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13、ネコが自由過ぎて時に不可解なレベル

 あ?

 なんで千秋んトコでニーニャの弟が働いてんだ?

 3月に入ったとはいえまだ寒い。

 あいつ風邪でもひいたか?


 ここ3日ニーニャの弟がcaféだんでらいおんの昼の手伝いをしているから、あくまでも見回りついでに家に様子を見に行ったらどうも留守らしい。

 あいつ、どこ行ったんだ?

 気にはなったがこっちは仕事中で、夕方になって勤務時間が終わってから外掃除をしているパン屋の奈々に聞けば思いきり動揺された。

「ニーニャさん、今週から役所でお勤めされてますよ……?」

 恐ろしく困惑した表情で、なぜかびくびくしながら奈々はそう言った。


……あ?


 夕方、本当に役所から出てきやがった。ていうかけっこうみんな知ってた。

「臨時職員の試験通って今、見習採用中なのヨ。二か月問題がなかったら本採用なノ」

 後で行くことを伝え、ニーニャの家で確かめればあっさりとそう答えやがった。


「え、ワタシもともとここの役所が求人してるから帰ってきたんだケド。だからちーちゃんトコのバイトも仕事が決まるまでって話だったし。うちの弟がバイト探してて、ちーちゃんトコもやっぱ昼時は人手が欲しいって言うから引き継いだんだけど……って、何よ」

 町外れのアパートメントに徒歩で帰るのと、職場で着替えを済ませてから飛んで行くんだと到着は同じくらいになった。

 なんで怒るんだってそっちも機嫌が悪くなってるけど、そりゃ当然だろ。

 お前、そんな事ひとっことも言ってなかったじゃねーか。


「そうじゃないと千秋(ちーちゃん)の店で働いたりしないでショ」

 上着をハンガーに掛けながら呆れ顔でこちらを見て眉を顰める。

 そうだ。

 みんな割とおおざっぱだから気にしてないが、わざわざ元カレの弟の店で働くと言うのがそもそもおかしな話だった。

 採用試験は秋だったって言うし、コイツの事だから採用になるかどうか分からない話をする気は無かったんだろうが俺達、付き合ってんだよな?

 そもそもそんな試験を受けると知ってたら酔った勢いで泊めたりしなかった。

 そう思うと━━

「お前、よく受かったな」

 大事な時期に私生活乱れまくってた状態じゃねぇか。

 いくらここが田舎で若い奴らが街に流出してるとは言え、採用枠二人とかだったんだろ?

 

「んー? 前にいたトコがキツイ会社だったのに割と長かったから根性を買ってもらったんじゃナイ?」

 なんでもないように言うが、罪悪感というかやっちまった感が沸いて来てるんだが。

 確かにコイツが以前街で勤めていたのは誰もが知ってるような大手企業で、キツイ会社だってのも有名だ。職務経験の実績を買われたか。

 不可解な根性もあるから、案外本当にそっちの可能性もあるが。

「あ、晩ゴハン、超手抜きでいい? パスタにしようと思うんだけど」

 はー、と思わず大きなため息が出た。

「え、何? 不満なの?」

 一まとめにして垂らしていた長い髪を器用にアップにしながらキッチンに入ろうとしていたニーニャは、俺のため息の意味を取り違えて一瞬で毛を逆立て、細くて長い尾を鞭のように一度しならせて、不快感を表す。

「ちげーよ。俺やるわ」

「え、マジで」

 なんで? みたいな顔しやがって。

 傍若無人に見えるが、自分が周囲にどう見られてるか理解してる分、相手の機微に敏感で意外と気も遣う奴が、覚える事だらけの新しい職場で一日気を張って疲れてるだろう事は考えなくても分かる。

 何のために来たと思ってんだよ。

 飯作らせる為なワケないだろうが。

「トマト系とカルボナーラ、どっち?」

 冷蔵庫を眺めながら二択に絞る。

「え、トマトのレトルトあるけど……」

 ああ、その言い方だと。

「カルボナーラだな? そんなに時間かかんねーけど座ってれば?」

「や、ホントどしたノ? ちょっと怖いんだケド。でもラッキー、じゃお言葉に甘えてー」

 失礼にも本気で動揺しながら、それでもソファに足を上げてあくびをしながら丸まると一瞬で寝落ちする猫。

 ソファのひじ掛けに掛けてあった膝掛をかけて、艶々とした頭を撫でる。


『にゃんこのごろごろって骨折を治す効果とか、自分や周りのストレス緩和の効果あるらしいですよ。すごいですよね』

 パン屋の奈々が前にそんな事を言っていた。


 耳の後ろの筋を指の腹で掻くように撫で、それから首筋を撫でてやればぐるぐる言い出す。

 なんでヒトの首なのにこんな音が出るのかね。

 あー、これ飽きないんだよなー

 いつまででもやれそうなんだよなー

 少しでも手を休めると催促するように鼻や首筋を寄せてくる。

 寝てる癖に。

 あー、くそ。

 膝の上に乗せてごろごろ言わせてぇ。

 いつまで経っても飯にならないからそんな事してる場合じゃないんだけど。


 気持ちよさそうに喉を鳴らすニーニャの額に口づけてから立つ。

 続きは飯食ってからにするか。

 とは言っても疲れてるだろうし、さっさと寝かせてやらねーといけねーよな。まったく。仕事落ち着いたら覚えてろよ。


『え、ニーニャさんがごろごろ言うの見た事あるんですか。う、羨ましい。私そんなとこ1回も見た事ないですよ』

 ニーニャが変態だと言う奈々は本気で羨ましそうに言って悶えていたけど。

 他の奴の前で喉鳴らしてたりしたら腹立つだろーな。

 湯を沸かしながらサラダ用にレタスを千切って冷水に少しの間さらす。

 こんな事なら酒もってくりゃ良かったかな。

 あ、でも本採用決まってからちゃんと祝った方がいいよな、久し振りに気合い入れて料理するか。こっちが休みの日だったら時間のかかるもんでも余裕だろうし。

 宝楽焼とか……あ、鯛使うなら塩釜焼やってみっかな。あいつ魚好きだし。


鯛の塩釜焼を自宅で作ろうとする男ワシザキ。

彼もたいがい自由人。


宝楽焼は鯛を土鍋で蒸した淡路島のお料理。

塩釜焼は鯛を塩で固めてオーブンで焼く料理です。それほど手間ではない気もしますがとにかくダイナミック。

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