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***   タイトルの回収、します?


店主って店の内装の一部みたいな物ですよ。σ(・ω・*)<ね。



 はい。今回は章のタイトル通りです。多少急ではありますが、今回は“何で書き割り店主?”という疑問にお答えしましょう!


 “は? 別に訊いてない”


 “気にしたこともなかった”


 という方は次のお話にジャンプして下さい。ふむ、なるほど――ありがとうございます。では続けますね。


 “喫茶店の中って非日常的な空間だな”と思ったことがあると思うのですが(あ、なくてもあるように進めますね?)店をやってる本人ですら時々そう感じるので、お客さん達はかなりそう思っていらっしゃる方が多いかと。


 えぇ……分かるんです。分かります。店主も“お客の側”の時はそう思っていましたから。


 恥ずかしながら店主は人の顔を憶える能力が欠如しておりまして、何度か来店してくれるお客さんの顔もなかなか憶えられないんです。本当に何で接客業に就こうと思ったんでしょうね……うぅむ、謎だ。


 だからという訳ではありませんが、店主は声とその時の会話内容でそのお客さんを憶える癖があります。


 あまりに野生動物っぽい生き方をしているなぁとは思うのですが、要注意人物を脳内で検索するときにかなり有効ですので、店主と同様に人の顔を憶えるのが苦手な方は騙されたと思って一度お試し下さいませ。


 でもこれって逆を返せば店主が憶えていないということは真っ当なお客さんだということではあるんですが……。


 ―――しかし、ある日のことです。


「お前とはもう一緒に生活出来ない」


 それまで割と和気あいあいと話していたカップルだか若夫婦だかのうち、男性の側が突然放ったその言葉に洗い物をしていた店主の頭の中では瞬間火○スの曲が流れましたね……。


 向かいに座っている彼女もポカンですよ。そうでしょうね、店主が飛び飛びに聞いていた前後の会話からも急に別れ話に発展するような伏線はどこにもなかったですもん。


 と、いうかですよ――そんな大事な話をこんな小さな店の中でするの?


 ドラマの中ではもっと都会的な街のお洒落なカフェとかで二人して深刻な顔をして向かい合ったりしてする話でしょう? もしくはご自宅内で済ませてきて下さいよ。


 凍り付いたままの女性を置いて先に二人分のお会計を済ませる男性。しかしそのまま何のフォローもなく一人でお帰りに。


 残されたのは微動だにしない女性と店主だけです。自分の店でこんなに気まずい気持ちにならなくてはいけない日が来ようとは……!


 結局その女性は二時間近くを放心状態で過ごされた後、閉店時間を一時間オーバーして帰って行きました。大丈夫だったんだろうか……。

 

 また別の日には「○○さんのお家、この間また海外旅行行ったらしいよ」「仕方ないわ~、○○さんの旦那さん年収一千万超えてんねんやろ?」など店主は顔も見たことのない○○さん宅の情報だけが増えていきます。


 ○○さんだけではなく××さんや△△さんなども。まぁ、ようはお金を持ってる方々ですね。テレビに出ている訳でもないのにとんだ有名税もあったもんです。


 “人の口に戸は立てられない”というやつで、店主もつい最近「ここのコーヒーは親戚の会社からタダでもらってんのやろ?」と言われましたが、違います。どこから出てきた情報なんだ、その夢のような話は。


 そうであったら毎回初見のお客さんに言われるように「趣味で店やれて良いね~」とチクチクやられても笑って流せるんですが。


 勿論、取引先のコーヒー豆屋さんの名字が店主と同じだけですよ……。


 後は――あ、そうですね、春先と秋口には病院の先生方の引き抜き合戦が多いかも。飽くまでもうちの近辺では、です。


 それから企業戦士の皆さん、何だか凄く大切な電話をこんなところでしないでね? ここは喫茶店ですよ? 


 もしも店主が誰かに雇われた産業スパイで海外の映画っぽくどこか特別な番号にリークしたりしたらどうします? いえ、しませんけど。


 それかよくあるドラマの“あの話を◇◇さんにバラしても良いんですか?”とかってあれ。あ、でもこれも駄目ですね。お小遣い稼ぎ気分で殺害されたくないですし。


 だから何が言いたいかっていうとですね――“バレたくない秘匿事項はご自分達で厳守して下さいね”ってことです。後日「お前の店でしかあの話はしてなかった!」とか言われても困るので。


 しかし……ママ友さん方の延々と続く息子や娘の学力自慢もさることながら、パート先の抗争、ここにいない人間の吊し上げ、ドロドロの人間関係の最たるものを見聞きしていると段々気が滅入ってきたりもします。


 そんな時は耳に蓋をして、瞼を強く閉じて、求められる会話の一つも交わしたくなくなることもありますね~……。


 何て言うのか、やっぱり喫茶店の店主ってどこもそうだと思うんですが店の一部みたいなところ……背景というのか、この作品のタイトル通り書き割りキャラクター的なもので。


 ――ただやっぱり一応ニンゲンダモノ。聞く気もなかったけど声が大きすぎて聞こえちゃう会話の内容で凹んだりします。

 

 でもそんな時に書き割りの店主の耳にふと「あ、ここのコーヒー美味しい」と届いたりしたら、もうね―――。


 うっかり大量得点追加! 耳がよくて良かった! とか思っちゃいますね。我ながら現金にも程がある。


 耳から入る毒素と、耳から入る栄養素みたいな言葉の関係性って面白いですよね。感じ方、捉え方の違いとも言いますが。


 それに時々苦手なお客さんの意外に良いところとかが分かって、自分の中でそのお客さんに対する感情がセーブ出来たりします。


 “雨に濡れてる猫を学年一の不良が拾ったところを見た”的な。


 いやぁ、本当人間ほど多面性のある生き物も珍しいな~と思う毎日です。


 はて、もしかしたらどこかの喫茶店でそういうことを感じたから自分でもやってみようと思ったんでしょうか?


 始めた頃の憧れとか夢だとかはもうとっくに忘れてしまいましたが日々新たな発見はあったりしますから……良くも、悪くも……ね。


 それではお客様、またのご来店をお待ちしております。




お客様! そちらの店主は転写シートになっております!


多分話しかけても光の加減で三パターンくらいの表情しか見せません。


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