083 事後会議は進まない
改めて、会議室の中を見渡す。
第一回の小範囲大規模戦闘が無事に終了したため、僕が招集命令を出した。
だから、こちら側の重要人物は、一人を除いて全員集合している。
「では、全員揃いましたね。では、報告会を始めます」
僕はそう言って、手元の端末に一瞬目を写した。
「先ほど情報端末に送信した通り、目標は全て達成しました。戦神アレスの殺害及び、Sランク5人の殺害または懐柔に成功しました。では、作戦中に問題点はありましたか?」
それだけ言うと、僕は全員を見渡した。
「……皆無」
平常運転はテンションが最低レベルの、『戯蝕圏』可愛川秀夫だ。
戦闘能力は高め、というかまさにチート能力だが、自他共に認める筋金入りの引きこもりであり、普段は広い十八階のどこかに潜んでいて、全く働かない。
ただ、会議中にまで深くフードを被るのはどうかと思う、別に咎めはしないが。
「ええ、ありませんでしたよ」
丁寧な口調のこいつは、『魔像使い』カレル=ウォルター。
戦闘面でもトップクラスだが、同時に生産系にも携わるオールラウンダーだ。
性格面では、実益込みだけれども趣味優先、と言う自分勝手な性格だ。
そこまで信用できる人物ではないが、性格から判断するに、裏切ることは多分ない。
「私の方も問題なし、と言いたんだけど、さっき一つ問題が露見したわ」
彼女は、戦闘訓練統括者、『紅蓮血涙』早月燎子。
転移者四人の中ではまともな方、かと思いきや、理知的な戦闘狂だ。
ただ、結構信用はできる人物だ。
「どうかしたんですか?」
「最高品質の回復薬を飲んでも治らない傷を治す方法って知ってる?」
最高品質の回復薬、外界ではそれで治らない傷も沢山あるだろう。
部位欠損を治せる回復薬ですら、ごく僅かしか出回っていない。
周囲のダンジョン、つまりジャウアミ大魔境に幾つかばら撒いたため、少しは供給量が上がっているのかもしれないが、大したことはないだろう。
ただ、黒冥城においての最高品質は、全く違う。
部位欠損を治すことができるのは、大前提。
エリクサーをベースに、神聖属性魔法や時空属性魔法の理論を組み込み、回復薬の範疇を超えたものが量産とまでは言わないものの、多く作られている。
肉塊になっても、すぐに対処すれば、魂への誘導干渉と肉体の逆転再生とかいう方法で再生するという、もはや蘇生薬の域にある代物である。
それを超える方法としては、神権または神威の使用が考えるが、回復系の神剣や神威は僕の範疇外だ。
「残念ながら、僕は知りません」
僕が答えると、残念そうな顔をする早月燎子を差し置いて、隣の席の最年少者が口を開いた。
「もしかして、もしかして、お怪我でもなさったんですか? あんな雑魚相手に? それは大変ですねえ」
カレルの煽るような口調で、戦闘狂の機嫌が目に見えて悪くなっている。
「黙れ、大したことじゃない」
女子力に特大マイナス補正が付きそうな口調で、早月燎子は返す。
「けど、怪我をしたことは認めているってことですよね? もしかしてゆ、だ、ん、してたんですかぁ?」
うん、実際にやられたらムカつくだろう。
「油断していたのはあんたも同じだろ? 最低出力で時間をかけて戦ってたのは何処のどいつだ?」
「いいえ、僕の方は、機体の修理が面倒だから出力を制限していただけです。一緒にしないで頂けますか?」
「へえー、それで、相手を舐めて、最低出力で殺られかけて、慌てて本気を出したのは何処のどいつだ?」
どちらも、圧倒的にブーメランが差さりすぎていると思う。
ただ、少し辛いのは、舐めプをしていたという事実が僕にも当て嵌ってしまうことだ。
「固有スキルを使わずに、スデゴロで戦っていて怪我をした脳筋馬鹿がいたと聞きましたが、それはまさか僕の隣にいらっしゃるはずもないでしょうねぇ?」
熱い視線を交わし合うというのは、きっとこのようなことを指して言うのだろう。
「熱い」と言う形容詞の中身が少し違う気がしなくもないが。
ただ、こんなことをしていても時間の無駄だ。
「とりあえず、痴話喧嘩は「「違う!」」後でやってください。とりあえず、元の議題に一旦戻りましょう。で、怪我がどうしたんですか?」
なお補足だが、僕は恋愛禁止条例など出していない。
ただ、僕の把握している限りでは、幹部同士ではそのような話題はまだ知らない。
「弓で射られた心臓の穴が、どうやっても塞がらない、以上!」
怒ったような口調だが、当たり前だ。
「多分神権か神威に近い何かでしょう。問題はないので諦めてください、以上です」
少しは僕のせいでもあるが、余計な時間を取られすぎた。
ヤバい、書けない、内容が薄い。




