お愛想笑いをどうもです。
おや、もうお帰りですか? お土産にこの実山椒半分どうです? “使い道が分からないからいらない”ですか―――ちぇっ、残念。
“でもその後どうなったか教えて”とはまた好奇心が強いですね~。まぁ、そういうことでしたら後日この実山椒がどうなったかお教えしますね。
それではお客様、またのご来店をお待ちしております。
結局どうすればいいか分からなくて、
たまに飲みに行くお店に泣きついたところ――。
「家で炊くつもりだったの? 半日かかるし難しいよ」と笑われました。
すでにお店の方が炊いていた実山椒と、
店主が頑張ってムシムシした実山椒をトレードして事なきをえましたw
ゴボウと魚と一緒に煮付けたら凄い美味でした♪




