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6、一度は断った飲みの誘いに乗った結果がこれ。

ニーニャさん視点になります。

 冬ごもりも春も連絡一つ寄越さず放置って。

 あー、ワタシってそれくらいのモンだったのか。

 まぁ今までも似たような事があって、仕事なんだし仕方ないし、別にいいかと思ってたんだけど。

 

 それがここに来てこの扱い。

 さすがにこれはないデショ、と思ったら急にこれまでの事とかイロイロなものが一気に来た。


 好きな男が仕事に打ち込んで、夢を追いかけてるのを見守ることを良しと出来なくなった自分が嫌になった。


 自分の方を向いてほしい。

 もう少しでいいから一緒にいたい。


 言えば夏樹は仕事をセーブしそうな気もしないではないけど、でもそんなのは望んでなくて、そもそもそんな最低限のルールを言わなきゃ分かんないような男とこれからやって行くのかとか、これからずっとこれが続くのかとか、なんかぐちゃぐちゃになって。

 まぁ、いい年だし仕事にしろ恋愛にしろやり直すならこのタイミングかな、ってのもあって、身辺整理をして一緒に暮らしていたアパートを出た。


 幸か不幸かもともと結婚願望は薄かったせいもあるのか求婚されても何の感慨もなく、本当にびっくりする位嬉しいとかなくて、むしろ「何を今さら」感が強くて助かった。

 あー

 やっぱワタシって勝手だなぁ。


 いや、故郷いなかに戻った頃はちょっとは待ってたんだけどね?

 ホントに探されて困るなら郷里に帰ったりしないし。


 ただ、なんか時間が経つにつれて冷静になったんだよね。

 冷めたんじゃないよ? ……たぶん。

 まあ1年近く時間はあったんだし、夏樹の双子の弟のちーちゃんが、好きな子をそれはそれは大事に大事にしてるトコを見てたせいもあるのかも。


 とは言え!

 これはないわー


「だから後悔すんなって言っただろうが」

 言ってた。

 言ってたけどさ。


 酔っ払いにそんな冷静な判断求めないでヨ。

 考えたら分かるでショ。考えなくてもダメって分かるでショ。

 1級資格者とご一緒する機会なんて今までほとんどなくて、1級資格者サマを過信してた。だって飲んでないのかと思うくらい平然としてたし。「さっすが1級資格者様は違うもんだ」なんて思ってたのに。


 アンタも酔ってたのかよ。コンチクショウ。


 あーもーホント馬鹿。

 また自分の価値を下げた。

 いや自分に価値があるとは思ってないけどさ、これ以上の醜聞はごめんだったのに、これはサイアクだわ。

 今度は尻軽とか言われんのかなー

 しかも、まさかコイツまで巻きこんでしまうとは。


「お世話になっておいてなんだけどさぁ、アンタもまずいっしょ、酔った女家に連れ込んだりしたらさ」

 警察官でしょうに。


「問題ねぇよ。俺信用あるし」

 いやいや、世間はそんなに甘くないでショ。

 って、田舎ってそんなもんだっけ……?

 は!

 それともワタシとどうこうなるなんて誰も考えないほどのガチのトリ専か。

 マジでか。

 好みのタイプがそんなに周知徹底されてるって、この男どんだけなのよ。


「どうとでもなるだろ。心配しなくていいぞ? 連帯責任にしといてやるから」

「そりゃドーモ」

 偉そうに。

 でもまぁ、ちゃんとした地位のある奴だし、申し訳ないとは思ってる。

 そう言われても仕方ない。

 でも連帯責任ってどうすりゃいいのよ。


「ついでだから朝飯食ってけよ。俺の買いに行くついでに買ってきてやるから」

 帰ろうとしたらそんな事を言われたのでぎょっとする。

 家にパンあったかなー、10時から仕事だから食べる物なかったら早めに行って奈々の店でパン買うか、なんて事をぼんやり考えてはいたけども。

 当然断った。

 遠慮じゃなく、さすがになんかマズかろうと。

 断ったのだけれども。

「7分で戻るわ」

 なんかさらっと押し切られて留守番する羽目になった。

 物自体が少ないけど、なんか小奇麗にしてるなー

 警察学校ってそういうの厳しいんだっけ。

 それにしてもよそ様のお宅で留守番って不可解すぎでショ。

 アイツ「鍵かけとけよ」って鍵持たずに出たし、これじゃ帰れないじゃないノ。いや、鍵持って出たとしてもワタシが鍵かけられないからどっちにしろ帰れないんだけど。

 もしかしてこういうのも警察官スキルってやつなのか。恐ろしいわ。

 でも不用心すぎるでショ、警察官なのに。

 

 宣言通りすぐに戻ったワシザキと、とんでもないところから確保してきやがった朝食を小さな二人用のダイニングテーブルでいただいた。

 まさに焼き立て! といったあったかいパンをゆっくり堪能したいところだけど、とにかく早く完食せねばと無心で口を動かす。

 ふと視界の端で長い足がこちらに伸びて来て、反射的にそっちを見てしまう。

 急いで食べているワタシよりも先に食べ終えやがって。

 ワシザキは、足を組みながらコーヒーを口にした。

 裾からのぞいているのはこれまでの生活では見慣れなかった、うろこ状の黄色っぽい肌と大きな鋭い爪を持つ鳥の素足。

 邪魔くさいほど長いな。二人用のダイニングテーブルから完全にはみ出てるじゃん。

 

 よーし、食べたし帰るとするか。


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